「私だったら…全然オッケーです!」
吉良さんの地元は確か北関東。
遠くから訪ねてきたのに、無視するなんて気の毒すぎる…
でも…美鈴ちゃんのことが…後回しになってしまう…!
「…わーっっ!やっぱりいたっ!」
私を見るなり、金髪ピアスの男性に両手を取られ、ギュッと握られた。
「…ホントだぁ。めちゃくちゃ可愛い…。目がおっきい…唇赤い…わっ!ほっぺがピンクになった…」
緩くパーマがかかったおしゃれな髪型の人は、私の顔を覗き込んで後ずさる…。
「…ちょ待って。これは予想以上。吉良の気持ちすげぇわかるわ」
腕組みをする吉良さんの肩に手を掛けて、メガネをかけた男性が言う。
吉良さん含め、ぐるっと囲まれてる男性たち、どの人もびっくりするほどカッコいい…。
「…モネが怖がるから…あんま近寄んな」
そっと腕が伸ばされ、引き寄せられる。
ほうぅ…っと、なぜか上がるどよめき。
「お前が女の子をこんなに優しく扱うなんてな…」
「椎名っ!」
呼ばれたのは金髪ピアスの男性だ。
「…大丈夫だっ!聞かれなきゃ何も言わない」
そう言った緩めパーマの男性、私の頭に手を置いて「俺は憂。よろしくね」と言われる。
その手をパッと払いながら
「憂うつの憂な?」
吉良さんが面白くなさそうに付け加えた。
「…大丈夫だよ!モネちゃんはお前のってわかってるから!」
誰も取りゃしないよ…と言うメガネの人は鬼龍って呼ばれてた。
「…今年はお前が帰ってこないって言うからさ、俺たちの方から来てやったんだぜ?」
椎名さんが魔法みたいにどこからともなくお酒を出して、飲みながら言う。
年末は毎年実家に帰る私たち。
吉良さんは関東近郊の私を車で送ってくれてから、自分の地元に帰っていた。
吉良さんの仕事の関係で2日にはまた迎えに来てくれて、一緒に東京に戻るのがいつものパターン。
それが今年は、吉良さんも1人で過ごしてくれていた。
「…でもお前の愛しのハニーに会えてよかった!来たかいがあったわ!」
憂さんが言いながら、グラスをカチンを合わせてくれたので、私も皆さんに向かって言った。
「も、申し遅れました。桜木桃音と言います。
もうすぐ大学を卒業する、22歳です。よろしくお願いします」
ペコリ頭を下げると…ニヤァ…と笑う男たちの笑顔に囲まれる。
「…こんな可愛いのがそばにいたら、たまんないだろうな…」
鬼龍さんが目を細めて言う。
「心配で心配で、ぎゅうぎゅう束縛したいのをこらえてさ…」
椎名さんがいたずらっぽく吉良さんを見る。
「…おいっ!」
吉良さんに睨まれた椎名さんが憂さんに、気になることを言った。
「…心配でしょうがなくて、吉良が友達見つけてコンタクト取ったんだよな。何て言ったっけ?み…」
憂さん、意外な名前を出した。
「美麗ちゃん!」
意外なところから、今もっとも熱い人の名前が出た…!
「あの、美麗ちゃん…って」
私は横にいる吉良さんを見上げ、皆さんの顔をぐるりと見渡すと、憂さんが意外そうに言う。
「…あれ?吉良、言ってなかったの?」
「…あぁ、まだ。」
微妙な空気が流れる中、私はテーブルに置いたコップを手に取り、一気に飲み干した。
結構強いお酒だったのか、ぐわん…と目の前が揺れる。
そしてコップをテーブルに勢いよく置くと、しっかり目を見開いて言った。
「…私、見たれす」