「よし決めた! これにする」
そう言って雫月が選択したのは五目並べだ。
「五目並べなんてやったことないしルールも良く分からないよ」
「大丈夫だって。ルールは凄く簡単だから。オセロは分かるでしょ? オセロみたいにお互いに石を置いて行くんだけど――」
「まぁなんとなくは分かった」
結構単純なルールだな。これなら負ける気がしない。
しっかりと考えれば負けるはずがない。
「先手は私だね。五目並べって最初は重要じゃないから」
そう言って秋奈はど真ん中に石を置いた。
「雫月は五目並べやったことあるの?」
「うん。この前リサちゃんとオセロやった時に五目並べもやったよ」
:結果は驚異の六連敗。
:開始三十秒で負けたのは伝説。
:切り抜きもめっちゃ再生されてたよね。
:雫月ちゃんはいつも自身満々で負けまくるからな。
:これが通常運転。
:雫月ちゃんの良い所でもあるけどな。
「雫月さ~ん? リスナーの皆が六連敗とか三十秒で負けたとか言ってるけどどこからその自信が湧いてるんですかね」
「いやいや、雨雲の皆は今の私を知らないだけだから。実はあの後リサちゃんとオセロも五目並べも特訓したから負けないよ」
「いやでもさ、これちゃんと考えて置いたら負けなくない?」
「そう思うじゃん? 負けるんだよ」
そんな事を真剣な表情で言わなくても……。
:経験者は言葉の重みが違うな。
:あの時の雫月も三葉くん以上に自信満々だったのに分からされてたからな。
「それは雫月がバカ……痛ッ! な、なんでもないです」
雫月はむっとした表情をしながら俺の脇腹をつねってきた。
:おっと雫月さん? 今何をしました?
:これは雫月ちゃんの反則負けでいいのでは?
「雨雲の皆静かに、雫月は可愛いから無罪なの。ほら、次は馬鹿三葉の番だよ」
「……はい」
五目並べにも将棋やチェスの様に定石があるのかもしれないがそんなのルールすら良く分からなかった俺は知るわけがない。とりあえず秋奈が置いた場所の右隣に置くとしよう。
「因みに五目並べって先手が有利とかあるの?」
「なんかリサちゃんが言うには先手が必勝らしいよ」
「おい、それだったら俺の負けじゃん」
「でも雫月どういう手順で必勝になるかとか分からないよ」
そう言って雫月は一手目に置いた上に石を置いた。
それから俺は秋奈に三つ以上並べさせないようにしつつ自身の石をつなげられるように置いていった。
:雫月ちゃんにしては粘っている。
:あの時の雫月ちゃんからは考えられない。
「んー、中々やるなぁ~じゃあここ!」
すると秋奈は今まで置いていた場所とは離れた所に石を置いた。
「それって意味あるの?」
「雫月は三葉と違って先まで読んでるからね」
「ふーん。じゃあ俺もそこに置くか」
「あー雫月の真似した!」
「別に良いだろ真似しても」
それからも順調に石を置いていった。予想以上に石が置かれているからかコメントは驚きの声で溢れていた。
秋奈ってそんな弱かったのか……。
そう思いながら石を置いた瞬間――
「あー! やっちゃったね~三葉くん」
「え? いやいや五個並べられないでしょ」
盤面を見ても詰みには見えない。
:嘘だろ、三葉が負けた?
:雫月ちゃんの急成長に涙が止まらない。
:雫月俺誇らしいよ。
:三葉、流石に恥ずかしいよ……。
:雫月に負けるなんて……。
けれどコメントでは雫月の勝ちが確定したかのような様子だ。
「ここに置いたらっと」
「そしたらここ止めればいいだけでしょ?」
「ふふーん。三葉さん、ここも置けるんですよっと」
そう言って秋奈は一番端に石を置いた。
「えぇぇえええ⁉ そこ置けるの⁉」
「やったー! 初めて勝ったよ皆!」
秋奈はその場で小さく飛び跳ねて喜んだ。
「いやいやいや! ここに置けるなんて知らなかったし初めてだから! もう一回やろ、もう分かったし絶対負けないから」
あんだけリスナーの皆から弱いと言われまくった秋奈に負けるなんて屈辱すぎる。
「はいはい負け惜しみですね~」
隣の秋奈は初勝利が相当嬉しかったのか、それとも俺の事を馬鹿にしてるのか満面の笑みを浮かべてそう言い、再び五目並べを始めた。
次の先手は俺だ。さっきの秋奈と同じくど真ん中に石を置き、秋奈も俺と同じように右隣に置いた。
:三葉くんの置き方がさっきは守りばかりだったけど今回は攻めてるね。
:また三葉くんが負けたらチャンネル登録解除します。
「何でよ! 雫月のチャンネルじゃん!」
「まぁもう負ける気しないから大丈夫だよ、登録者減らないよ」
