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第9話 文明レベル

 残骸ざんがいの山から崩れ落ちる間、必死に瓦礫がれきを掴もうとするりん。偶然にも杖のようなものに触れるも、大して意味はなく転げ落ちてしまう。とはいえ、棒切れでも体勢を立て直すには必要である。ゆえに、握りしめたものを確認するため、顔を対象物に向けようとした。


 その瞬間――、次第に青ざめる表情と、血の気が引いた青白い顔。


「――ほっ、骨⁉ これって、どう見ても人間の骨だよね。何でこんな残骸の中にあるの?」


 りんは慌てた様子で喉を震わせながら大きな声を放つ。それは橈骨とうこつ指骨しこつを合わせた左腕の骨。どれほどの年月を経過したものなのか、詳細は分からず定かではない。とはいうものの、本来ならば経年劣化によって、粉砕された状態になっているはず。


 ところが、握りしめた骨の状態はよく、朽ち果てた様子も窺えなかった。そんな何とも奇妙な光景に、りんは固唾を呑みながら震える指をゆっくりと外していく。


「さっきは突然だったから驚いたけど、こんな世の中だから不思議なことじゃないよね」


 高鳴る胸に手を当て、落ち着きを取り戻していくりん。倒れかけた体を起こし、地面を踏みしめながらその場に立つ。すると――、先ほど転げ落ちた衝撃の影響により、高く積み上げられた残骸が音を立てて崩れ落ちていく。こうして砂のように流れゆく瓦礫。この光景を暫く眺めていると、目の前に何やら小さな鉄の塊が姿を現す。


「えっ⁉ これって、なに?」


 啞然と佇むりんの前に現れたものは、繋ぎ目のない球の形をした物体。とはいいながらも、球体の中心には小さな識別装置が取り付けられていた。つまりそれは、特定の人物を選別する生体認証に違いない。


 となれば、形状から察するに、物体は宇宙船に配備された避難用の脱出ポッド。範囲の程度から窺えたのは、小柄な人間がかろうじて入れる小型なもの。本来であるならば、脱出艇は誰もが搭乗出来なければ意味がない。ところが、りんが目にしたものは、明らかに女性専用に造られた特別艇。


 ということは、権威ある人物の所有物か、テロメアから輸送された新型の浮遊艇なのかもしれない。しかし、残骸に埋まっていたということは、後者の考えはないに等しいだろう。


 であるならば、かつて栄えていた惑星ペンタスの遺物。謎は深まるも、未知の産物には変わりない。こうした突然の光景に驚きながらも、りんは球体の形をしたポッドに近づいていく……。


「これって……脱出ポッド? っていっても、見たことがない形状の機械だけど。ということは、ペンタスの遺物かな?」


 遥か昔の時代、最も文明の頂点に位置していたのが二つの惑星。一つが機械都市ペンタス。長きにわたり高度な文明を誇るも、突然の大衝突によって壊滅してしまう。そして同じく、進化し続ける医術に特化した延命都市テロメア。


 そんな二つの惑星は、宇宙文明におけるなかで最高位に属する銀河文明。


 このようなペンタスも、以前までのレベルにおいては、二段階に位置した恒星文明。つまりは、テロメアよりも下位に位置づけされた文明であるということ。


 ところが、ある日を境に急成長を遂げ、テロメア同等の文明にまで上り詰めてしまう。その理由は、採掘された鉱物に秘密があったという…………。

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