目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第13話【デビュー配信】

「はぁ……なんか凄い緊張するな」


 俺は自室でパソコンに向かい深く深呼吸をした。

 遂に俺のデビュー配信の日となった。

 今までは秋奈と結唯さんとも一緒に配信して普通にできていたから大丈夫だと思っていたけれど一人だとこんなにも違うのか。

 今にでも二人のどちらでもいいから呼びたい気分だ。


「そういえば秋奈が今配信してるな。多分もう少しで終わるだろうけど見に行くか」


 少しでも気を紛らわせるために秋奈の配信を見にいった。


『そろそろ時間が迫ってきてるから終わろうと思うんだけど。その前に重大な告知をするね』


:マジで緊張する。

:お願いだから良い知らせであってくれ。

:待ってました!

:事務所所属か⁉


『大丈夫、悲しいお知らせではないよ。なんとこの後九時から雫月の幼馴染である三葉がVTuberとしてデビュー配信をしまーす!』


:マジで⁉

:激アツすぎる‼

:配信先のリンクはよ!


『配信のリンクはSNSに貼っておくね。それじゃあ雫月も三葉の配信見なくちゃいけないからそろそろ終わります! またね~』


 そう言って秋奈の配信は終了した。

 しばらくして配信待機画面を見ると、幾つものコメントがあった。そして待機人数はまさかの五百人を超えて六百人近く居る。


  そして遂に配信予定時間である九時になった。 


「えーっと……これって聞こえてますか……?」


:お、始まった!

:ちゃんと聞こえてるよ。

:デビューおめでとう!

:もう既に同接500人もいるのか! 

:投げ銭したいけどまだできないのが残念。


「良かった、ちゃんと声入ってるみたいだね。じゃあ改めて今日からVTuberとしてデビューしました桜城三葉と言います」


:三葉くん緊張してる?

:なんか普段よりも固い感じがする。


 どうやら視聴者には俺が緊張しているのがバレてるみたいだ。


「いやー実はちょっとだけ緊張してる。何度か雫月と配信してるしリサさんとも配信したから大丈夫だと思ってたんだけどね。いざ一人ってなると違うね」


:大丈夫大丈夫、雫月ちゃんも最初ガチガチだったから。

:それで初配信は何するの?


「今日はまず雫月から言われたファンネームを決めてから質問とか答えて行こうかなって思ってる。皆何かいい案ある?」


:三葉だから四葉とかは?

:三葉といえば四葉のクローバーが連想されるね。

:それや、クローバーとかどうよ。


「クローバーか、いいねそれ!」


 響きも良いしなんかカッコいいしこれで決まりだな。


「なんかすんなり決まったね。じゃあ質問あれば返して行こうかな」


:どういうジャンルでやっていくつもりなの?

:歌ってみたとか出す予定ある?

:やっぱり雫月ちゃんとの関係性聞きたいよね。


「えーっと、順番に返していくね。まずはどういうジャンル……うーん、普通に色々やっていこうと思ってるよ。ホラゲーでも頭脳系ゲームでも。歌ってみたはそうだな……出すとしても記念とかになるかな……」


:おい皆早く拡散して三葉の登録者増やせ!

:マジで三葉くん声良いから聞きた過ぎる。

:ボイスなんて出されたら私の耳が妊娠する。


「それは嬉しいけど歌を投稿するのは少し恥ずかしいな……まぁでもこうして活動者としてやっていくなら恥じらいは捨てろってリサさんに言われてるんで」


:雨音雫月✓ 因みに三葉は歌凄く上手だよ。カラオケ一緒に行くと殆ど高得点だもん。

:ずるい! 私も三葉くんとカラオケ行きたい!

:歌ってみただけじゃなくて歌枠も開いてほしい!


「えー……なんかそんな期待されると荷が重いよ……」


:めちゃくちゃ期待してる。

:てか雫月ちゃんとの関係はよ


「雫月との関係って言われても本当に幼馴染ってだけなんだよね。親同士が同級生で幼稚園から大学までずっと一緒だから良く遊びにも行くよ」


:よく遊びに行くのは雫月ちゃんの話し聞いてたら分かる。

:幼馴染って言ってもここまで仲良いの中々ないよ。

:羨ましい。

:三葉くんって苦手なゲームあるの?


「苦手なゲームか~。FPSはやったことないからもしかしたら苦手なゲームになるかも」


 こんな感じで段々と一人配信の雰囲気にも慣れて今まで通り話すことができ、一時間ほど質問を返したりして初配信を閉じた。


 すると秋奈からは『お疲れ様! 良かったよ!』と連絡が来て、結唯さんからは『初ソロ配信なの全然感じさせなくて中々やるじゃん』と来た。


 聞いた話によると二人の初配信が終始緊張している様子だったらしい。


 秋奈と結唯さんのおかげでチャンネル登録者数は初配信から一時間で七百人を超えた。

 いきなり七百人は相当良いスタートと言っていい。


「……ん? なんだこれ」


 スマホの画面が光り見てみると、あるグループに招待されていた。


「夏休み企画?」


 グループの名前はそう書かれている。


 メンバーを見てみると秋奈と結唯さん、そして早乙女百合と柊リンという人が居た。


『あ、来た来た』


 一応グループに入ると直ぐに結唯さんから連絡がきた。


『あのー、このグループって……』

『名前の通り夏休み企画のグループだよ。三葉くんもVTuberとしてデビューしたことですしちょっとゲストとして出てもらおうかなって思って』

『いやいや俺は全然良いんですけど他のお二人は良いんですか?』


 秋奈と結唯さんだけなら全然問題ないと思うのだが、早乙女百合さんと柊リンさんは一度も話した事も無い接点ゼロ。それなのにいきなり入ってきちゃって良いのか?


『初めまして~柊木リンです。三葉くんの初配信見てましたよ~。勿論オッケーです!』

『初めまして、早乙女百合です。私もリンちゃんと一緒に配信見てました。私も三葉さんと配信してみたいので大歓迎です』

『というわけで三葉くん! よろしくね!』


 こうして俺の夏休み企画参戦が決まった。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?