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第8話【ホラゲ配信1】

「よし! これでセット完了。マイクはこのボタンでミュートできるから配信中にくしゃみとか他には例えば親フラとかした時に一発でミュートにできるんだ」

「なるほどな~」

「まぁくしゃみは女性VTuberだとたまにわざとミュートできなかったって言ってリスナーにサービス的な事をする人もいるけどね」


 なるほどな、女性VTuberにとってはくしゃみも武器になるのか。

 今の時代VTuberとして勝ち抜いていくにはこういう武器を使って行かないといけないのか。

 俺の武器ってなんだろう。この前の配信で声を褒められたけど声が良い配信者なんて山の様に居るし……ゲームが上手い配信者どころかプロの配信者も居るし……そういうのも考えないといけないな。


「このアプリを使えばボイスチェンジもできるようになるよ」


 そう言って秋奈はマイクに向かって『こんにちは』と言い、アプリを使って男声というのを選択した。

 すると声が低くなり男の声に変わった。


「へー、結構使えるな」

「このアプリはこのウェブカメラと連動してVTuberとしての身体を動かすことができるやつね」

「これは前秋奈と配信してた時に使ってたアプリと一緒だね」

「そうそうよく覚えてるね。それと透夜のVTuberとしてのモデルは既に作ってあるやつでまだ売れてないやつなら直ぐに渡せるよって言われてて、これなんだけどどうする?」


 そう言って秋奈が見せてきた男性キャラのモデルは黒髪に銀色のメッシュが入っていてめちゃくちゃイケメンだ。

 設定の欄を見ると身長は百七十三センチと書かれている。俺の身長は百七十一センチ。なんか負けた気分だ。

 けれど凄く気に入った。よし、これにしよう。


「じゃあこれでお願いしようかな」

「了解! じゃあこれで設置とかは全部終わったから私の家に行こうか」


 そして秋奈の家にやってきて再びパソコンの前に二人で座った。

 今日は秋奈の罰ゲームであるホラーゲームを配信する日だ。


「それじゃあ配信始めるよ」


 前回よりも同接は多い。けれど二回目と言う事もあって緊張は全然しないな。


「雨雲の皆やっほー。今日はこの前の罰ゲームで雫月がホラーゲームを配信しないといけなくなったんだけど……やっぱりやめにしませんか三葉さん……」


:待ってました!

:遂にこの時がやって来た!

:可愛い悲鳴待ってます。

:¥2500 栄養補給に来ました。


「ほら、雨雲の皆も楽しみにしてるんだからダメだよ。それに雨雲の皆にやるゲームのアンケート取ったんだから」


 事前にリスナーにやるゲームのアンケートを取り、結果病棟徘徊というゲームをする事になった。

 このゲームは結構怖いで有名だ。多くのホラゲー配信者も歴代でトップレベルの怖さと言っている。

 病棟徘徊は病院で看護師として働き始める主人公が夜の病院を見回りするゲーム。日が進むたびに奇妙な現象が起きたり患者が徘徊している。そんな現象ばかり起きる病院を不気味に感じた主人公は病院の過去を調べたりする。


「でもこのゲームスタート画面から怖いんだけど。スタート押したくない!」

 確かに秋奈にとってはこのスタート画面は相当怖く感じるんだろうな。

 音楽も不穏な音だし背景は薄暗い病院の廊下。時々明かりが点滅しているのもポイントが高い。


「本当に雫月は怖いの無理だよな。小さい頃にお化け屋敷に雫月と一緒に行ったんだけどね、雫月マジで泣きながらめっちゃ強い力で俺の腕掴んで離さなかったんだよね」

「ちょ、ちょっとなんでそんな事言うの! 恥ずかしいじゃん!」


 秋奈はあの時の様に俺の腕を掴みぶんぶん振ってきた。


:可愛すぎる

:尊いのやめてください

:もう付き合えよこの二人。

:逆に何で付き合ってないのか分からないんだけど。


「ごめんごめん。ついあの時の事思い出しちゃって」

「だからって皆に言わないでよ! 絶対ネタにされるんだから!」


:¥3000 勿論切り抜いて総集編としてアップします。

:また新たに可愛い雫月エピソードが増えたな。


「ほらー! こうなるんだから!」

「はいはい、ゲーム始めるよ」

「ちょっと! 勝手にスタート押さないでよ! 始まっちゃったじゃん!」

「始めるんだよ!」


 最初にちょっとした物語の説明、主人公が病院で働くことになった事などのストーリーが始まった。

 ボイス付きで主人公は女性だ。グラフィックも綺麗だからホラー場面とかも一層引き立つだろうな。

 これ秋奈大丈夫か……? もうちょっと身体震えてるしたまに俺の腕摘まんでくるし。


「ここから動かせるんだね……ってなんで夜に徘徊しないといけないのよ!」


:そういうゲームだからだよ。

:それが仕事だからだよ


「じゃあ雫月この仕事やめる!」

「ダメです。働いてください」

「やだ! 働きたくない! 雫月はVTuberなの!」


:無職やめてね。

:働きたくないやめてね。


「皆雫月の事好きなら養ってよ!」


 そう甘えた声色で雫月は発言すると――


:¥10000 養います。

:¥5000 任せてください。

:¥12000 雫月様の財布です。


 凄いな……たった一言でこんなにスパチャが……。


「それじゃあ雫月は今日で病院で働くのやめ――」

「やめません!」


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