ペンタスを最高位の文明まで押し上げた原因。それは他でもない、地殻から採掘された鉱物に秘密がある。といっても、このように自然に生成された物質は、どの惑星にも存在した鉱石と思われるかも知れない。

　ところが、この惑星にしか存在することがない固体。それが、クリスタルストーンと呼ばれた鉱石。別名を浮遊石といい、プロペラのような動力がなくとも推進させることが可能。また見た目は透明度が高く、どちらかといえば石英水晶によく似た物質である。

　ではなぜ、この場所でしか採掘されないかが疑問であろう。それは大気に含まれる微量な粒子が関係していた。従って、こうした鉱石をつくるには澄み渡る気体と長い年月が必要である。要は、これらの蓄積されたものが、やがて浮遊石として変貌を遂げるということだ。

　つまりは、ペンタスのような高純度の澄んだ大気でなければ、このような物質が出来ることはない。ゆえに、大変貴重な鉱石として取引されると共に、惑星の発展にと一翼を担う。しかし、大衝突の影響により、いまでは過去の遺物として忘れ去られようとしていた。

　こうした経緯から、いまでは数少ない高価な鉱石の一つ。街に持ち寄り取引すれば、それなりの報酬が貰えるだろう。そんな事情もあってか、凛りんは固唾を呑みながらゆっくりと近づいて行く……。

「話でしか聞いたことがないけど、これが過去の遺物？　もしそうなら、紅蓮ぐれんにお腹一杯食べさせてあげられるかもしれない。だったら、少し危険かもだけど、調べて見る価値はありそうだね」

　残骸は屑であって利用価値のないもの。とはいえ、浮遊石で創られた機械ならば話は別。一度は諦めかけていた凛りんではあるも、僅かな希望を抱きながら脱出ポッドに掌を当てた。

「まさか、人が乗ってるってことはないでしょ？」

　球体の機械であるまえに、本質は避難用に創られた脱出ポッド。もしものことを考えて、恐る恐る物体の外部に触れて確認してみる。

「どこにも搭乗口がないから、もしかしたらこれが起動させる装置なのかなぁー？」

　繋ぎ目といったものは何処にもなく、あるのは黒く光り輝く識別装置。やはり扉の開口をするための鍵は、この認証システムを使って解除するしかない。といっても、パスワードを打ち込む暗証方式ではなく、どちらかといえば掌紋方式の生体認証に近いかも知れない。

　偶然にも、大きさはちょうど凛りんの掌サイズ。まるで似せて作られたかのような形状。この不可解な光景ではあるも、何故か懐かしい想いが感じられた。しかし、ここで一つの問題が発生する。

「困ったなぁ……暗証方式なら、時間さえかければ解除はできるけど。これだけ精巧に創られたものだと、僕でもちょっと難しいかも」

　機械のことならお任せな凛りんではあるが、今日は珍しく弱気な発言を口にする。というのも、生体認証には種類があり、どれも本人でなければ解除は難しい。だからといって、せっかくのチャンスを失う訳にはいかず、どうやって無効化するべきか顔を顰めた様子で思い悩んでいた…………。