「…吉良さん、少し話してもいいですか?」
2人きりになって、なんとなく落ち着かなくなってしまった私たち。
温かいコーヒーを用意して、思い切って1番聞きたいことを聞いてみようと声をかけた。
友達が来ている間、ずっと甘い雰囲気だった吉良さん。
聞きたいことを聞くタイミングは今しかない…!
「…私って、3年前からずっとその…恋人ってことで合ってますか?」
2番手でもセフレでもないって、吉良さんに言ってほしい。
…違ったとしても、吉良さんから離れられるかは別の話だけど。
「…なに、言ってんだ?」
「…はっ!ごめんなさい…」
「ちがうだろ…」
何を言われるか、つい身構えてしまう。
そっと吉良さんの顔を見上げてみれば…
「…恋人どころか、俺は3年前から、結婚も考えてる」
「…え?」
危うくコーヒーを落としそうになった。
なにこれ。聞きたいこと以上の本音が聞けるかも?
私からカップを受け取って、テーブルに置いてから、そっと手を握りしめてくれた。
「この3年、1ヶ月近く会えなかったことが多かったのは、モネの卒業と同時に結婚したかったから」
「…っ!」
声が出ない…
結婚?卒業したらすぐに?
そんなことまで思っててくれたの?
「そのために、仕事で結果を出そうと思ってた」
「し…資格試験を頑張ってたのもそのためですか?」
知ってたのか…と、吉良さんは小さく言った。
「…そう。その資格を取れば収入も上がるし、昇進する。でも落ちたらカッコ悪いから、言えなかった」
ごめんな…と言って、私の顔をしっかり見て言う。
「…モネを不安にしてた責任を感じる。なかなか会えなかったしな。…コトが終わってすぐ1人にしてしまったことも、悪かったと思ってる」
「それは、昨日理由を聞けたから…もう謝らないでください…」
吉良さんに握られた手を、思わず口元に持っていく…。
「…俺、口下手だし正直女の子の喜ばせ方とか、知らないんだよな」
それなのにやたら言い寄られてきたと、不思議そうに話す。
「…椎名たちに言わせれば、俺は完全に理系の男脳だから、その性格はモテないって言われる」
「…今も言い寄られてるんですか?会社の人とかに?」
「好きだとか…言われたな。3年の社会人生活で、5~6人か?」
なんとやたら飲みに誘う強気の後輩女子もいるみたいで…!
「…ダメですよ、行っちゃ」
たまらず吉良さんに近づき、首もとに抱きつく。
「…興味ないし行かないし。だいたい俺にはモネがいるだろ?」
ところでさ…と、吉良さんが続ける。
「…もうずっと前から結婚を考えてるって言ったんだけど、これ一応プロポーズ…」
「…結婚なんて…!」
「…なんて?」
「…するに決まってます!私がどれくらい吉良さんのこと好きか知らないでしょ?」
「…知ってるよ。俺がどんなに放置しても、一人ぼっちにしても、泣き顔見せないで文句も言わないで、会えた時は喜んでくれたから」
「…だって好きなんだもん…」
見つめる私の頬を両手で包んで、目を細めた吉良さん。
今までで一番優しい表情かも。
「…本当に、社会になんか出したくないんだよ。ずっと俺のことだけ考えて、俺の帰りを待っててほしい…」
誰にも見せたくない…と言って口づけられ、唇が離れたわずかな隙に、「吉良…」と呼び掛けてしまう。
「…ずっと吉良って呼んでほしいんだけど。さん…はなし!あと敬語もなし」
「…いいの?」
「敬語だと壁がある感じだろ?…だけど抱いてるときはそれがなくなるから嬉しかった。かなり、煽られたけど」
「…吉良…愛してる」
「俺の方が愛してる」
余裕の笑顔…
いつも寄り添いたかった胸が私を待ってるのを感じる…
私からキスをしたら、3倍激しいキスが返ってきた。