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「凶器の調達」①

 桐山カイラと真部彩菜。夜の路地裏にて二人が初めて出会い、お互いに助けられて、話を重ねていくうちに意気投合して、ついには出会った初日から夜を一緒に過ごす仲にまで発展した。


 そんなことがあった、翌日の朝。

 カイラは目覚めて早々にびっくりしてしまう。自分がいつも寝ている布団にもう一人が…それもすごく可愛い女が傍で寝ているのだから当然の反応と言えよう。

 しかしカイラはすぐに昨晩のことを思い出して、ああそうだったと落ち着きを得る。

 カイラが起き上がった気配に反応したのか、彼と一緒の布団で寝ていた女性…彩菜も目が覚めて、カイラを認識すると照れたような笑みを見せた。


 「……もしかして、私の寝顔見てた?」

 「いや、俺もさっき目覚めたとこだったからちゃんとは見れてない……」

 「それならよかったー。寝顔見られるのは恥ずかしいから…。

 ところで、昨夜はその……お盛んでしたね」

 「それは…お互いさまだろ。後半は彩菜が何度もく…咥えてきたり、上に乗って自分で動かしまくったりしてたし……。

 彩菜って本当に初めてだったの…?」

 「もちろん、初めてだったよ?いちおう知識だけはそれなりにあっただけで……。あそうだ、おはようのキスとかする?」

 「や…さすがに寝起きのキスは止めとくわ。今口の中が菌だらけだから」

 「えーひどい。女の人に菌とか言っちゃダメ」

 「違う違う、俺の方に菌がいっぱいあるからって意味で。彩菜の口は汚くなんかねーよ」


 そう言い合ってから二人は笑い合って、唇に触れ合う程度の軽いキスを交わした。


 服を着替えて洗面も済ませると、二人は朝食にするべく外に出て、最寄りの喫茶店でモーニングセットを注文した。


 「朝飯を食うなんて、一週間以上ぶりだ……。彩菜には感謝しきれねーよ」

 「そんな食生活でよくボクシングジムに通ってたね?食事を疎かにしてでも、強くなりたかったの?」

 「そりゃあな。男が腕っぷしの強さに憧れるっていうのもあるけど、俺の場合はやっぱり、手取り早く殺す為ってことになる。喧嘩が強ければ殺すのにも有利になるだろ?」

 「確かに、腕っぷしだけで人を殺すなら、喧嘩が強い方が有利、かも」


 朝から物騒な話をする二人は、朝食を摂りつつ今日はどうするかを話し合う。


 「昨日は夜遅かったから泊めたけど、基本はそれぞれが住んでるところのままで生活する…ってことにしないか?」

 「別に構わないけど……私としてはいつか一緒に暮らせたらなぁって思う」

 「同棲か…。俺にその適応力やら順応性やらがあるかどうかなんだよなぁ。誰かと同じ家・部屋で暮らすのって、俺ダメみたいなんだよね。子どもの頃些細なことで家族とも何度も衝突したし。それが何度も繰り返されるってなると、誰かと同棲とか無理だわーって考えが完成しちまったんだ」

 「そうなんだ……。あ、だったら、これから時々私が昨夜みたいにお泊りしたり、カイラが私の家でお泊まりしたりして、同棲ごっこからやってみるってのは?」

 「うーん、まぁいいかもな。彩菜の家に興味あるし」

 「やった!じゃあ今夜早速、私の家に泊まってってよ」

 「また急だな!?まぁいいけど」

 「決まりね。じゃあ次は何話す?うへへ…」


 今度はカイラがお泊まりすることになったことで浮かれてしまっている彩菜をよそに、カイラは次に検討すべきことを探っていく。


 「………ざっくり挙げるなら、標的を殺すまでの過程と手段…かな。

 標的の住所と普段の活動場所の特定、標的の一日のおおよそのスケジュール…特に一人になる時間帯の把握。要はプライベートの把握だな。

 そして、殺しに便利な凶器がどれくらいあるのかを知って、調達すること。ナイフだけで殺し続けるのも限度あるだろうから」

 「……凶器調達に関してだと、ナイフよりも便利な凶器が欲しいってことでいいんだよね?

 だったらやっぱり、拳銃がおすすめだと思うよ」


 手を銃の形にして撃つフリもしながら提案する彩菜に、カイラは「一理あるけど…」とネガティブ要素を挙げ始める。


 「そりゃ銃が手に入れば便利だろうけど…本物の銃を購入・持つ資格なんて、日本だと警察官くらいにしか適応されないんじゃねーか?いくら金があっても、買うことすら難しいんじゃあ……」

 「日本じゃダメでも、海外でなら簡単に銃が手に入るよ。時間は少しかかっちゃうけど」


 海外という言葉にカイラは苦笑いを浮かべてしまう。


 「やっぱり海外でそういうライセンス取った後の方が簡単に買えそうだよなー。買うとこの国はどこがいいんだ?」

 「けっこう色々あるけど、一番はアメリカかなぁ。規制が世界一といっていいくらい緩いし」

 「なるほどなぁ。ただ時間がかかる…かぁ。まぁ急いでないし、時間かけさえすれば手に入るなら、いくらでもかけてやるか。

 よし、じゃあ彩菜。早速で悪いんだけど……」

 「うん。分かってる。一緒にアメリカへ行こう!そこで一緒に銃も手に入れよう!」


 最初から分かってたかのように、彩菜はアメリカへ移ることに賛成した。


 「彩菜も付いて来てくれるのか?銃が欲しいから?」

 「もう、そんなのカイラと一緒にいたいからに決まってるよぉ。もちろん銃も欲しいって気持ちもあるけど。

 じゃあ後で一緒にパスポートと、しばらく向こうで暮らす為の非移民ビザをつくりにいこうね♪」

 「うわぁ、色々知らない単語が出てきたなぁ……。海外移住とか全然分からないから、全部彩菜に任せるわ」


 まずはナイフ以上に殺傷範囲が広い凶器…拳銃を合法に手に入れるべく、数週間後二人はアメリカへ移住した。

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