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第3話【初めての配信】

 時刻は夜八時。ついに配信開始の時間になった。

 さっきまでは秋奈と雑談をしていてなんとも思わなかったが、いざ配信直前になると緊張が凄い。

 俺の話しが何千人の人に聞かれると思うとしっかりと話せるか心配だ。


「どうしたの透夜? もしかして緊張してる?」

「そりゃ初めての配信になるし沢山の人に見られるって思うとな」

「大丈夫大丈夫、なんとかなるよ。それじゃあ配信始めるね」


 そう言って秋奈は配信開始のボタンをクリックした。


「雨雲の皆やっほ〜。今日は告知していた通り【地球のゲーム対戦39】を雫月の友達のVTuberと一緒にやろうと思ったんだけど皆予定があって一人になっちゃったから特別ゲストを呼んだんだ〜」


:特別ゲスト?

:まさか初コラボのVTuber?


「皆驚くと思うよ〜。じゃあ特別ゲストさん、自己紹介どうぞ!」


 そう言って秋奈は俺の方にマイクを向けた。


「は、初めまして。えーっと雫月の幼馴染です……」


:え!? マジで言ってるの!!

:神回確定じゃん!

:てか幼馴染くんイケボすぎない?

:それな。普通に歌ってみたとか出してほしい!

:¥5000三葉くんを私に下さい。

:そういえば雫月ちゃん、VTuberやってる事幼馴染とか周りに言ってないって言ってたけど良いの?


「あー、それなんだけどね。雫月がVTuberやってる事今日幼馴染にバレちゃったんだ」


:まさかの身バレww

:まぁあれだけ幼馴染の話してたらバレるよ。

:いったいどれだけ幼馴染との惚気話を聞いたことか。

:そういえば幼馴染くんはなんて呼べばいいの?


「そっか、なんて呼べばいい? 流石に本名だとまずいから」

「うーん。それじゃあ三葉みつばって呼んで」


 昔からネットのアカウント名やゲームのプレイヤー名は殆ど三葉にしていた。何故三葉なのかと言うと凄く単純で、初めてプレイしたゲームではプレイヤーネームを決める際にランダムという項目があり、それで出た名前が三葉でそれ以降ずっと使っているというだけだ。これと言って特別な理由はない。


「三葉ね! それじゃあ呼び方も決まった事だしゲームプレイしていこう!」


 ゲームを起動すると画面に見慣れた名前のゲームから聞いたこともないような名前のゲームが沢山表示された。


「せっかく二人で勝負するんだし負けた数が多い方が罰ゲームにしようよ。罰ゲームはリスナーの皆に決めてもらって」

「まぁ負ける気しないから良いよ」

「いやいや、雫月結構ゲーム得意だし! 雫月だって負ける気しないもん」


:罰ゲームなら雫月ちゃんにはホラゲーを配信してほしい。

:雫月ちゃんの悲鳴でしか得られない養分があるから頼んだ。

:絶対に勝て三葉! 負けたら許さん。

:三葉くんには今話題のあの激辛ラーメン完食してもらおうよ。

:辛いの全然大丈夫な俺でも無理だったぞあれ


「よし! それで決定ね! 雫月は負けないからその激辛ラーメン買っておかないとね! 因みに三葉は辛いの凄い苦手だよ」

「何言ってんだよ。買うのは最恐のホラゲーだろ?」


 最初は緊張したけど、秋奈と一緒に居るからか配信しているって事を忘れそうになっていた。


「じゃあ最初は一番目にあるヒットアンドブローってゲームにしようか」

「ヒットアンドブローは俺も知ってるよ」


ヒットアンドブローは、1から4までの数字があり、あらかじめランダムでそれぞれに色が付けられている。プレイヤーからそれは見る事ができず、六色の色のコインの中から選択してそれぞれの番号に設置する。

 もし1から4までの中にある色を二つ選択していればツーブローと表示され、番号プラス色が合っていればヒットと表示される。

 それを交互に行い、先に1から4全ての色と場所が合っていれば勝ちとなる。


:頭使う系のゲームは雫月ちゃん大丈夫か?

:この前オセロでリサちゃんに馬鹿みたいな点差付けられて負けてたからな。

:あれは見てて胸が痛くなった。

:驚異の四連続パスwww

:いや、三葉くんもアホな可能性がまだある。


「先手は俺からか。まぁまずは全部白色で……ノーヒットノーブローか」


 つまり白色は一つも正解ではないという事だ。


「う~ん。一番を雫月カラーの水色にして~」

「それ水色じゃなくて青じゃないの?」

「もー! 水色で良いじゃん! 細かい男は嫌われるよ。二番目は紫で三番目は緑、四番目は赤……ワンヒットツーブロー」

「えー、これ次狙って違うってなったら雫月に大ヒントを与えることになっちゃうんじゃないの? って事であえて二番目と三番目を変えるだけにしてみよっと」

「なんでよ! ヒントになって良いじゃん!」

「良くねぇよ! 激辛なんて絶対食べてたまるか!」


決定を押すと画面にはツーヒットワンブローと表示された。


 つまり紫か緑は確定でこの場にあるという事だ。そして水色か赤も今の場所で合っているという事になる。


「じゃあ水色と緑が合ってるって事にして三番目を赤にして四番目を黒色に……ツーヒットワンブロー」


:お、これ次でいけるんじゃないか?

:頼んだぞ三葉! お前に雫月ちゃんの悲鳴がかかってるんだ。


「待ってよ……ツーヒットは水色と緑? 赤を移動させても変わらなかったって事は赤は無くて黒がブローって事だよね。黒を三番目に置いて紫を四番目に置けば……ちょっと雫月さん? この手は何ですかね」


 秋奈はボタンを押そうとする俺の手を掴んできた。

 リスナーの皆には見えないが、秋奈はむっと頬を膨らませてきた。けれどそんな可愛らしく怒りを露わにされても可愛い以外の感情は湧いてこない。


「ち、違うんじゃないかな。水色が違うって事もあるかもしれないよ」

「いや、これで合ってますね」

「待って待って待って、無理ダメ。お願い三葉!」


 そう言って秋奈は上目づかいで懇願してきたが俺は容赦なくボタンを押す。

 画面には大きく【フォーブロー】と表示された。


「うわぁ~! 三葉大人げない! 最低! 女の子に酷い事しちゃいけないんだよ!」

「なんでだよ! 勝負に性別は関係ない!」


:¥5000よくやった三葉。

:¥2000この調子で全勝頼んだぞ。

:もう雫月ちゃんの罰ゲームで良くね? どうせ負けるでしょ。


「良くないよ! まだまだ沢山ゲームあるんだから勝負はこれからだもん!」

「まぁなんのゲームでも勝ちますよっと」

「じゃあ次はしょうがなく負けてあげた私がゲーム選ぶから!」

「はいはい」


 秋奈は頬を膨らませながら次のゲームを選び始めた。


「三葉のやったことないゲームにしようかな」

「おい、反則だぞそれ」

「しーらない!」


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