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「共犯者を手に入れた」⑥

 「えーと……。俺を養いたいってことにも驚きだけど、何よりも気になってるのが、殺人を手伝うってことなんだよね。まさか、あんたも人殺しに加担するってこと?」

 「必要になれば、そうしても構わないと考えてます」

 「マジで……。とりあえず、少なくとも俺の殺人の片棒を担ぐ……ということか。

 え、マジで??」

 「はい」


 カイラは腕を組んでうーんといった感じで頭をひねる。カイラは分からなかった。今日初めて会った男を養いたい、ましてや殺人の片棒まで担ぐと言ってきたのだ。いくら普通の思考をしていないカイラでも、不審に思わずにはいられなかった。


 「どうしてだ……?どうしてそこまで俺に関わろうとするんだ?俺を養いたいなんて言えるんだ?人殺ししようとしてる俺の援助を、買って出ようとしてくるんだ?」


 カイラは彩菜が分からなかった。分からないというのは疑わしいものであり、気になるものであり、怖いことでもある。桐山カイラにとって真部彩菜はムカつく人間ではないが、得体の知れなさもあると判断していた。

 カイラの質問を受けた彩菜は少しきょとんとした表情から、照れ笑いを浮かべてこう答えた。


 「――好きになった人の支えになってあげたい。それ以上の理由なんて無いと思います」


 もじもじしながらそう答えた彩菜に、カイラは呆気にとられてしまう。自分が好きなどと言う同年代の異性など、人生で一度も無かったな……と咄嗟に脳裏によぎりながら、言葉をどうにか出す。


 「その好きって……ライクの方?ラブの方?」

 「ら、ラブの方です……!」

 「ど、どうして俺を好きになんか……」

 「それこそ、理由なんて要りますか?気が付いたらそうなってたんです」


 もじもじしたままそう答える彩菜が可愛らしく見えて、カイラも照れて目を逸らしてしまう。


 「な、何だよそれ……。俺とあんたは今日初めて会ったんだぞ。それに目の前で人を殺したし、治療費と食事代を全部払わせてしまったし……。それなのに好きになるとか、何だそりゃ……」

 「い、いいじゃないですか…!桐山は私のこと助けてくれたし、いっぱいお話に付き合ってくれましたし…。あと、何か成し遂げようとしてるその姿勢にもドキドキさせられますし……」

 「その何かは、人を殺すってことなんだけど……」

 「目的は何だって良いです。とにかく…私、桐山さんのこと好きになったんです」


 それから何度も問答を交わしていくうちに、カイラは彩菜が自分を本気で好いてくれていることを理解し、認めるのだった。


 「えーとまずは……俺のことを好きになってくれてありがとう。俺もあんたが好き……ってのは、ここではまだ言えない。今日知り合ったばかりだからな。そこは分かってほしい」

 「全然問題ないですよ」

 「次……俺を養ってくれる件だけど。それは俺にとって願ってないことだし、めちゃくちゃありがたいし助かるし、神だと思ってる。お、俺を養ってくれますか?」

 「はい、養わせてください!」


 その答えにカイラは人生の勝ち組を確信したが、まだ肝心なことへの確認が残ってることを思い出して、真剣な顔を向ける。


 「最後に……俺の殺人を手伝うってことだけど…。本当に、いいのか?一回でも殺人に加担しちまったら、もう抜け出せなくなると思う。あんたは殺人の片棒を担いだとして、俺と同列の人間になってしまうけど……。

 それでも、俺に関わってくるか?共犯になってくれるのか?」

 「――なります。桐山さん……カイラさんの女としてだけでなく、カイラさんの共犯者としても一緒にいさせてください…!」


 彩菜のはっきりした口調と曇りの無い目を受けて、カイラは「まさかこんな拾いものをするなんてな……」と心の中で呟いた。そして、彩菜の好意を全て受け入れることを決めた。


