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第14話【二人のVTuber】

「それじゃあ透夜くんのVTuberデビューを祝ってかんぱーい」

「「かんぱーい」」


 俺のデビュー配信の次の日、結唯さんから駅前のファミレスに集合と連絡がきてやって来た。


「あの二人はもう少ししたら来るみたい。先に食べていてって連絡があったから」

「そうなんですね」


 結唯さんの言うあの二人というのは早乙女百合さんと柊リンさんの事だ。

 夏休み企画まで残り一週間となり最後に全員集まって話しをするみたいだ。


「……それでずっと気になってるんですけどなんでこの座りなんですか?」


 テーブル席についた俺達の座り方は俺の右隣に秋奈、左に結唯さんが座っている。

 つまり前の席には誰も座っていないって事だ。

 傍から見たら異様な光景だろう。俺も今まで一度も見たことのない光景だ。


「だってまだ百合ちゃんとリンちゃんが来てないから空いてるだけだよ」

「まぁまぁ二人が来たら分かるよ。あの二人だけにしてあげないとね」


 そう話していると、手を繋ぎあった二人の女性が俺達の席の隣で止まって声をかけてきた。


「お待たせ~秋奈ちゃんに結唯ちゃん。そして三葉くん?」

「はい、三葉……えーっと月城透夜です」

「はじめまして、私が柊……羽瀬円華はせ まどかです!」

「はじめまして、透夜さん。佐倉瀬奈さくら せなです!」


 二人は俺達の前に座って自己紹介をした。


 柊リンさんこと羽瀬円華さんは身長が女性にしては高く、可愛いと言うよりはスタイルが良くて綺麗で美しい人だ。

 そして早乙女百合さんこと佐倉瀬奈さんは円華さんとは真逆で身長は低く、ザ・可愛いって感じの人だ。

 声も円華さんは凛とした感じで瀬奈さんはいわゆるアニメ声って感じで正反対。

 すると隣に居る結唯さんが耳元で囁いてきた。


「ほらね、二人とも凄くお似合いでしょ?」

「あの二人って付き合ってるんですか?」


 結唯さんの口ぶりに手を繋いでやって来たのを見て付き合ってると思うのは普通だ。

 それに今の時代は付き合うに性別なんて関係ないしな。

 けれど結唯さんの答えは思っていた答えではなかった。


「ううん。まだ付き合ってないよ」

「え!?」

「お互い好きなんだけど告白してないんだよ。だから付き合っては無いよ。まぁでもあれは付き合ってるって事で良いと思うけど……」


 すると秋奈が本題を切り出した。


「夏休みの企画まで一週間を切ったから最後に改めて打ち合わせしよう。それと円華ちゃんと瀬奈ちゃんに透夜を紹介するのもかねてね」

「透夜くんはどの配信に参加するの?」

「予定では格付けチェックの司会進行と学力テストの司会進行をしてもらおうと思ってるよ」


 現に学力テストの問題、国語、数学、理科、社会、英語の五科目の問題を急遽作成している。

 テストを作るなんてこと今までに一度も無いからどのくらいのレベルの問題をどのくらい出せばいいのかに凄く悩む。


「じゃあ透夜くんはカラオケ配信一緒にしないの?」

「それは透夜に言ったんだけど歌うのは記念って言っちゃったから参加しないって」

「そうなんだ、秋奈ちゃんが透夜くんの歌声褒めてたから聞きたかったのになぁ~」


 なんで皆そんなにも俺の歌を聞きたがるんだよ……。


「格付けチェックに使う物も透夜くんに買ってきてもらって、テストは透夜くんに作ってもらってるから出来たら回答して透夜くんに渡す。それで透夜くんが採点して配信で答え合わせをする。透夜くんにやってもらうのはそれくらいかな」

「他にも手伝えることがあったら手伝いますよ」


 すると秋奈が俺の膝に手を置いてきた。


「じゃあグッズの梱包するの手伝ってよ! あれ凄く大変なんだよね~」


 グッズに関しては昨日から予約が開始された。完全受注生産という事もあり、既に相当の予約が入ってるらしい。

 それに俺以外の四人に関してはサインを書かないといけない。

 その間に俺がグッズの梱包をすれば効率よく作業を行えるし四人の負担も軽減される。

 それなら手伝う以外に選択肢は無い。


「うん、勿論良いよ」

「やったー! 負担へる~」

「透夜さんも出てくれるなら女性のリスナーも少しは増えてくれるかな?」

「二人も女性リスナーの割合少ないんですか?」


 秋奈と結唯さんからは俺が配信に出た事で女性リスナーが増えたと言っていた。

 聞いてみると今までは男性七割、女性三割だったのが六割と四割となり女性リスナーが一割増したらしい。


「私は他の三人に比べたら多いけど百合は凄く少ないね。確か一割だっけ?」

「うん。パーセントで言ったら7パーセントだよ」

「凄く少ないですね。でもどうして女性リスナーの割合を増やしたいんですか?」


 配信者側の立場の事なんてまだまだ知らないため、どうして性別の比率を気にするのかも分からない。


「女性の人と話したいって言うのもだけど、女性向けのコンテンツの配信をした時でも同時接続数を保っていられるからです」

「なるほど……」


 男性リスナーが多い配信者が男性向けではない、例えばボーイズラブ系や乙女ゲームの配信をしても視聴率が悪く伸びにくいって事か。


 けれど瀬奈さんはそれだけじゃないだろうな。

 初対面だし瀬奈さんの事は全然理解していないけれど、雰囲気から察するに瀬奈さんは可愛い物が大好きで好きの対象も女性なんだろう。

 だから今も円華さんにくっ付いて腕を掴んでいるんだろう。


「けど円華さんと瀬奈さんがコラボすれば瀬奈さんの女性リスナーの割合増えるんじゃないですか?」

「私もそう思ってたんだけどね、コラボした時は確かに女性リスナーの数は増えるけど、割合で言ったら減ってるんだよね。百合営業ってやつ? それで初見の男性リスナ―が凄く来てくれるんだよね。だから割合で言ったら増えないの」

「難しいですね……」


 俺の場合はその逆になるんだろうか。女性リスナーが多くなって男性リスナ―が少ない。


 それからみんなで何日の何時からどの配信をするのか、カラオケ配信などのスタジオの場所と予約時間の確認を一通りしてから今日はお開きになった。


 そして家に帰り夜パソコンを起動し動画配信アプリを開くと、丁度リンさんと百合さんがコラボで雑談配信をしていたので覗いてみることにした。


『今日のリンちゃん凄く可愛くてカッコよかったよ』

『百合こそ今日も可愛いかったよ。ずっとくっ付いてきてたもんね。雫月ちゃんとリサちゃん。それに三葉くんと一緒に居る時もずーっとくっ付いてたもんね』

『ちょっと! 言わないでよ!』


 二人の配信のコメント欄はてぇてぇという言葉で埋め尽くされていた。


 これが百合ってやつか……意外に良いな……。


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