球体の中から聞こえてきた機械音声により状況を把握する
「ですが、
「あのね、何度もいうようだけど、僕は君の知ってる
必死になって想いを伝えようと、食い下がるように手を握る
「分かりました。そこまで仰るなら、もう何も言いません。ですが、認証を解除したことについては、どう説明なさるおつもりですか?」
「説明って……手を当てたら開いたんだよ。だから偶然じゃないの?」
「あのシステムは個体認証。偶然なんかで開くことはありません」
「そうは言うけどね、相手は機械。いくらDNA認証でも、間違うことだってあるんじゃないの?」
「確かに、
「機械じゃない? だったら、一体なんなのさ!」
この球体は、空間の領域を停滞させて延命させるための避難艇。その目的からして、容易く操縦者を危険にさらすなど無きに等しい。従って、生体認証以外に何か別の仕掛けが施してあるとみて間違いないだろう。
「それは、氣の流れを読み込む特別なシステム。それぞれが持つ念の力によって、個体を特定し解除を行うというものです」
「念の力?」
どうやら
「はい。念とは、人が誰しも潜在的に持つ秘められたもの。一つの魂に、一つの能力しか持ち得ていません。ですが、何故か
「二つの念? あのさあー、さっきから言ってる意味がよく分からないんだけど?」
「では、分かり易く説明するとですね、何度生まれ変わろうが念の能力は変化しません」
「変化しない?」
「ええ。先ほどからのやり取りからして、私の知っている
「けど、それって君が勝手に言ってることでしょ」
「ここまでお話ししても、まだ理解してもらえないようですね。では、分かりました。――
《了解しました。|白詰 凛《シロツメ リン》、映像を映しだします》
その瞬間、球体から機械音声が響き渡り、上空に映像がぼんやりと流れ始めた。なんと、そこに映し出された人物は、
これを見た当の本人は、まるで幽霊でも見たかのように青ざめた表情を浮かべていた…………。