「そうそう、そこでさリボンを付けて」
「色はどうする?やっぱり赤か?」
「少し深みのある赤がいいかな」
「エンジなんてどうだ?」
「ああ、それいいわ」
「ついでに同じ色のさ……」
「あ、やば…………ぐふっ」
「おまっ……その笑い方やめろって、釣られんだろ」
暗がりの室内、明かりは窓から入る月明かりだけで1組の男女が大量の紙を見ながらぐふぐふと笑っている。
溢れるレースや薄くテラテラした生地だったりと小さな丸テーブルには沢山のサンプルが重なり合い山のようになっていた。
「このレース良くないか?」
「いい!こっちもいいな……」
「色違い作るなら、こっちの色にはこっちのレースじゃね?」
「……………………お主も悪よのぉ」
「なんだ、その悪い顔は」
「くっ!!理解してもらえないっ!!」
芽依は生地を掴んで悲しげな表情をしているのをカイトは呆れたように見ていた。
ここは呉服店ウササン。
由緒正しき呉服店さんなのだが、名前はウササンである。
なんと可愛らしい。
その15代目店主のカイトは芽依のカテリーデン販売の常連客である。
「しかし、いいのか?サイズ違うぞ?あの白だけじゃないのか?」
「うん、うち家族がまた増えてね!その人の分だよ」
「…………最近増えたって……まさか」
「あ、あの日カテリーデンに居た?」
「……………………まぁ」
言いずらそうに言葉を濁すカイトに芽依は笑った。
「うん、フェンネルさんの。似合うと思わない?あの真っ白綺麗な儚げ美人にお揃いメイド服!」
「似合うけど!それなら赤ベースのをフェンネルさんの方がいいとおも………………じゃなくて!着せんの!?」
「なんで着せないの!?」
「いや、お前…………えええぇぇぇ」
「フェンネルさんノリいいから着てくれると思うよ?」
「……………………大丈夫なのかよ、狂ってんだろ?」
言いずらそうにモゴモゴと言うカイトに芽依は真剣に見て言った。
「大丈夫だよ、フェンネルさんなら大丈夫」
「……………………そうかよ。じゃあ、フリルカチューシャか、猫耳どっちにする?」
「その切り替えいいよ!いいよ!メイド服にはフリルカチューシャかな……」
「おうよ!リボンも付けるぞ!」
「楽しみすぎて鼻血でそう……」
こうして深夜の衣装作り制作は数回にわたり開催される。
後にメイド服のみならず様々な衣装作りにカイトを巻き込み2人でぐふぐふと笑いながら制作に勤しんだのだった。