秋奈と一緒に配信をした次の日、俺達は大型ショッピングモールにやってきた。
休日という事もあり人が沢山居る。
「うーんっと、やっぱりまずはパソコンがないと始まらないよね。どれが良いかなぁ~」
目的はVTuberを始めるための機材を買うためだ。
「うわっ、高っ!」
想像していたよりも遥かに高い値段につい声が出てしまった。
「透夜はどれが良いとかある?」
「とりあえずこの一番安いパソコンにしよう」
「何言ってるの! 配信活動するならこのスペックのパソコンはダメだよ。せめてこれくらいないと」
そう言われ色々とパソコンのスペックとかの話をされたが何を言っているのか殆ど理解できなかった。
結局秋奈から一番お勧めされたものにした。
「よし、次はモニターにマイクにウェブカメラにキャプチャーボードにオーディオインターフェイス……」
「ちょ、ちょっと待って。後半の方は聞いた事もないよ。一つずつ教えてくれ」
これから配信活動をする身としてこういった機械には詳しくなっておいた方が絶対に良い。
とは思ったものの、秋奈の説明を聞いたが、実際に使って見ないと俺には理解が難しいという事を理解し、購入した物が家に届いてからもう一度秋奈に実際に使いながら教えてもらう事にした。
なんせ専門用語を沢山言われるからな。
「これでとりあえずこれで必要な機材は全部買ったよ」
「ありがとう秋奈」
「全然良いよ。これで透夜と活動ができるなら。ねぇ透夜、せっかくショッピングモール来たから夏服買いに行っても良い?」
「勿論良いよ」
俺の買い物に付き合ってくれたんだ、秋奈の買い物にも勿論付き合う。けれど服屋と聞いて俺は一つの不安事があった。
それは――
「ねぇどっちが似合うかな」
この究極の二択だ。この二択の選択によって秋奈からの好感度が変化する。間違う事はできない。
ファッションセンスなんて全くない俺にとってはどっちも似合うしどっちも可愛いと思ってしまう。
「とりあえず試着してほしいかな」
合わせられただけじゃ分からない。実際に着てもらわないと。
「分かった! 試着してくるね」
それから数分後、試着室のドアが開き白色のTシャツにブラウンチェックのショートスカートを着た秋奈が出てきた。
「どうかな? 似合う?」
「か、可愛い……」
つい小声でそう言ってしまった。多分秋奈には聞こえていないから大丈夫だと思う。
想像していたよりも何倍も可愛い。
「凄い似合ってるよ」
すると秋奈は笑顔を浮かべて笑った。
そして二着目の薄ピンク色のフレアスカートも試着し終わり、どっちにするのか改めて選ばないといけない。
「どっちの方が可愛かった?」
「うーん。どっちも似合ってたんだよなぁ~」
「似合ってるかじゃなくてどっちの方が可愛かったって聞いてるの!」
「だからどっちも可愛かったから悩んで……あ」
つい可愛いって本人の前で言ってしまった。
秋奈はそれを聞いて満足そうにニヤリと笑みを浮かべた。
「ねぇねぇ今なんて言ったの~? 良く聞こえなかったからもう一回言ってほしいなぁ~」
「とにかくどっちも良かったって言ったんだよ!」
そう悩んでいると店員が話しかけてきた。
「何かお悩みですか?」
「どっちの方が良いか悩んでまして」
「そうですねぇ、彼女さん凄くスタイル良いのでどちらも似合うんですけど、第三の選択としてこちらはどうでしょうか」
そう言って店員は白色のブラウスに膝辺りまでの花柄のスカートだ。
「彼女さんの素材の良さを引きたてるためにあえてシンプルな服が良いと思います」
流石は服屋の店員と言ったところか、さっきの二着よりも遥かに秋奈の良さが際立っている。
そもそも秋奈は何を着ても似合うし可愛い。これは間違いない。
「店員さん、その服ください」
「え、透夜?」
「ありがとうございます。ではレジまで」
店員に案内されレジまで向かい、会計を済ませた。
「良いの? 勝ってもらっちゃって」
「良いんだよこれくらい。プレゼントさせてくれ」
秋奈にしてもらったことを考えたら服なんて安い。
それに可愛い秋奈を見るのは目の保養になるし。
「えへへ、ありがとう。大切に着るね」
それに加えこんな笑顔を見せてくれるなら安いなんて言葉じゃ表せないな。
「そう言えばさっきの定員さん、私の事彼女さんって言ってたね。私たち事恋人同士だと思われてたね」
「ッ⁉」
「ふふ、今ドキッとしたでしょ」
そう言ってニヤニヤしながら俺の脇腹を肘で突いてくる。相変わらず俺の事を揶揄ってくる。
「してない!」
確かに周りからしたら俺達はカップルだと思われているのか……。
いつかは本当に……なんて考えてしまうな。
「お昼も食べてっちゃおうか」
「そうだね」
スマホで時間を確認すると昼食に丁度いい時間だった。
近くにあった良い感じの雰囲気の店に入り、一番人気と書かれているカルボナーラを注文した。
「あっ!」
「びっくりしたー。どうしたの急に」
秋奈がいきなり大きな声を出してびっくりした。
「大切な事忘れてた!」
「大切な事?」
「VTuberのイラストと2Dモデルは私のママと一緒の人に頼んでおくね」
VTuberは自身のイラストを生んでくれたイラストレーターの人をママと呼んだりする。
もしその人が俺のママになってくれるなら俺と秋奈はVTuberでは兄妹みたいなものになるのか。
「凄くイラストが上手なんだよ~」
そう話をしていると秋奈のスマホが震えた。
「ん? 誰からだろう……リサちゃん? ちょっと出るね」
「分かった」
「もしもしリサちゃん? どうかしたの」
『おはよう秋奈ちゃん。今って何してる?』
「今は幼馴染と一緒にショッピングモールに来てるよ」
『おー! 今話題の三葉くん! もしかしてデートの邪魔だったかな?』
いきなり秋奈の頬が赤くなったけど一体何を話しているんだろう。
「ち、違うから! そ、それで何か用?」
『夏休み企画のグッズが届いたから確認してもらおうと思って。へ~、三葉くんと一緒なんだ~。私も三葉くんに会ってみたいな~。良かったら一緒に私の家にグッズ確認しに来てよ!』
「え!? うーん。ちょっと聞いてみるね。後で連絡するね」
『うん。分かった。待ってるね』