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第2話 旅立ち

 銀河団の中には数多の惑星が存在するとされる。その中には、高度な文明も少なからずあったことだろう。しかしながら、どれだけ発展していようとも恒星レベルまでが限界であるといえる。


 もしそれ以上の発展した技術があるならば、この果てしなき宇宙を支配していたに違いない。ところが、唯一存在した惑星があった。それが銀河文明にまで進化したペンタス。人々から愛された希望の星。


 けれども、それも数百年ほど前の話。いまでは荒野と化し、希望ではなく死の惑星として誰も近寄ろうとはしなかった……。


 この荒れ果てた砂漠のような大地。天体衝突の痕跡だろうか、所々には山積みにされた機械の残骸ざんがい。その点在した様子から窺えたのは、荒野に広がるオブジェ。それは風景の一部として、違和感のない雰囲気を醸し出す。



 ――そんな雑草すら生えない場所を、颯爽と走る二輪のバイクがいた。


 なにかを探し求めているのか、もしくは何者かに追われているのか、後部座席に腰を掛ける青年は、辺りを見回しながら様子を窺う。こうした状況を心配そうにしていた運転手。少し後方へ身を逸らし、今後の予定を相談する。


「――りん、これからどうすんだよ!」


 運転手は大きな声で呼びかけるも、荒野を爆走していたためだろう、言葉は風に流されかき消されてしまう。


「えっ、いま何て言ったの? 紅蓮ぐれんの声、よく聞こえなかったんだけど」

「だからよぉー、あてもなく走っても意味ないんじゃないのか。燃料も残りあと僅かだぜ」


 これによりりんは再び問いかけ、紅蓮ぐれんに向けて言葉の内容を確認する。


「うーん……だったら、どうしよっか? 燃料もだけど、食料もなんだよね」

「おいおい、それってマジかよ! どっちかでも無くなっちまったら、餌食えじきだぜ」


「そうなんだよね……。――んっ? あれって、なんだろー?」


 紅蓮ぐれんの言葉に、困った表情を浮かべていたりん。すると――、何かを発見したのであろう。突如として運転手の腰を強く掴み、前方の光景を食い入るように見つめる。


紅蓮ぐれん、ちょっと待ってくれない。いまね、少し先の残骸で何かが光ったような気がするんだ。もしかして、お宝かもしれないよ」

「はあー、本当だろうな? この前もそう言って、結局なにも無かったじゃんかよ」


「この前はね。けど、いまのは多分間違いないと思うよ。だからお願い、あの場所へ行ってくれない。――ね、紅蓮ぐれん

「――ったく、仕方ねえなぁー。りんの頼みだから行ってやるけど、あまり長い時間はいられねえぜ」


「分かってるって。少しだったら大丈夫でしょ」


 こうして光の正体を探りに、残骸の場所へ向かう二人。やがて目的の付近へ近づくにつれ、りんが点在したごみの山を指し示す。


「あっ、あれだよ紅蓮ぐれん。あの右側にある残骸」

「んっ? この場所って……以前も通らなかったか?」


 荒野に点在する残骸は、どこにでもある見慣れた風景。確かなことは言えないが、街へ向かう途中に走り抜けたのではないかと紅蓮ぐれんは話す。


「そっ、そう? よく似ているからね。多分、気のせいだと思うよ」

「ほんとか? たしか、ここだと思ったんだがな……」


 紅蓮ぐれんの言葉に、苦笑いしながら顔を引き攣らせるりん。しかし、諦めてはいけない時だってある。なぜなら、見慣れた風景だからこそ、まだ手を付けていない残骸もあるかもしれない。


「――あっ、紅蓮ぐれんごめん‼ この残骸だからここで止めて!」


 バイクが目的の場所を通り過ぎようとした瞬間――。りん紅蓮ぐれんの肩を強く引き寄せ、突然にも呼びかける。


「はあっ⁉ ここ?」

「そう、この場所」


 光を見つけた場所はりんしか分かっていなかった。そのため、急に呼び止められた紅蓮ぐれんは、バイクを横に滑らしながら勢いよく止める。この状況に、砂埃が二人の身体を覆いつくす。


「ごほっ、ごほっ! ぐっ、紅蓮ぐれん。もう少し丁寧に止めて欲しいんだけど」

「仕方ねえだろ、りんが急に止めろと言うんだから」


 二人は薄っすらと目を開けるも、周囲は砂埃により何も見えない状態。とはいえ、ほどなくすると包み込む塵も風に吹かれ流れゆく。


 こうした中、消える事なく残るもの。それはバイクから伝わる二つの感じ方。振動は大地を揺らがせ、重低音は大気を響かせた…………。

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