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第13話 運命の出会い

 りんと女性の出会いから数分後。脱出ポッドの扉が開かれたことで、白かった靄は完全に取り払われていた。こうした静寂に包まれた空間では、二人の微かな息遣いだけが聞こえてくる。そんな中、先に口を開いたのは相手の方からであった……。


「あの……りんさま、ここはどこですか?」

りん? って、もしかして僕のこと?」


「はい、そうですが」

「確かに名前はりんだけど、なんで君が僕のことを知っているの?」


 会ったばかりの人物だというのに、どうして自分の名前を知っているのだろう。こう感じたりんは、驚いた表情で女性の一言に困惑する。


「知ってるも何も、ずっと一緒に旅をしてきた間柄ではありませんか」

「旅? 僕と君が?」


 女性は、こちらの事情をよく知っている風な口ぶり。しかしながら、りんにはそのような記憶が微塵もない。


「はい。記憶を無くしていた私に、手を差し伸べてくれたのがりんさま。その時に、こう言ってくれたではありませんか。『旅の中で思い出の欠片を、一緒に見つけていきましょう』って。そして名前を与えてくれて、妹のように可愛がってくれました」

「ぼっ、僕がですか?」


 りんの瞳を真っ直ぐに見つめ、思い返しながら語る女性。停滞フィールドによって、数百年もの間、時間遅延されていたのを知らない様子。そんな状態にもかかわらず、懐かしむような表情で話を続ける彼女。


「ええ、そうですよ。それにしても、いつから僕なんて言うようになったのですか? 以前は私と仰っていましたが」

「そっ、そんな事、どうだっていいでしょ。僕は君が何者なのか聞いているの!」


「私の名前は、白詰 藍しろつめ あい。先ほども言ったように、りんさまと一緒に旅をしていた者です」


 あいの言葉に益々混乱するりん。状況が理解できずに佇んでいると、球体が振動を響かせ徐々に動き始める。そして次の瞬間――。中から発せられた機械の音声により、静寂な空間が切り裂かれた。


《生体認証完了。個体名:リン・クロバ、個体名:アイ・シロツメ。登録者二名、情報の照合を完了いたしました》


 突如として機械から発せられた音声、まるで二人を紹介しているかのように聞こえてくる。この予期せぬ出来事に、りんあいは呆然と立ち尽くす……。


「クロバ……リン? シロツメ リンではなくてですか?」

「そう、僕の名前は黒葉 凛くろば りん。誰かと勘違いしてるんじゃないの?」


 納得がいかない様子のあいに対して、りんは首を傾げながら相手の発言を否定する。


「そんなはずはありません。その顔、その声……溢れ出る懐かしい気の流れは、りんさま以外に考えられません。あえて違いを言うならば……少し足が短くなったような気がします」

「はあー、何言ってんの? 足が短いのは元々! 初対面なのに失礼な人だよね。とにかく、僕は君のことなんて知らないし、会ったこともないからね」


 あいは、かねてからりんのことを昔から知っているよう。しかし、いくら考えても思い当たる節が見当たらない。


「しかし、この気の感じは、凛さまそのもの」

「だからね、知らないって言ってるでしょ!」


 あいは大気や自然の流動以外にも、人が持つ個体特有の気も感じることが出来ると伝える。といっても、りんにはよく分からず、否定を繰り返すも一向に折れる気配がない。


 それどころか、彼女は一歩ずつ近づきながら話を続けた…………。


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