リビングであいつらを雑魚寝させて、俺はベッドでモネと眠ることにする。
シャワーを浴びたモネには、俺のトレーナーとハーフパンツをはかせた。
「…すごい、ブカブカ…」
笑うモネ…首もとから鎖骨が見えて、慌てて目をそらす。
奴らと一緒に結構酒を飲んだけど、これで寝ることはできるだろうか…
「…吉良」
仰向けになって寝ながら、繋いだ手をモゾモゾ動かす。
それすらも、今は俺の気持ちをかき乱すとは…まさか思っていないだろう。
本当にこの子は、こっちに余裕がない時ほど煽ってくる。
「…なに?」
モゾモゾ横向きになったモネ。
握った手を、胸元に抱きしめた。
「…大好きデス」
そぉっと上がってくる気配…頬に感じる柔らかい唇の感触…。
一瞬で、衝動に火がつく…。
必死に深呼吸をして、動き出してしまいそうな体を抑える。
「今日は、寝よう。酒飲んじゃったし、あいつらもいるし…」
「ハイ…」
大人しく返事をしたからホッとしたのに…モネのやつ…。
俺の腕を取って伸ばし、腕枕してもらえるようセットして、勝手に胸元に頬を寄せてきた。
可愛い…この可憐な小動物を愛でないでいられる男がいるのか…。
誘惑に負けて、横向きになったモネを胸の中に閉じ込める。
…こういう体勢は、背中に回した手がやんちゃするので気をつけなければならない…
今日の俺は、まず酒を飲んでる。
酒を飲むと自分がどうなるか、なんとなくわかっているので、そういうことは避けたい。
でも、酒を飲むと抑制も効かなくなって、いつもの数倍理性を取り戻しにくい…。
しかもここしばらく仲が拗れてたから、モネが不足している。
誤解も解けて、あいつらさえいなければ、今頃思い切りモネを抱けたのに…。
「吉良、チュウ…」
よりによってモネも酔ってる。
平常時の数百倍の甘さですり寄ってくる。
「…あ、コラ…」
近づく唇…これを避けるなんて…できるか。
優しいキスが俺を昂ぶらせる。
あっけなく降参だ…
もうこのまま抱いてしまおうか…
すでに吹けば飛ぶような理性。
体を反転させて、覆い被さろうとして…
モネの寝息が規則的に聞こえてきた…。
そうだった…この子は、そういう子だ。
決して煽ってるつもりも誘ってるつもりもない。
俺には抑えきれない衝動があって、それが全部自分に向いているとは、多分わかってない。
3年前、学祭で俺を見たモネの驚いた顔は忘れない。
あの出会いが、実はこの俺によって仕組まれたものだと知ったら、彼女はどう思うだろう。
モネを見つけたのは、実は俺のほうが先だ。
いつもなら行かない学食で、わしわしと食事をしている小柄な女の子を見つけた。
斜め後ろの席に座って何気なく見ていると、食べながら何度も小さくガッツポーズしているのが見えた。
その仕草が妙に可愛くて…目が離せなくなった。
食べ終わると手を合わせてごちそうさま、と言ってる姿も健気で…それからよく学食に行くようになったんだ。
昔から女の子に囲まれる事が多くて、あまり目立ちたくなかった俺は、1日のほとんどを研究室で過ごしていた。
そんな俺が学食に通いだしたのだから、周りも変だと思ったかもしれない。
でもなぜか、気になってしかたなかったんだ。
小さなガッツポーズをする、可愛い女の子のことが。
でも…だからといって、声をかけようとは思っていなかった。
そして、近づく卒業…。
学食に男と2人でやってきた彼女を見て、心臓がドクン…と跳ねたのを感じた。
…だよな。
あの可愛らしい見た目だ。
彼氏がいてもおかしくない…
するとあとからもう1人、女の子が遠慮なくそのテーブルに参加して…
聞こえてくる会話で、3人が仲良しの友達だとわかった。
意外なほど…ホッとした自分を感じて、
これは…いくしかないだろうと心に決める。
…人生初だ。
今まで頼まなくても女子が群がり、告白されてきた俺は…はじめて彼女たちの気持ちがわかった。
チャンスを伺っていたところに学祭が開催されるというニュース。
これまでの経験から、人混みに行けば女子に捕まって、やれ飲み会だのご飯だのお茶だの、行くと言ってない場所に連れ出されるのはわかっている。
だから警戒して学祭なんか行くものかと思っていたが、もしかしたらこれが最後のチャンス…
モネを見つけた時は、ドクン…っと、心臓が跳ねたのを感じた。…2回目だ。
ピョンピョン飛び跳ねて楽しそうなモネに、誘われるように近づいた。
ぶつかって来たときは、正直チャンスだと思った。
どうやら少しだけ女子ウケする顔面らしいと自覚があった俺は、これ見よがしに髪をかきあげて…アピール。
モネがじっと俺を見て動かなくなったから…内心ガッツポーズだった。