 「じゃあ、これからは俺の生活も殺人も援助してほしい。俺の女に、共犯者にもなってほしい。真部彩菜、よろしく頼むよ」

 「よろしく頼まれました。あなたの女になります。あなたの殺人を手伝わせてもらいます」


 こうして、二人は交際を始めたと同時に共犯も結託するという、類を見ない関係を築いたのだった。


 「これで……俺の問題が一気に解消されたな。真部さんのお陰でヒモ生活が確定したから。ははは、こんなにあっさりお金に困らない生活が手に入るなんて……」

 「あ、あの…カイラさん。私のことは、名前で呼んでほしいです。交際するならお互い名前で呼び合ってみたいなって…」

 「分かったよ、彩菜。それと、これからは彩菜もタメ口とか慣れた話し方で俺と喋ってよ。つ、付き合うってそういうことじゃないかって思うし」

 「分かった。じゃあ……カイラって呼ぶね!」 

 「おう……(うおお、すげぇ!名前呼び捨てだけでで、距離が一気に縮まったような気がする…!)」


 彩菜の順応の早さに驚きつつも、同年代の異性から親しげに呼ばれることに嬉しさがこみ上げてきたのだった。



 夜も遅いとのことで、彩菜はカイラの部屋に泊まることとなった。泊まることを提案したのは彩菜の方で、同年代の異性を泊める事態にカイラは動揺せずにはいられなかった。


 (彩菜は……美人だ。それもあどけない可愛らしさに加えてのスタイルの良さ……うわやべぇ、ムラムラしてきたな)


 彩菜がシャワーを浴びている間、カイラは性的な悶々に苛まれ続けていた。


 (ただでさえ殺人を犯した後ってことで興奮してるのに、あんな可愛くて美人な子が部屋にいて…シャワーを浴びてて、しかも泊まるとかまで言うもんだから……ムラムラが、やべぇ……!)


 カイラは彩菜を部屋に上げたときからずっと、性的興奮に陥っていた。もっと言えば、今日路地裏で人を二人殺した後から、カイラは昂っていたのだ。


 (今日は特にヤバい……。先月も人を殺してからしばらくした後はムラムラしたけど、今日は彩菜が傍にいたからずっとヤバい状態だ……)


 初めて殺人を犯した時も、その翌日二度目の殺人を犯した時も、それぞれの日の夜はカイラは普段の倍以上に自分を慰める行為にいそしんでいた。今回も例に漏れず、いや前回以上に盛っていた。


 (人間にしろ生物にしろ、何かを殺した後は性欲が高まるって、漫画やラノベで何度か読んだけど……あながち間違じゃなかったんだな。

 ましてや可愛い女が同室してるとなると、もうヤバい……)


 頭の中で何度もヤバいヤバいと反響させ続けていると、シャワーを終えた彩菜が戻ってくる。服はカイラのシャツを借りており、着ているのはそれ一枚という状態となっていた。


 「~~~っつ(ムラムラムラ……ァ)」


 彩菜の煽情的な姿を見てしまったことで、シュートは男の生理現象を発生させてしまう。薄着であることでズボンの膨らみを隠すことは出来ず、程なくして彩菜に気付かれてしまう。


 「あ……それってもしかして……………」

 「~~~~~っ!わ、悪い……。今日酷い目に遭ったってのに……。嫌だよな、ごめん……。俺、今日はどこかネカフェにでも―――」

 「あ、その……大丈夫!カイラは今日殺したあいつらとは違うって分かってるから。今だって私のこと大事にしようとしてくれたし……。

 それに私……今日はカイラと、そ、そういうことをしていいって思ってるから」

 「……え?」


 またも呆気にとられるカイラに微笑むと、彩菜は部屋の隅にあった布団を広げて、男を誘うような姿勢で布団に寝そべると、彼女も欲情した表情を見せた。


 「カイラとなら良いよ…。助けてくれたお礼、これで全部ってことで」

 「―――――」


 そこからカイラは、性衝動に駆られるままに、彩菜がいる布団へいき、彼女の身体に触れていった。


 この日カイラは27才にして、童貞を卒業した。

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