「全然大丈夫じゃないし雫月が負けないんだもん!」
「……ん? でもさ、ここに置いたら」
「…………あ」
俺が今置いた石によって黒がエル字になった。そしてその先には白の石はない。つまり縦の列を阻止しても横の列で隣に白の石が存在しない四つ黒色が並び、横の列を阻止しても縦で四つ黒色が並び俺の勝ちが確定する。
「ちょっと三葉さん。さっきみたいにこっちに置きませんか?」
そう言って秋奈はさっきと同じように今まで置いていた場所とは離れた場所にポツンと石を置いた。
俺はそんな秋奈を無視して目的の箇所にカーソルを合わせた。
「三葉くん? 違うよ、そこじゃないよ。ほらこっちだよ」
「ちょ、おいこら! コントローラーを取り上げようとするな!」
「だってぇ~!」
頬を膨らませる秋奈なんてお構いなしに石を置き、この勝負は俺の勝ちになった。
:¥3000 よくやった三葉。俺は信じてたぞ。
:¥1500 ナイス三葉! 次も頼むぞ。
:このまま残りのゲーム全勝してくれ。
「よし! これで二対一になったな。さっきは雫月が選んだから次は俺が選ぶね」
「いやいや、ここは負けた私が選ぶんじゃないかな?」
「五目並べは一勝一敗で引き分けだろ。じゃあ次はこれ」
俺が選んだのはチェスだ。
「無理無理! 雫月チェスのルールなんてなんも知らないよ⁉ チェスって名前しか知らない」
「俺だって五目並べルール知らなかったわ!」
:へぇー三葉くんチェスできるんだ。
:いや分からないよ、ルールが分かるだけで雫月には絶対にできないって思っての選択かもしれない。
「チェスは昔暇な時にやってみたら面白くてずっとやってたんだよね。この駒はポーンって言って前に一つか二つ動かせるんだけど、前の二マスのどちらかに駒があっても取ることはできないんだ――」
それから俺は丁寧にチェスの駒の動かし方、ルールを教えた。
「最悪このアシスト機能使えば動かせる場所表示してくれるみたいだしリスナーの皆に助言してもらっても良いし」
「でもリスナーの皆は絶対雫月が負けてほしいって思ってるから教えてくれないでしょ」
「うーん。じゃあ俺がチェスで負けたら全体で負けた時の罰ゲームとは別に罰ゲームを受けるっていうのはどう? 最初らへんにコメントであった歌ってみたを上げるとか」
:それめっちゃあり。
:絶対勝てよ雫月。
:ここで勝たないでいつ勝つんだ雫月!
「うんうん、任せた雨雲の皆」
:任せるなって言いたいけど言えない。
:俺らでなんとかするしかないな。
「よし! じゃあ始めるか。先手は俺だな」
俺はd4にポーンを動かした。
:d5
;d5
:d5
「ちょっと待って皆、私そんな用語で言われても分からないって」
「d5はここ。てかこれ表示オンにすればいいだけじゃん」」
「あー、なるほどここね。皆良く知ってるね」
チェスは先手である白色から盤を見て下から上にマス事に一から八まで番号が振られ、左から右にaからhまで振られている。
次に俺はc4にポーンを動かす。
これはクイーンズギャンビットというチェスの有名なオープニング。いわゆる定石というやつだ。
「えーっと次は、c4? これで三葉の駒を取れば良いの?」
「それで合ってるよ」
そのまま俺と雫月……というかリスナーと駒を動かし続けた。
けれど圧倒的に俺が優勢。
:待って、俺もチェスやってるけど三葉くん上手すぎじゃね。
:勝てる想像が全然浮かばない。
:雫月ちゃん、もう多分詰み。負け。
:なんか三葉くんの歌ってみたを聴けないのは残念だけど雫月ちゃんのホラゲー配信へ一歩近づいたと思うと嬉しいって思うし複雑。
「えっ! もう雫月負けなの⁉ えーもっと頑張ってよ皆!」
:詰んでるからこれ以上やっても意味ないよ。
:詰みの意味わかってない説。
「分かってるよ! えー、これ雫月の負け点増えるの~」
「当たり前でしょ!」
「むぅー。てか三葉ってそんなにチェス上手なの?」
:ガチで強い。
:ランキング上位レベル。
「実は某有名なチェスのアプリでランキング上位に入ってたんだよね」
:えぐすぎる。
:それは流石に上手すぎる。
:勝てるわけなくて草。
;AI使うしかないか。
「えー! 三葉って凄いんだね!」
「これで三対一だな」
「雫月が三で三葉が一ね」
「逆ね? 勝手に勝敗捻じ曲げるのやめてね?」
それから俺達はオセロ、スピードと色んなゲームで遊び、結果は七対二で俺の勝ちとなり秋奈の罰ゲームとなった。
秋奈は結構……いや大分ごねていたがリスナーの皆に諦めろと何度も言われ諦めて罰ゲームを受け入れた。