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第14話-2

「…ちょ、モネ?大丈夫か…」



心配そうに顔を覗き込む吉良さんの顔が歪む。



「…この部屋に、美麗ちゃんを連れ込んだとこ…」



自分の部屋のベランダから、吉良さんのマンションの玄関が見えること、そこで女の人を部屋に入れるところを見て、ここまで来たこと。



「…ベランダを見上げたら、それは美麗ちゃんで、吉良さんに上着干しておきますか?って聞いてて…慣れた感じで、吉良さんの上着を手にしてて…」



涙が目のフチにたまっていく…



「2人でお酒を飲みに行ったから、吉良さんが赤くなっちゃうことも知ってて…」



皆さんをぐるりと見渡してまばたきをしたら、ポロポロ涙がこぼれた。



「…うわ…。これ惚れちゃうやつだ…」



鬼龍さんが呆然として言う。



「あぁ、わかる…」



憂さんもうなずくのをみて、吉良さんが焦って私を胸の中に閉じ込め「俺のだから」と牽制した。



「…違うれすっ」



ぐぐっと胸の中から起き上がって、吉良さんの顔を真正面からとらえて言った。



「…車に乗せるとこも見たれす…。美麗ちゃんが本命れすか?私は…?私はセフレか2番手れすか?」



…そこにいた全員がコケた気がする。



「…もう白状するしかねーだろ。吉良!」



憂さんに言われ、椎名さんに肩を叩かれている。



「わかった!言うよ、ちゃんと…」



見上げる私と目を合わせ、吉良さんはテーブルに肘をつきながら、落ち着きなく口元をいじった。

その仕草は、吉良さんぽくて妙に色っぽい。…あぁ、見とれてしまう…



「夏頃、親しくしてた助手の先生に呼ばれて、大学に行ったんだよ。その時、モネを見かけて…」



私の視線を感じるからか、ちょっとそっぽを向いて、話を続ける。


「一緒にいた子たちと笑ってた。その笑顔がすごく可愛かったんだけど…俺といるときには、そんな笑顔になってくれたことはないって気づいた」



「…あ」



好きすぎて緊張しちゃうから、確かに素のままで接することは、いまだにあんまりできないかも…。



「それで、大学でのモネをもっと知りたくなった」



意外にも友人3人も茶化さずに聞いてる…。



「それで、まず錦之助を捕まえて、モネの仲良しの子はどの子か教えろって言った。そしたらあいつ、自分だとか言うから、絞め殺そうかと思った」



いや~殺しちゃダメよ…という、鬼龍さんの冷静な突っ込みが妙におかしい…!



「…そしたら何人か女の子が集まってきて、1人は見たことある子だったけど、ちょっと睨まれて怯んだんだよな」



それはたぶん、霧子だ。

私がいろいろと悩んでることを知ってる霧子だったから、とっさに睨んだんだろうな…。



「…そしたら錦之助が、そのうちの1人を指差して合図してくるから、その子に頼んだ」



何を…と言おうとして、吉良さんが赤面してることに気づく。



「…大学での、モネのことを教えてほしいって。同じ学部だから簡単だって言ってくれた子が、美麗ちゃんだった」



「私の大学での様子を、美麗ちゃんを通じて知ろうとしてたんですか?」


驚きすぎて、酔いも覚めちゃう…!



「モネに直接聞くのは照れ臭いし…嫉妬して、束縛したくなるかもしれないし…」



「…結局束縛してたじゃんっ!美麗ちゃんが報告に来て、モネちゃんがモテモテだって言ったら顔色変えたからね?」


憂さんが面白そうに言う。



「…モネがどんな様子なのかメッセージしてくれたらそれでよかったんだけど、彼女はやたらと会いたがって。こっちも頼んだ手前、断りづらいから、錦之助と3人で会おうとした。そしたらどうしても家に行きたいって言われて…」



錦之助が捕まらなかったから、急遽憂さんに来てもらったという。



「…ということはあの日、部屋に二人きりじゃなかったっことですか?」



そう言えば、ベランダから見たとき、すでに部屋に明かりが灯ってるのを見た気がする…。



「…もちろん。先に憂が部屋に来てた。実はついでに、美麗ちゃんの興味が、憂に移ってくれないかという魂胆もあった…」



美麗ちゃん、吉良さんのこと好きだったから。


2人で飲みに行ったというのは彼女の嘘で、連絡先を教えたのは、頼んだことをメッセージしてもらうのに必要だったからだと言う。



「…酒飲んで顔が赤くなるのは、メッセージのなかで聞かれて…答えたことだ」



それを聞いて、私はちょっとむくれる…。



「…私にはメッセージしてくるなって言ってたのに、美麗ちゃんとはそんなやり取りしてた…」



イジイジと、床に「の」の字を書いて膝を抱える…。



「…ごめん…。モネと日常的にやり取りしたら、気になるし会いたくなるし…会ったらもう…いろいろしたくなるし。だから…控えてもらってた」



前に『気が散って嫌だ』と言われたことを思い出す。

それって、そういう意味だったんだ…。



「でも、一緒にいるとき、美麗ちゃんにメッセージも送ってましたよね?」


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