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第40話

「ギャァアア!!」


 ラプトルの群れと戦う冒険者達……どうにか今は押していますし、冒険者に死者は出ていません……それは安心だけど……旅人様が怪我をしないか、不安で仕方ありません……


「旅人様……」


 彼の強さはよく理解しているけど、やっぱり不安なものは不安です……彼が無事帰ってこれますよう。私には祈ることしかできません……


「ギィィイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」


「ふぇ!?」


 ひときわ大きな声がしたかと思うと、レッサーラプトルとるよりもラプトルよりもおっきな亜竜がそこにいました……


「え、まって、あんなおっきのがあそこに降りてきたら……」



「馬車を急がせろっ!!あの化物を下におろすなー!」


 冒険者さんたちもパニックです……完全に予想外の存在……私にはあれがなんなのか、わかりませんが、間違いなく今いる魔物よりは強いのはわかります……それに、強いだけじゃなくて、あれが降りてきたらこんな危ない道、崩れるかもしれない……その可能性が高い……



―――旅人side―――


「おいおい、なんだよあれはぁっ!」


「とにかく弓使いと魔法使いはあいつを牽制しろっ!」


「もうやってるよっ!!!くっそ、全然ひるまねぇっ!」


「あれもやべぇけど、こっちのラプトルもうぜぇ!さっさと死ねやっ!!」


「ザンド防いでっ!」


「ぬぅうんっ!!」


 赤い子猫のザンドが大楯でラプトルの攻撃を防ぐ……


「《ウォーターボール》!」


「うらぁ!!!」


 右側面からマグナスが斬りかかり、血を流しひるんだラプトルの顔面にラニィの魔法が炸裂する……それでラプトルが倒れた……


「よっしっ!次やるぞっ!」


「カルナは怪我人の治療を優先してくれっ」


「わかったわ」


 戦闘になれば真面目に動いてるな……赤い子猫の連中はまぁ、問題ないか……周りの冒険者もレッサーラプトルは1人で倒せるぐらいの実力はある……と、なると……やっぱり問題はあのデカブツか……


「くそっ!ダメージが通らねぇ!」


「おい、少しいいか」


「なんだっ!?」


「あいつの相手は俺がする、その間にとにかく周りの雑魚を片づけてくれ」


「大丈夫なのか?」


「あぁ、少なくとも足止めはできる」


「むぅ……わかった、頼むぞ……」


「あぁ、しっかり役割は果たす、そっちも雑魚の処分を頼むぞ」


「おぅ」


 指示を出していた冒険者の了承を貰い、俺は少し離れ助走をつけると、この壁を駆け上がる……


「うはっ、マジかよっ!」


 下から声がしてくる……声からしてマグナスか……まぁ、どうでもいい……


「ギィィイイイイイイイイイイイイイイイ」


「うるさいっ!」


 俺は上にいたデカブツの化物の顔面にまず一撃蹴りをいれる……


「ギヤァアアアアアアアアアアアアア!!!」


 蹴られたのが痛かったのかキレったっぽい……奴の視線が俺にむく……


「こいよ……名前もしらない化物」


「グォオオオオオオオオオオ」


 さて、ここは足場としては最悪も最悪……踏ん張りも効かないし……俺は、とにかくやつのヘイト管理をすることに集中する……回避し、ついで奴を切りつけ……魔剣の力で回復する……そうすることで、この場でも十分に体力消耗を抑えられる……


「ギィイイイイイイイイイイイヤアァアアアアアアアアアアアアア!!!」


「うるせぇっ!水よ纏えっ!《アクアソード》」


 剣に水を纏わせ、奴を斬りつける……


「ギャァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


「おっ、ダメージあり……水に弱いかな?」


 痛みを感じてかさらにブチギレ暴れ出す化物……にしても、こいつはなんだろうか……ここらで活動してる冒険者も見たことが無いようだし……亜竜であることは間違いないだろうが……


「グォオオオオオオオオオオ」


「チッ!」


 でかい身体で暴れる亜竜……とにかく攻撃して弱らせつつ挑発を続ける……


「こっちは終わったぞっ!!」


「わかったっ!」


 その言葉とほぼ同時に、魔法や弓が亜竜に当たる……亜竜は下からくる攻撃に視線を向ける……


「余所見してていいのかっ!」


「ギャァアアアアアアアアアアアアアアア」


 振るわれた一撃……さっきまでと違って完全に油断したところへ刃が奴の首に入る……流石に激痛を受けたらしく苦しそうに暴れる……


「くっ、浅い……」


「追撃しろっ!」


 魔法や矢が降り注ぎ当たる……


「そっちの広いところに落しますっ!」


「わかったっ、頼むっ!」


「やぁああああああっ!!」


 俺は何度か奴を斬りつける……明らかに憎しみの目で俺を見てくる亜竜を連れて俺は崖を駆ける……追ってくる亜竜を連れて移動する……とにかく移動がきっついが……


「グォオオオオオオオオオオ」


「こっちだアホっ!」


 俺は飛び上がり、俺についてきた亜竜を空中で蹴り落とす……


「落ちてきたぞぉおおおおおおお!全員でかかれぇえええええええええ!!!」


「ギュアァアアアアアアアア」


 下に落ちたことで、近接職にも攻撃されさすがに激痛で苦しむ亜竜……


「はぁああっ!」


 俺も空中から落下する勢いをつけて剣を突き立てる……


「ギャァアアアアアアアアアアアアアアア」


「好機っ!全員突撃ぃいいいいいいいい!」


「「「「「うぉおおおおおおおおお」」」」」


 亜竜はしばらくすると、流石にダメージを受け……少しずつ弱り、そして動かなくなった……


「はぁはぁ……疲れたぁ」


「わかってるけど、座り込まないでよ、さっさと残りの馬車の移動しなきゃ」


「わかってるよ……」


 俺も道の向こうを見れば、アンナが不安そうな顔をしているのが見えた……これはさっさと戻らないとなぁ……


 俺は他の冒険者と一緒に急いで馬車に戻るのだった……



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