自宅に帰った葉月は、シャワーを浴び、ベッドの上に大の字になった。

　まだ心臓がどきどきしている。

　西島が触れたウエストに、手の感触が残っていた。

「はずかしい……」

　ごろりと寝返りを打ち、枕に顔を埋める。

　頬が熱いのは、シャワーのせいか、それとも……。

「んんーッ！」

　枕に顔を押し当てて大きく声を上げる。そして、ぷはっと顔を上げると、盛大に息をついた。

「はぁ……。バカね。中学生じゃあるまいし、ハグしたぐらいで……」

　恋愛経験がない訳じゃない。だけど、こんなにどきどきするなんて。

「心臓が悪いのかしら」

　思わずスマホを手にする。どこか調子が悪いと、直ぐに検索する癖がついた。

『胸がドキドキする　原因』

　キーワドを入れる。だが、検索はしなかった。

　本当は答えなんか分かっている。

　自分は西島に惹かれているのだ。

　公園で思わずしがみ付いた自分を、拒絶することなく抱きしめてくれた西島。

　西島の腕が緩み、互いの目が合った時、葉月には予感があった。

　あったのだ。

「なんでぇ～！」

　葉月はあの時のことを思い返し、枕をバシバシと叩いた。

　２人の目が合ったその瞬間、西島はふいに葉月から体を離すと周囲を見回した。

　そして、遅いから送ると、１時間かけて葉月を家の前まで送り届け、そして帰って行ったのだ。

「何がいけなかったのかな。ラーメンにニンニクは入れてないし……。え。太ったとか？　意外に腰回りが太くてうわっ！　とか？」

　葉月は鏡の前でパジャマを捲った。

　なぜだ。

　どこだ。

　何がいけなかった？

　必死に考えるも、なにも浮かばない。

「なんで？　なぁんでよぉぉぉぉーッ！」

　葉月の不毛な夜が更けていった。