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「復讐の前哨」②

 カイラたちが現在使っている賃貸部屋に帰った後、カイラはそろそろ日本へ帰って復讐殺人がしたいとことを、彩菜に告げた。

 いくら好きな人でも、「殺人をしたいからそろそろ一緒に帰ろう」などと言われればドン引きするだろうし、そんな狂った計画を止めさせようと思うのが、普通の反応である。


 「そっか。私も腕の傷もうすっかり治ったから、遠方の移動も平気だと思う。うんいいよ。一緒に日本に帰ろっか!」


 しかしカイラの彼女はそんな物騒な提案に対して忌避するどころか、二つ返事でカイラの提案を受け入れた。彼が人を殺そうとしてることに対しても何も言うことなく、普通に接している。

 桐山カイラも大概壊れていて狂ってるが、この真部彩菜もまた、既に常人からかけ離れた存在になってしまっているのかもしれない。



 帰国を決意した日から一週間後、カイラと彩菜は今まで住んでいた賃貸部屋を退去すると、そのまま空港から飛行機で日本へ帰国していった。

 空港から出た後の彩菜は自分の家へ帰ることなく、カイラについて行き、そのまま彼が使っているアパート部屋に入ってきた。


 「うげっ、向こう(アメリカ)で一か月以上過ごしてたから、家賃とか光熱とかの請求はがきがきてる……」

 「あ、どれもまだ期限日過ぎてないみたいだから、コンビニ行って支払い済ませようよ。はい、これだけあれば全部足りるよね?」

 「え?ああ、これだけあれば十分だけど……。なんか、悪いな。お金に関しては完全におんぶにだっこというか、ヒモにというか……」

 「もう、そんなの今さらでしょ?私がしたいと思ってやってることなんだから。

 カイラはもう一生、お金の心配をしなくて大丈夫だからね。私がいるから、何も問題は無いからね」


 そう言いながら彩菜は優しい手つきでカイラの頭を撫でるのだった。


 「本当にありがとう。俺、彩菜と出会えて本当に良かったって思ってるよ」

 「嬉しい…!カイラに頼りにされて……カイラにそんなこと言ってもらえて、私凄く嬉しい!」


 お金の全面的な援助をしてくれる彩菜にカイラは深く感謝し、お金以外のことでも依存し始めていた。彼女無しにはこの先生きるのが困難だろうと思うようにもなっていた。

 一方の彩菜も、自分を頼って必要してくれることに深い快感を得ていた。

 二人ともそんな共依存関係を喜んで受け入れていて、その関係を心地よくも感じていた。



 コンビニで家賃等の請求はがきを彩菜のお金で全て精算した後、カイラは自分の部屋にてこれからの「復讐殺人」の計画を練ろうとしていた。部屋には彩菜を招き入れたままで、彼女にも計画の練り上げに加わってもらっていた。


 「それでカイラは、誰を殺そうと思ってるの?ここから近いところにいる人?」

 「………それが、分からないんだ。殺したい奴はいっぱいいるんだけど、肝心のそいつらの今の居場所が、ほとんど分からないんだ……」


 彩菜はまず誰を殺したいのかを聞いたのだが、カイラは殺害したいと思ってる人物たちの居場所が分からないと、困った表情になる。


 「一年前の働いてた先の奴らは大体特定出来そうなんだけど、大学とか高校、あと小・中学時代の奴らが今どこにいるかなんて、全く分からねーんだよなぁ」

 「そっか…そうだよね。嫌な人たちが今どうしてるかなんて、いちいち知ろうなんて思わないもんね。今みたいに殺しに行こうって考えてるなら別だけど」

 「まさか俺が人を殺しても罪にならない日がくるなんて、思ってもなかったからなー。殺したいとは思ってたけどそんな力無かったから、ただ“あいつら死ね”って呪うしかしてなかったし。

 だからまずは、俺がぶっ殺したい奴らの居場所の特定からだな」


 カイラはスマホを操作すると画面に何かSNSのページを映し出す。現在はやや廃れてる傾向にあるSNSアプリ「FACEMAP(フェイスマップ)」である。カイラはフェイスマップのとある人物のプロフィール画面を映し出していた。


 「その人は?」

 「俺が殺したいと思ってる奴だよ。年は俺と同じ……中学の時の同級生だ」


 カイラは忌々しいもの見る目で、スマホ画面に映ってる人物を睨みつけている。プロフィールに掲載されている画像の男は、二十歳を目前にした見た目で、どうみても今のカイラよりも若いが、それは単に今よりも昔の写真を載せたままプロフィール写真を更新していないだけである。

 プロフィール写真の男の名前は、「外崎洋太」と記されており、基本情報の欄には出身の学校が記されてもいる。


 「例えば、これは中学の同級生の奴なんだけど。見ての通り、数年前…俺がまだ大学生になったばかりの頃のプロフィールのままになってる。こいつはもうこのSNSを全く使ってないんだろうな、数年前からずっと…。

 だからこいつがこのプロフィールに記されてる地域に、今も住んでるかどうか分からない。別のどこかへ引っ越してる可能性は十分にある。これじゃあこういう奴らの居場所を特定するなんてことは………」


 カイラが困り果てた様子で喋っていると、彩菜がそこに待ったをかけた。


 「ううん、そんなことないと思うよ!こういう情報だけでも、居場所を特定することは出来るかもしれない!」

 「………え?」

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