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第7話

私の心配も知らずに苛立った声を上げ…吉良さんはきっかり3分後に玄関を開けて入ってきた。



「…モネの部屋に行くかどうかは俺が決める!」



お前の出番じゃねぇっ…っとデコピンされて痛い。



「…やぁ〜ん!吉良っち吉良っちィ〜!私の隣に座って〜」



温めておいてあげたから…っと、吉備須川さん。



素直に隣に座るなんて。

するとタケが急に機敏な動きで吉良さんのもう一方の隣を確保してしまった。


吉良さんはタケと吉備須川さんにはさまれ…私は仕方なくタケの隣に腰をおろした。



「それにしても…吉良っちって、本当に美しいイケメンだよねぇ…」


吉備須川さんがほぉ~っとため息をつきながら、吉良さんの麗しいお顔に触れてる…


私だって触ったことないのに…!




「ところでこれ、なんの飲み会なんっすか?」


頬をこねくり回す吉備須川さんから身をよじって離れながら聞いてる。



「私達の出会いを祝す飲み会よぅ〜」


言いながらまた一歩吉良さんに近寄って、無理やりお酒を飲ませた。



「あの…さすがにもう、それ以上は…!」


私の吉良さんに、近づかないでほしい…。


よよ…っと腕を伸ばして言ったものの、吉良さんはベタベタ触ってくる吉備須川さんから逃れるのに必死。


吉備須川さんは負けじと触るのに必死だった。


それはまるでじゃれあってるようにも見えて…

私はがっくり頭を下げた。


…だから来ないでって言ったのにぃ…!



「モネ…?泣いてるの?」


タケが急に下を向いた私の顔を覗き込んで言った。



「泣いてません!」



急いで顔を上げてタケを睨みつけたつもりだったのに…。



「…わゎ…っ!何して…」



突然肩を抱き寄せるから、タケの胸に頬を寄せてしまった。


ふと見ると、見たことないほど怒った顔の吉良さん…!



「…モネっち小さくて可愛い…!」



タケが私を腕の中にしまいそうになったところで…



「…言っておくがっ!」



吉備須川さんに絡め取られていた腕を乱暴に離し、その腕を私に伸ばしながら、吉良さんがきっぱり言った。



「桃音をモネって呼べるのは俺だけだ!」



腕を掴まれてそのまま引き寄せられた私は…吉良さんの目の前に移動していた。



広げた両足の間に私を座らせるから、必然的に胸の中…。



こんなに近くに座れるなんて…生きていればいいこともある…!

吉良さんの、いつものいい匂いがして、さらにスリっと近寄ってみる…。




うわぁ〜…怒られない…!




「…モネっちとか…あり得ねぇっ!」




近寄っても怒らないばかりか、嫉妬みたいなことまで言われて気が遠くなる…!




「…なによぅそれ…。ヤキモチ妬いてるみたいじゃない…!」



吉備須川さんに頬をちょんっとされながら言われた吉良さん…ムッとした様子で、いきなりテーブルの上のお酒を手に取ると…


グビグビっと一気飲みして…ぷはーっと息を吐き、みるみる顔を赤くした。


「…別に、ヤキモチじゃない」


そう言ったけど、目がトロンとしてる…

こんな顔、見たことないかも…?


心配になって吉良さんを見上げると、吉良さんも私をガン見して…見つめ合う私たち、という構図が出来上がった。


麗しいお顔がすぐそばにあって、さっき吉備須川さんに触られていた頬に、指先をあててみる。



うわ…!目をそらさないし怒らない…!


それどころか、私の手に、自分の手を重ねてきた…!



これ、もしかしたらこのままキスする展開なんじゃないか…という場面…。


それが面白くなかったのか…吉備須川さんがムードをぶち壊すように言った。



「…ふんっもういいわよっ!タケっ帰るわよ?」



と言って、出て行ってしまった。



何だったんだ?吉備須川姉弟…。


………


「…なんでこの部屋に男を入れるんだよ?」



まだ私は吉良さんの胸の中。


2人になったことだし、ちょっと離れて話そうとしたけど…阻止されてしまった…。



「…勝手に入って来ちゃって…」


「…そんなの許さねー」



見上げれば、トロン…とした瞳にぶつかる…。



「…す、すいません」



小さくなって謝る私の手をバシッと取って…吉良さんは悪そうな笑顔になる…。



嫌な予感…

いや、嫌なことなんてない。

愛してやまない吉良さんの、私は言いなりなんだから…。


でも…。





「…そんなに悪いと思うなら、俺を風呂に入れろ」




…え?



バスタブにお湯を張りましたが…。


バンザイ…と言われてトレーナーを脱がされ、吉良さんもパーカーを脱ぎ捨ててしまった。



「…早く、風呂に入れろよ」



一緒にお風呂に入るなんて、3年間のうちで初めて。

実は何度か吉良さんには誘われたんだけど、その度に恥ずかしくて逃げ回ってて…



早く風呂に入れろ…と、上半身裸の吉良さんに言われれば、次は下を脱がせろってことだと思う…。



「それ、じゃ…し、失礼します…」



吉良さんのスラックスのベルトに、震える手をかけて思う。


これ、スーツのスラックスだ。


じゃ…じゃあ皺にならないように…と気をそらそうとしても、あまりにも場所が近くて気になって仕方ありませんっ!


震える手でボタンを外し、チャックに手をかけたところで…



「…お前、自分の服脱いで」



吉良さんは急に脱衣所に消えてしまった…!




………………


「…失礼…します…」



考え抜いて、バスタオルを全身に巻いてお風呂に入った私を見て、吉良さんはイラついた声で言う。



「…なにそれ興ざめ」



あっという間にバスタオルを外された…!


わーっだのキャーッだの言う私に、吉良さんは一切視線を向けてこない。



「後ろに入って」


バスタブの中で少し前にずれてくれて、できた隙間に入り込む。


私が恥ずかしがるから、後ろなのかも…。

ちょっと感謝。


バスタブにはモクモク泡が立ってる。

この中で体をこすれば洗えるって入浴剤。


出る時にシャワーで泡を流して終了ってやつだ。


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