夜空を光り輝かせ、見るものの心を魅了する数々の星々。太陽系を含む銀河系の集まった銀河団。このどこかに存在する楽園のような惑星。その名はペンタス。
と、いっても楽園であった時代は数百年前のこと。何故なら、この惑星は天体衝突によって大半は砕け散り、そこに住んでいた人々の半分以上は死滅してしまう。
このジャイアント・インパクトと呼ばれる大衝突。これによって、壊滅的な打撃を受けた惑星は、生命を維持するためのライフラインが全て失わる。そして、残された人類は自らの存亡をかけ、どうにか生きていける状況ではあった。
こうした直後に起きた光景は、見るも無残な
というよりも、ただ死を待つだけの運命。皮膚はただれ腕や足はなく、周囲に轟くような声で救いを求めている。もうそこに光や希望はなく、阿鼻叫喚な光景が広がる悲惨なものであった。
この大衝突によって飛び散る残骸は、天に舞いあがり上空を覆いつくす。すると――、日の光は遮られ暗闇に包まれた暗黒の世が数年続く。やがて世界は、熱放射・酸性雨・温暖化・光遮断といった大気汚染によって、人々は長きにわたり苦しめられてしまう。
これによって、大衝突よりも死にゆく人が後を絶たないでいた。この壊滅的な打撃のせいだろう。大地は痩せ細り、穀物はおろか雑草すら生い茂ることはない。そのため寒暖の差が激しい惑星では、動物も死に絶え僅かな食料しか手にすることが出来なかった。
こうなると、一体なにが想像できるのかは言わずと知れたこと。今まで助け合っていた者達は、食料を求め争奪や殺し合いを始める。
そんな過酷な環境で暮らす人々は、この惑星に生まれたことを後悔しながら生きる。そして次第に自らの住む惑星など、もうどうでもいいと諦める始末。ついには、人々の記憶からも星の名前すら忘れ去られようとしていた。
とはいうものの、ペンタスも悲劇の瞬間までは他の惑星から羨まれた存在であった。何故なら、最先端の文明レベルにより、輸送を簡素化した物質転送や瞬時に移動できる乗り物。これら以外にも魔法のような様々な技術。
どれをとっても、この惑星における高度な文明に匹敵するものはない。そのため、多くの人々が移住してくるほどの賑わい。ただ人種も様々といったこともあり、最初のうちは会話も困難であった。
しかしながら、これを解消したのが脳に埋め込まれたミクロチップ。
多種多様な言語でありながらも、自動翻訳の機能により人々の暮らしをサポートしてきた。まさに、他の惑星を差しおいた文明レベルだろう。このような宇宙文明には三段階の進化が存在しており、詳しく述べるならばこのように言える。
下から、惑星文明・恒星文明・銀河文明。
ペンタスは、これらの上位に位置する宇宙全体のエネルギーを制御した文明。こうした最先端技術を導入した惑星の気候は、年中通して温暖で住みやすく自然に恵まれた環境。土壌開発により、食料問題などにも悩まされる心配は一度だってなかったという。そのため、餓える者など誰一人として存在せず、人々は活気に満ちた生活を行っていた。
この楽園のような大地であった惑星。どの星よりも優れた機械文明の惑星と称されるほど。だが今では荒れ果てた大地が続き、至る所に残骸が散らばっている。
それでも安寧の世の時代は、人々から愛された希望の星と呼ばれていたという…………。