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第36話 戦前戦後の文章書き換え比較③「鳩笛を吹く女」戦後すぐは存在を抹消された拓殖大学(まあ当時は名前が変わってたんだ

 消された中には「存在」もありましたな。

 ここでは「拓殖大学」が昭和22年には存在を消されていた、ということを。

 昭和6年にどっかに連載され、昭和7年に文庫化した「鳩笛を吹く女」です。


 あらすじ…… と思ったとこで。ブログに色々画像として載せてるんで参照すると楽です。人物相関図と変更箇所対比。

https://plaza.rakuten.co.jp/edogawab/diary/201805250008/


 この島さんというのが「拓殖大学」生なんですね。

 で、あらすじは、行動と出来事をまとめてました。

 まあその最後のとこで、「鳩笛を吹く女」となるわけです。

 この話は入手できたのが戦前の文庫と戦後の版。……初出不明のままです。

 で、比較。


 ①で、さっそく「拓殖大学」が「外国語学校」になってます。

 で、その学校の目的も変わってますな。

 拓殖大学の公式ホムペによると、創立30周年が昭和5年。ちょうど話題性あった頃に小説が書かれたという感じですが。

 http://www.takushoku-u.ac.jp/summary/history.html

 だけど戦後は21年、「紅陵大学」と改名。さすがにこの時期、「未開の地を開拓し、そこへ移り住むこと」という意味の「拓殖」という名はまずかった模様。全体的規模の縮小、改名で何とか残ったという。

 もっとも、小説の中では必ずしもそこでなくていい訳ですな。「中国語を学んでいるキャラ」であればいいので、あいまいな「外国語学校」に変えたと思われます。


 ②は満州→大連。

 場所のイメージは一緒だとしても地名でフォロー、という感じですな。


 ③は昨日も出したように「主義」イコールろくなもんじゃない、というのが共産主義~のアレと通じるかな、と。


 ④は単に価格が異常に変化したことから書き換えたと思われます。

 ⑤⑥は不明。

 ⑦⑧はやはり「学校名」と「目的」。

 ⑨⑩は法律とかの変化による書き換え。

 ⑪は戦前と戦後の大陸に対する「作者の考える好ましい考え方」を変更させたと思われます。


 吉屋信子というひとは、「戦争は悲惨・よくない」を若い頃から言っていた半面、慰問先でも何かしらの美しさを見つけようとしていたふしがありましてな。

 当時の花形ジャーナリスト(でも現在生きてたら虎ノ門ニュースに出てほしい)杉山平助からはけちょんけちょんにいなされてましたわ。

 はっきり言ってしまえば、吉屋信子というひとはお花畑で、杉山平助はリアリストだったわけです。

 だがまあ、杉山は戦後わりと直ぐに亡くなってしまい、今では殆ど知られてない。 一方吉屋は昭和40年代まで生き残って「大奥ブーム」も作ったりしましたな。この場合、生き残ったほうが勝ちなんですね。


 で、小説の中で戦争をどう言うか、と言えば。

 基本「うけるように」だと思います。昭和6年だったら6年なりの。22年なら22年なりの、一番受け入れられ易い意見を入れてみた、という。

 だから⑪なんかはまるで違う台詞になってしまってるんですわ。


 この話のラストのほうだからいいんだけど、ど真ん中とかだとキャラに矛盾が生じないかと思うくらいなんですがね。


 ちなみに、最初にこの比較やった時にはこの作品気付かなくてですね。

 「20世紀メディア」の研究会の発表時に拓殖の関係者さま(……名刺貰ってあわわわわわわ、な人だった)に質問されまして、ひらあやまり。東京から帰って慌ててテキスト参照した記憶がありますわ。ぎゃー。

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