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第2話【幼馴染の部屋】

 秋奈は一体何を言っているんだ? 

 俺が秋奈の配信に出る? 聞き間違いじゃないよな……。


「え、ちょっと待って。今何て言った?」

「私の配信に出てみない?」

「え、いやいやなんで急にそんな提案してきたんだよ」

「最近発売された【地球のゲーム対戦39】ってゲームの配信を今日しようと思ったんだけどね、友達のVTuberは皆予定あったり忙しいみたいでコラボできなくて。でも一人だとNPCと対戦することになってあんまり盛り上がらないじゃん? だから透夜と一緒にやりたいなぁ~って思って。それに私配信で透夜の事結構喋っちゃってるからリスナーの皆にサプライズも込めて良いかなって思ったんだけど」


 いやいやでも俺VTuberでも配信者でもないし……。

 でも確かにNPCよりかは対人の方が配信は盛り上がるんだよな。てかそういうゲームでNPCのみと戦う配信なんて全然見たことない。


「ダメ……かな?」


 ……そんな可愛らしく上目遣いで見つめられたら断れないって。

 それに俺が配信に出る事で少しでも配信が盛り上がるなら……秋奈の夢に少しでも近づく貢献ができるなら。


「ダメ……ではないけど」

「けど?」

「俺なんかが秋奈の配信に出ちゃって良いの? ほら、俺一応男だし女性VTuberと幼馴染と言え男が一緒に配信したら色々言われたりガチ恋勢の人から反感買ったりしないの? それに配信なんてしたことないから上手くやれるか分からないし」


 とある女性VTuberは男性と二人でご飯に言った事を配信で話しただけでガチ恋勢が文句を言ったりしたらしいし……それだけは心配だ。

 まぁ秋奈じゃなくて俺の方に怒りの矛先が向くと思うけど。


「それは大丈夫だと思うよ。私が配信で透夜の事話してる時もコメント欄荒れたりしないしむしろ幼馴染を配信に出せーって言われたりするもん。あ、勿論皆幼馴染が男って事は知ってるよ。それに誰でも初配信はあるんだから透夜も大丈夫だよ。普通にゲームするだけ」

「出せって言われてるのかよ……まぁそれなら良いんだけど」

「それって私と配信してくれるって事で良いの⁉」

「うん、良いよ」


 俺がそう言うと秋奈は満面の笑みで喜んだ。

 こんな笑顔が見えるなら何度でも出ようと思ってしまう。


俺達はお目当てのパンケーキを平らげた後、寄り道することなく秋奈の家へとやってきた。


「ただいま~。あ、今日お母さん達温泉旅行に行ってるからいないんだった。……透夜? どうかしたの?」

「あ、いやなんでもない」


 普段秋奈とは色々と出かけたりしているのだが、家に上がるのはなんやかんや凄く久しぶりだな。最後に秋奈の家に上がったのは確か四年前の高校一年生の頃だったか。

 なんか凄い緊張するな……。


「さぁさぁ上がって」


 言われるままに秋奈の後に続いて部屋に入ると、右奥にはL字のデスクがありモニターが三枚にマイクが設置されており、いかにも配信者って感じの部屋になっていた。

 四年前の記憶にある秋奈の部屋とは全然違う。カッコよくお洒落な部屋ではあるけれどベッドの上には可愛らしいテディベアが置いてあったりとしっかり女の子って雰囲気の部屋だ。凄い良い匂いもするし。


「な、なんか異性の人を部屋に招くのってドキドキするね……ど、どうかな? 結構お洒落でしょ?」

「うん、なんかこういう部屋憧れるな」

「えへへ、ありがとう。あ、適当に座って良いよ。私は配信の準備しないといけないから」


 そう言って秋奈はゲーミングチェアに座りパソコンを起動させた。

 後ろから覗いてみたが、パソコン等の機械にそこまで詳しくない俺には何をしているのか全く分からなかった。

 秋奈、いつの間にこんなパソコン使えるようになったんだ。



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