こうして、髪を靡かせ移動すること数十分。目の前に見えてきたのは、球体状の避難艇。そこには、瞳を潤ませながら佇む
「
愛する人を失った哀しみからか、
「ごめんね、待たせちゃって」
「いえ、それよりも
「どう? 似合うでしょ」
「……というよりも、それは救命胴衣ですか?」
「ふふっ。これはね、救命胴衣じゃなくて、ハンティングベスト」
「ハンティングベスト?」
「そう。収納が沢山あってね、とても便利なのよ。それに、すごく暖かいの」
「なるほど……今の世界は、こういったものが流行っているのですね」
「多分、サイズは大丈夫と思うから、着てみてくれる」
「はい、分かりました」
「どう……ですか?」
「うん、とってもイイ感じ。よく似合ってるよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。
「ふふっ、大げさね。でも良かった。そんなにも喜んでくれるなら、危険を冒してまで取りに行った甲斐があるってものよ」
「危険?」
「ええ、この場所には特殊な生物がいてね、早く逃げないと危ないの」
「逃げるって、どこに?」
「決まってるじゃない! 街へ行くのよ、街へ!」
「えっ⁉ こんな荒れ果てた場所に、街なんてあるんですか?」
「あるにはあるけど、今日中には無理そうね。だからいい場所を見つけて、隠れないといけないのよ」
「別に隠れなくても、討伐すればいいじゃないですか」
「討伐なんて出来る訳ないじゃない。相手はパラサイト・オーガよ。見つかってしまったら、食べられて一巻の終わり」
「――ちょっ、ちょっと待って下さい! それって、寄生生物のことですか?」
「寄生生物?」
「はい。憑依されると角が生え、鬼のような風貌になってしまうという」
「まあ、そんな感じかな? ていうか、眠っていた割には、よく知っているのね」
パラサイト・オーガの生態について、
「知っているもなにも、ずっと追いかけてきた存在です」
「追いかけてきた?」
「そうです。私たちは鬼生体といい、諸悪の根源だった種を支配者。つまり、ロードと呼んでいました」
「それが、パラサイト・オーガと関係していると?」
確かな証拠はないが、パラサイト・オーガとロードは同じ存在に違いない。というのも、この生物の特徴は夜行性であり、人肉を好む習性がある。これは動物の捕食では存続できず、人を喰らうことで生き延びることが出来るらしい。
そのためか、一度取り憑かれてしまうと元の姿には戻れず、亡者のように彷徨い歩く。それだけ危険な種族であり、元凶を断つために追いかけていたという。
「はい。ロードというのは、一度に沢山の卵を産み落とします。ですから、その存在は厄介であるため、本体を打ち砕かなくてはならなかった。といっても、本来ならこの惑星にいるはずのない存在。それが何故、ペンタスに生息しているのかが不思議なんです」
「いるはずのない…………存在?」