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第17話

「…吉良さん、少し話してもいいですか?」



2人きりになって、なんとなく落ち着かなくなってしまった私たち。

温かいコーヒーを用意して、思い切って1番聞きたいことを聞いてみようと声をかけた。


友達が来ている間、ずっと甘い雰囲気だった吉良さん。

聞きたいことを聞くタイミングは今しかない…!



「…私って、3年前からずっとその…恋人ってことで合ってますか?」



2番手でもセフレでもないって、吉良さんに言ってほしい。

…違ったとしても、吉良さんから離れられるかは別の話だけど。



「…なに、言ってんだ?」


「…はっ!ごめんなさい…」


「ちがうだろ…」



何を言われるか、つい身構えてしまう。

そっと吉良さんの顔を見上げてみれば…



「…恋人どころか、俺は3年前から、結婚も考えてる」




「…え?」



危うくコーヒーを落としそうになった。

なにこれ。聞きたいこと以上の本音が聞けるかも?


私からカップを受け取って、テーブルに置いてから、そっと手を握りしめてくれた。



「この3年、1ヶ月近く会えなかったことが多かったのは、モネの卒業と同時に結婚したかったから」



「…っ!」



声が出ない…

結婚?卒業したらすぐに?

そんなことまで思っててくれたの?




「そのために、仕事で結果を出そうと思ってた」


「し…資格試験を頑張ってたのもそのためですか?」



知ってたのか…と、吉良さんは小さく言った。



「…そう。その資格を取れば収入も上がるし、昇進する。でも落ちたらカッコ悪いから、言えなかった」



ごめんな…と言って、私の顔をしっかり見て言う。



「…モネを不安にしてた責任を感じる。なかなか会えなかったしな。…コトが終わってすぐ1人にしてしまったことも、悪かったと思ってる」


「それは、昨日理由を聞けたから…もう謝らないでください…」


吉良さんに握られた手を、思わず口元に持っていく…。



「…俺、口下手だし正直女の子の喜ばせ方とか、知らないんだよな」



それなのにやたら言い寄られてきたと、不思議そうに話す。



「…椎名たちに言わせれば、俺は完全に理系の男脳だから、その性格はモテないって言われる」


「…今も言い寄られてるんですか?会社の人とかに?」


「好きだとか…言われたな。3年の社会人生活で、5~6人か?」



なんとやたら飲みに誘う強気の後輩女子もいるみたいで…!



「…ダメですよ、行っちゃ」



たまらず吉良さんに近づき、首もとに抱きつく。



「…興味ないし行かないし。だいたい俺にはモネがいるだろ?」



ところでさ…と、吉良さんが続ける。



「…もうずっと前から結婚を考えてるって言ったんだけど、これ一応プロポーズ…」





「…結婚なんて…!」

「…なんて?」









「…するに決まってます!私がどれくらい吉良さんのこと好きか知らないでしょ?」



「…知ってるよ。俺がどんなに放置しても、一人ぼっちにしても、泣き顔見せないで文句も言わないで、会えた時は喜んでくれたから」



「…だって好きなんだもん…」



見つめる私の頬を両手で包んで、目を細めた吉良さん。

今までで一番優しい表情かも。



「…本当に、社会になんか出したくないんだよ。ずっと俺のことだけ考えて、俺の帰りを待っててほしい…」



誰にも見せたくない…と言って口づけられ、唇が離れたわずかな隙に、「吉良…」と呼び掛けてしまう。



「…ずっと吉良って呼んでほしいんだけど。さん…はなし!あと敬語もなし」


「…いいの?」


「敬語だと壁がある感じだろ?…だけど抱いてるときはそれがなくなるから嬉しかった。かなり、煽られたけど」



「…吉良…愛してる」



「俺の方が愛してる」



余裕の笑顔…

いつも寄り添いたかった胸が私を待ってるのを感じる…


私からキスをしたら、3倍激しいキスが返ってきた。


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