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2章…第3話

「嬉しい…ありがとう!」


なぜか、香里奈さんは吉良に抱きつき、喜びを表現してる。


え…っと、賛成したのは私で、吉良はまだ何も言ってませんけど…?


「…おいっ離せバカっ!くっつくなって言ってるだろ!」


吉良は力づくで香里奈さんの細い腕を引きはがしたものの…


「いやぁ…!痛い…」


甲高い声でそう叫ばれて、慌てて手を離せば、またギュウギュウ抱きつく始末…


「…うっ…」


私はフォークをくわえて、涙目になりながら愛する人が美女に抱きつかれているシーンを横目で見るしかなかった。


吉良が必死に距離を取ろうとしてるのはわかるけど…私がいなかったら襲われてしまうんじゃない?


それほど強力な抱擁…。



「…言っておくがっ!」



香里奈さんがドサクサに紛れて吉良の首筋に唇を当てているところを見て、私が声にならない声を上げたと同時に、吉良が香里奈さんを突き放しながらきっぱり言った。



「今後、こんな風に俺に抱きついてきたら、言語道断で出ていってもらうからな」



自分の体から香里奈さんを引き剥がして、手首を掴んでいた手をパッと離す吉良。



「それから…わかってるだろうが、俺はモネと将来を誓い合った恋人だ。だから当然、お前に遠慮なく、愛を確かめ合う行為はするからな」


「…なっ…なん…て?」



なんて発言を…?!私は思わず真っ赤になって吉良を見つめた。


その目はつい…恥ずかしさから少し非難めいていたかもしれない…



「…ふん。こんなウブなフリした子にそんなこと言っても、受け入れてもらえないんじゃない…?」



バカバカしい…と言いたそうに席に戻り、ズボボ…っとパスタを吸い込む香里奈さん。


よほど悔しかったのか…3口で食べ終わってしまった。



「あ、あの…落ち着いて食べないと、お腹痛くなっちゃいますよ…?…あと、私の作ったサラダも、食べて下さい」



本当は吉良が華麗に刻んだ野菜を盛り付けて、吉良が開けたツナ缶とホールコーンを乗せただけだ…。


そっと取り分けたサラダボールを香里奈さんに押し出すと、燃えるような目で私を睨み、ひとこと「いらないっ!」と言ってゴミ箱に捨ててしまった…


そのまま部屋に行ってしまったので、残された私は、お皿ごと捨てられたサラダをゴミ箱に確認しに行ってため息をつく。



「…ごめんな。モネ…」



後ろから来て、吉良が放り投げられたお皿を救出してくれる。



「うん…でもなんか、どうしたらいいんだろう」



妹とはいえ、吉良と血が繋がってない香里奈さんが恋をしてしまう気持ちはわかる。

でも、だからといって私が身を引くなんてできるはずないし…



「十分だよモネ。香里奈の転職の意欲を認めて、ここにいさせてあげるなんて…そんなことなかなか言えないだろ」


「うん…もうすぐ就職の自分と重なっちゃって、頑張ってほしくて…」


「優しいな…本当に癒される…」



頭を撫でてくれる吉良。


食べ終わって後片付けを終えてから、そんな吉良が当たり前みたいに私の手を引いてどこかへ連れて行こうとした。



「ん?なに…」


「一緒に入ろ」



バスルームの脱衣室。吉良によって引き戸を閉められる。



「…なっ!?だ、ダメだよ。吉良、先に入ってきて。私は後で…」


「ダメ…さっき抱きつかれた熱が再燃し始めた」



慌てて逃げようとするも、吉良に体で出口を塞がれ、私の手を自分の弱点であるお腹に持っていく…


こ、これは…かなりキテるやつだ。


ドキドキしながらも、手を持っていかれた都合上、ゆるゆると吉良の腹筋を撫でてみる。


ふと見れば、吉良は自分の着ているシャツの裾をくわえて…胸元までチラつかせてる…


なに…?この色気…危険すぎる。



「…はい、おしまい。えへへ」



笑ってごまかしながら手を離すと、一瞬でバシっと掴まれ…



「ダメ…そのまま下までいってよ…」



はぁ…ん…!?

誰が拒否できます?こんなイケメンのダダ漏れの色気を。

回避できる人がいるなら、今すぐここへ来てもらいたい!


ちょっとだけ触れたけど…やっぱり鍵の閉まらないこんなところであれこれするのは気が引けて…吉良に抱きついて自分からキスをすることで許してもらう。


吉良はいまだに、私からのキスやハグに少し動揺するみたいで、特に深いキスなんかしたあとは…ちょっと呆然としてくれる時がある。


今回は弱点のお腹ナデナデもあってか、だいぶ呆然としてくれたので、その隙にそっと脱衣室を出た。



…お風呂から出てくる吉良をリビングで待ってたのは、香里奈さんを牽制する意味もある。


信用しないわけじゃないけど、さっきの強力な抱擁を見せつけられて、もし吉良のお風呂を覗かれでもしたら…と不安だったから。


するとお風呂から出てきた吉良に、ジト…っと恨みがましい目で見られた。



「あ…俺を置いて逃げた女の子がいる…」



冗談だと思ってたのに、その目の熱は冷めるどころか増すばかり…



「…ベッドで待ってるからな?」



さっきと同じ色気ある表情で言われて…今日は何が何でも逃れられないと悟った。



動揺しつつ、私もお風呂に入ってゆっくり温まりながら、パジャマをどうしようかと悩んだ。


吉良に選ばれたのは、白のスリップと、猫耳つきモコモコパーカーとショートパンツのセット。


今、このどちらかしか手元にない…。


となれば、モコモコを着る選択肢しかないよね…

白いスリップ姿なんか香里奈さんに見られたら…恥ずかしくて死んでしまう…!


ということで、モコモコ猫耳パーカーを着て脱衣室から出ると、なんと早速香里奈さんとばったり出くわした。



「…あ」



猫耳パーカーも結構恥ずかしいと思った私に、氷点下の声がかけられる。



「…なにそのカッコ…?」


「いや…あの…これは…その…」


「…吉良の趣味ってこと?」



ハイともイイエとも言えず、固まってしまう。


すると香里奈さんは、そんな私に気になるひとことを投げてきた。



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