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第15話-1 Side 吉良

リビングであいつらを雑魚寝させて、俺はベッドでモネと眠ることにする。

シャワーを浴びたモネには、俺のトレーナーとハーフパンツをはかせた。



「…すごい、ブカブカ…」



笑うモネ…首もとから鎖骨が見えて、慌てて目をそらす。


奴らと一緒に結構酒を飲んだけど、これで寝ることはできるだろうか…



「…吉良」



仰向けになって寝ながら、繋いだ手をモゾモゾ動かす。

それすらも、今は俺の気持ちをかき乱すとは…まさか思っていないだろう。


本当にこの子は、こっちに余裕がない時ほど煽ってくる。



「…なに?」



モゾモゾ横向きになったモネ。

握った手を、胸元に抱きしめた。



「…大好きデス」



そぉっと上がってくる気配…頬に感じる柔らかい唇の感触…。


一瞬で、衝動に火がつく…。

必死に深呼吸をして、動き出してしまいそうな体を抑える。



「今日は、寝よう。酒飲んじゃったし、あいつらもいるし…」


「ハイ…」



大人しく返事をしたからホッとしたのに…モネのやつ…。

俺の腕を取って伸ばし、腕枕してもらえるようセットして、勝手に胸元に頬を寄せてきた。


可愛い…この可憐な小動物を愛でないでいられる男がいるのか…。


誘惑に負けて、横向きになったモネを胸の中に閉じ込める。

…こういう体勢は、背中に回した手がやんちゃするので気をつけなければならない…



今日の俺は、まず酒を飲んでる。


酒を飲むと自分がどうなるか、なんとなくわかっているので、そういうことは避けたい。


でも、酒を飲むと抑制も効かなくなって、いつもの数倍理性を取り戻しにくい…。


しかもここしばらく仲が拗れてたから、モネが不足している。

誤解も解けて、あいつらさえいなければ、今頃思い切りモネを抱けたのに…。



「吉良、チュウ…」



よりによってモネも酔ってる。

平常時の数百倍の甘さですり寄ってくる。



「…あ、コラ…」



近づく唇…これを避けるなんて…できるか。

優しいキスが俺を昂ぶらせる。


あっけなく降参だ…

もうこのまま抱いてしまおうか…


すでに吹けば飛ぶような理性。

体を反転させて、覆い被さろうとして…


モネの寝息が規則的に聞こえてきた…。



そうだった…この子は、そういう子だ。

決して煽ってるつもりも誘ってるつもりもない。


俺には抑えきれない衝動があって、それが全部自分に向いているとは、多分わかってない。




3年前、学祭で俺を見たモネの驚いた顔は忘れない。

あの出会いが、実はこの俺によって仕組まれたものだと知ったら、彼女はどう思うだろう。


モネを見つけたのは、実は俺のほうが先だ。


いつもなら行かない学食で、わしわしと食事をしている小柄な女の子を見つけた。

斜め後ろの席に座って何気なく見ていると、食べながら何度も小さくガッツポーズしているのが見えた。


その仕草が妙に可愛くて…目が離せなくなった。


食べ終わると手を合わせてごちそうさま、と言ってる姿も健気で…それからよく学食に行くようになったんだ。


昔から女の子に囲まれる事が多くて、あまり目立ちたくなかった俺は、1日のほとんどを研究室で過ごしていた。

そんな俺が学食に通いだしたのだから、周りも変だと思ったかもしれない。


でもなぜか、気になってしかたなかったんだ。

小さなガッツポーズをする、可愛い女の子のことが。


でも…だからといって、声をかけようとは思っていなかった。



そして、近づく卒業…。


学食に男と2人でやってきた彼女を見て、心臓がドクン…と跳ねたのを感じた。


…だよな。

あの可愛らしい見た目だ。

彼氏がいてもおかしくない…


するとあとからもう1人、女の子が遠慮なくそのテーブルに参加して…

聞こえてくる会話で、3人が仲良しの友達だとわかった。


意外なほど…ホッとした自分を感じて、

これは…いくしかないだろうと心に決める。


…人生初だ。

今まで頼まなくても女子が群がり、告白されてきた俺は…はじめて彼女たちの気持ちがわかった。


チャンスを伺っていたところに学祭が開催されるというニュース。


これまでの経験から、人混みに行けば女子に捕まって、やれ飲み会だのご飯だのお茶だの、行くと言ってない場所に連れ出されるのはわかっている。


だから警戒して学祭なんか行くものかと思っていたが、もしかしたらこれが最後のチャンス…



モネを見つけた時は、ドクン…っと、心臓が跳ねたのを感じた。…2回目だ。



ピョンピョン飛び跳ねて楽しそうなモネに、誘われるように近づいた。

ぶつかって来たときは、正直チャンスだと思った。


どうやら少しだけ女子ウケする顔面らしいと自覚があった俺は、これ見よがしに髪をかきあげて…アピール。

モネがじっと俺を見て動かなくなったから…内心ガッツポーズだった。


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