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「復讐の前哨」①

 「殺人許可証」で警察を追い払った後、カイラは彩菜を連れて街中にある病院に行き、そこで彼女の傷を治してもらった。


 「くそ、しばらく包帯が取れないのか…。ごめんな、お前を危険な目に遭わせてしまって、怪我までさせてしまって」

 「ううん、気にしないで。カイラだって結構危ない目に遭ってたんだし。むしろ凄かったよ!あんな大人数が相手でも返り討ちしたんだから」

 「まあな。あんな多人数との相手は初めてだったから、色々ミスがあった。次はもっとサクッと皆殺ししてみせるぜ」


 さも当たり前のように人を殺すことを宣言するカイラ、そんな彼の言葉を聞いても微笑んでいられる彩菜。それは側から見れば異常なカップルであると思えることだろう。


 「……それとね。さっきのこと、私凄く嬉しかったの」

 「嬉しかった…?何が?」

 「私が刃物で傷つけられた時、カイラが凄く怒ってくれたこと。カイラが私を刺した男から引き剥がして、あの男を私の代わりに殺そうとした時、嬉しいこと言ってくれた」

 「んー?なんて言ってたっけ?」


 あの時無我夢中だったから本気で忘れてしまっているカイラに、彩菜は「もう」と照れ笑いしながら答える。


 「あの時カイラは、『俺の彼女によくも、傷をつけやがったな、血を流させたな』って怒鳴ってた!

 そう、俺の『彼女』って!言ってくれた!」

 「あ…あー。そういやそんなこと言ってたような…。夢中で刺してたから忘れてたわ」


 やや興奮した調子で話す彩菜に、カイラは少したじろぐ。続いてうっとりした様子で彩菜は続きを話す。


 「私が傷ついたことに凄く怒ってくれたカイラ……凄く嬉しかったし、カッコよかった!

 それにあんなに怒ったってことは、それだけ私のこと大切に想ってくれてたってことだよね!?」

 「あ、ああ。あの時マジギレしてたから、その通りなんだと思う……」

 「もう!そこは思うじゃなくて、そうだって断言するところだよぉ」


 彩菜を窘めつつ、カイラは先程やらかしてきた路地での喧嘩(殺人)のことを思い返す。中でも彩菜が指摘した通り、彼女が刃物で刺されたことに自分がひどく怒ったことは印象に残っていた。

 彩菜を傷つけた相手に抱いた猛烈な怒りと憎悪は、自分が過去に受けてきたどのムカつきや憎しみなどと同等あるいはそれら以上に強いものだった。

 カイラは今までずっと自分のことで怒り、誰かを憎んでばかりだった。ところが最近、彩菜と出会って一緒に過ごすようになってからは、怒りの動機に変化がおとずれていた。自分以外の誰かのことで怒り、相手を憎んだのは、カイラにとって初めてのことだったのだ。

 先の喧嘩でも、彩菜という「大切な人」を傷つけられたことにショックを受け、そしてそうさせた相手をひどく憎んだ。こんな経験は初めてで、カイラは少し戸惑ってもいた。


 「……やっぱり、俺は彩菜のこと、大切に想ってるんだ」

 「――え?」

 「彩菜を傷つける奴は誰だろうと死ぬまで殺し続けてやるって思えるくらいに、彩菜が大事だって思ってる。自分が傷つけられて嫌な気持ちにさせられたのと同じかそれ以上に、彩菜が害されることは凄くムカつくことになってる」

 「カイラ……!」


 彩菜は感激した表情で、カイラの胸に顔をうずめて抱きついてきた。病院内の待合室であるにも関わらず二人はイチャイチャして、そんな二人を他の男患者たちは鬱陶しそうに遠くから睨みつけるのだった。





 拳銃を購入してその後路地で人を三人殺した日から一か月が経った。

 以前の喧嘩で負傷した彩菜の腕の傷はほとんど回復していて、包帯も取って良い状態となっていた。

 この一か月間は彩菜の怪我の回復を優先すべく、彼女を安静にさせていた。カイラもなるべく彼女と一緒に過ごし、鍛錬もそこそこに行い、体力と筋力の向上に努めたりもしていた。

 その間カイラが喧嘩か何か騒動を起こさなかったというとそんなことはなく、カイラたちが今住んでる賃貸部屋から少し離れたところにある治安の悪い街路にて、悪漢たちと喧嘩を何度かやっていた。

 どれも多人数との喧嘩ばかりだったが、見事勝利を収めていた。しかし喧嘩の度にカイラも打撲や切り傷を負ったりなど、無傷では済まなかった。

 そして数ある喧嘩の中で一度だけ、カイラは拳銃で一人殺害していた。

 二度目となる喧嘩中の発砲とそれによる殺害だったが、カイラにとってはもはや慣れたことで、拳銃で人を殺すことにすっかり抵抗が無くなっていた。

 その後アメリカンポリスが駆けつけてきたが、「殺人許可証」を見せたことで例の如く殺人が許されたのだった。


 「街中での拳銃の扱いはもうほぼ完ぺきだな。素人相手ならこれくらいの腕だったら誰でも殺せるよな。素手の喧嘩も、プロの格闘家でもない限りは誰だろうと多人数だろうと問題無いレベルまで強くなれてる。

 ついにここまでこれた!目標にしてたレベルの喧嘩強い自分に、もうなれた!

 ふぅ……アメリカでの武者(?)修行は、これでもう終わりにしようか」


 カイラの鍛錬はこれにて終了を迎えた。後は彩菜が回復し次第、日本へ帰国するだけだと、カイラはいよいよ復讐…過去にカイラがムカつき、殺したいと思い続けている人物たちの殺害の本格的な準備へ移ろうと、決意するのだった。

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