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第10話【水平思考クイズ】

「いらっしゃい二人とも!」


 俺と秋奈は約束通りぴったり六時に結唯さんの家にやってきた。


「それじゃあ早速配信開始!」


 結唯さんは凄い勢いで配信の調整を終わらせ配信を開始し始めた。


「やっほー皆。リンだよ~。今日は特別ゲストと一緒に水平思考クイズをやっていくね! それじゃあ早速特別ゲストの二人自己紹介どうぞ!」

「昨日の配信でお見苦しい所をお見せした雨宮雫月です……今日は雫月の天才っぷりを皆に見せたいと思います」


:雫月ちゃんに水平思考クイズは少し……いや大分早いんじゃないか?

:一問も答えられなさそう。

:それ以前にルール分かってるのか?


「ルールくらい分かってるよ! もう、じゃあ次どうぞ」

「えーっと、雫月の幼馴染の三葉です」


:これは三葉の一人勝ちか?

:しずリサのコンビは四人組の中でも馬鹿ワンツーだしな。

:最近三葉くん沢山配信に出てくれるから嬉しい。


「ちょっと誰がバカワンツーよ! 馬鹿は雫月ちゃんだけなんだから」

「ち、違うもん! 馬鹿はリサちゃんだけです!」

「どんぐりの背比べやめてね」

「むぅ……じゃあ早速ルール説明するね。水平思考クイズ、またの名をウミガメのスープは【はい】か【いいえ】で答えられる質問のみを出題者にして、それを元に問題の真相を当てるゲームだよ。今日は三人とも二問持ってきてもらってるから交互に答えて行って正解数が一番少ない人が焼肉を奢りって事で!」


 問題を出題する順番は結唯さん、俺、秋奈の順番に決まった。


「それじゃあ早速一問目。雫月さんは大好きな有名人からサインをもらった。けれど直ぐにびりびりに破いてしまった。一体何故?」

「えーっと、そのサインを書いた人は有名人のそっくりさん、ものまね芸人さんとかですか?」

「いいえ、違います」

「うーん。じゃあこれは直接手渡しで貰いましたか?」

「はい、手渡しで目の前で本人から貰いました」

「雫月はその有名人のアンチですか?」

「大好きな有名人って言ってるじゃん!」


 水平思考クイズは知ってはいたがやったことはないため実際にやってみると案外難しいな。

 どういう質問をしたらいいのかも分からないな。


「これって雫月以外の人も破きますか?」

「もしかしたら破く人もいなくはないけれど限りなく雫月ちゃんだけだね」

「この雫月は今隣に居る雫月に関係しますか?」

「いいえ、全く関係ありません」

「うーん。このサインは破かないといけないですか?」

「絶対に破かないといけないってわけではないです」


 やばいな、これメモとか取っていかないと質問の内容とか忘れて行ってしまう。


「その破ったサインは捨てますか?」

「いいえ」

「破らないと価値がないものですか?」

「えー、凄い悩むなぁ~。えーっとね、破らなくても価値はあるしなぁ。破る人によって価値が出るっていうか……」

「でも破って捨てないのって意味わからなくない? 人によって破った時に価値があるって……うーん。全然分からない」


 破ったサインを捨てないなら何に使うんだ? 破った人によって価値が変わる……例えば――


「この人は芸術家ですか?」

「おー! 近いけど違います。考え方は良い感じだよ」

「はい! その有名人はサインを破られて怒りましたか?」

「多分怒ってないと思います」

「怒らないの⁉ うーん、あ! その人は転売ヤーで宛名が書かれていたから要らないと破ったけど有名人の人は転売ヤー相手だと思ったから怒らなかった!」

「全然違います。だから大ファンだって言ってるじゃん!」


:やはり雫月ちゃんには早かった……。

:実質リサちゃんと三葉くんの対決。

:いや、リサも怪しいかもしれないぞ。


「その有名人の人は驚きましたか?」

「はい! 驚きました!」

「え~、怒りより驚きの方が先に来ちゃったのかな?」

「…………あっ。その雫月さんの職業が重要ですか⁉」

「はい!」


:お、三葉くんは答えにたどり着いたか?

:思ったよりは早かったな。


「答え行きます」

「え!? ちょっと待って、雫月まだ分かってない!」

「先に答えないと負けになるでしょうが! えーっと、雫月さんはマジシャンで破ったサインを元に戻す手品をして有名人を驚かせた!」

「三葉くん……正解!」


:流石三葉くん。

:相手が相手だ、三葉の勝ちは確定事項だ。


「し、雫月だって後ほんのちょっとで答え出せてたもん!」

「嘘つけ!」

「それじゃあ次は三葉くんが出題する番だね」

「それじゃあ問題です。朝目が覚めた男はカーテンを開けて昨夜の失敗に気が付いた。その失敗とは何でしょうか」

「はい! カーテンを開けないと失敗に気づきませんか?」

「うーん。気づかない事はないと思うけど起きて直ぐには気づかなくて起きて直ぐに気づくにはカーテンを開けるのが一番早いんだと思うよ」


 二人は真剣に考え始めて全然質問をしなくなった。


「ちょっと二人とも? 質問しないと解けないと思うよ?」

「あ、そっか。質問しないと」


:ウミガメ初心者ww

:雫月ちゃんさっきあんだけ質問してたのにwww


「この男の人は昨夜酔っぱらって女の人を家に連れ込んでますか?」

「沢村さん? 違います。連れ込んでません」

「その失敗をこの三人の誰かはする可能性がありますか?」

「リサさんの事をあまり知ってないので分からないですけど多分無いと思います」


 それから【男の人は少年ですか?】【男の人の失敗は相当なものですか?】【カーテンを開けた先に失敗した物がありますか?】等色々質問をされたが答えには全くたどりついていない。


:これ後何時間続きますかね?

:答えたどり着けない説。

:流石ワンツーコンビ。


「えーっとお二人ともヒント要りますか?」

「早くください!」

「じゃあヒント。男の人の失敗は自身の身体に関係する事です」

「やっぱり誰か連れ込んでんだ!」

「リサさんは一旦それから離れましょう」


 結構ヒントになると思ったが二人は一向に政界には近づかない。


「そろそろ時間的にもあれなんですけど……」

「待って! もう直ぐで分かりそう」

「じゃあ二人とも一回答えを言って間違ってたら二人ともゼロポイントで次に行きましょうか」


:制限時間とかつけた方が良いかもな。

:これ次この二人が回答者の時も大変だな。


「じゃあ最初にリサさんから」

「ん~~~。この男はカーテンを開けたら外が暗くて一日中寝てしまっていた」

「なるほど。じゃあ続いて雫月」

「男の人は窓に反射して映る自分の顔を見て昨夜お風呂に入って髪を乾かさずに寝落ちしてしまった事を思い出した」

「なるほど。えーお二人とも……ゼロポイントです」

「「えーーー」」


:この先が思いやられるな。

:これ耐久配信じゃなくて良かった。


「正解は、男は目が悪く、カーテンを開けて見た景色が鮮明に見えたことで、コンタクトを着けたまま寝てしまった事に気づいた。でした」

「あー、そっちだったかぁ。雫月のもう一個の案がそれだったんだよねぇ」

「嘘つけ」


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