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第39話

 しばらく見ていると、レッサーラプトルたちは倒され、再び移動を開始します。


「アンナさんっ」


「ヒッ、あっ、ま、マグナス、さん……な、なん、なんですか?」


「いえ、魔物をみて怯えられていないか心配になりましてっ!でも、大丈夫、魔物なんて俺たちがさくっと倒しますから、安心してくださいっ」


「あっ……うぅ……あ、は、はい……あ、ありがとう、ございます」


「それで、良ければここを抜けたら、一緒にお茶でも」


「い、いえっ、ひっ」


「こんのバカがぁああああああああああ!!!」


「ぎゃぁああああああああああああ!!!」


 目の前で振り抜かれた杖で頭を殴り飛ばされるマグナスさん……血とか出てるけど、大丈夫だろうか……


「ふぅ、ごめんね?気づいたら持ち場から離れてナンパなんて、今後はぜーーーーたいこっちには近づけないから」


「あっ、は、はい、お願い、します」


 ラニィさんはマグナスさんの足を掴むと引きずって行きました……途中、ゴンゴンと何度も頭をぶつけてるマグナスさんですが、大丈夫なのかな……


「あの男もしつこいな」


「は、はい……」



 それからも馬車は進んでいきます……道中、レッサーラプトルやワイバーンなんかに襲われましたが、人数もいることでどうにかチッパすることはできました……そして、その日の晩……最初の野営。


「おつかれ、今日はここで休憩だな」


「わかりました……はぁ、私自身は戦ってないのに、疲れちゃいました……」


「仕方ない、とりあえず野営の準備をするぞ、俺たちは自分たちで用意する必要があるからな」


「わ、わかりましたっ」


 さて、私のお仕事は基本的に火の番です……さらには、旅人様が用意したお鍋の様子を見つつ……まぁ、この間に旅人様はテントを用意したり色々してくれるんですが……ふふ、このお鍋を持つことすらできない私……


「あっ、だいぶ出来てきたかも」


「おおっ!アンナさんの手作り料理っ!ぜひ俺もご相伴に預かりたいですね!」


「ひっ!?」


「アンナさんっ!ぜひこのマグナスにもあなたの手作り料理ぉおおおおおおおお!!!?」


「ふぁ!?」


 マグナスさんは、身体を震わせて内股になって崩れ落ちました……


「おっと」


 後ろでマグナスさんの股間を杖で打ち付けたラニィさん……彼女は倒れそうになったマグナスさんの頭を掴むと反対方向に投げました……


「え、えぇ……」


「ほんっとーーーにごめんねっ!このバカっ!マグナスっ!あんた、明日は魔物の囮にするからねっ!」


 そういって、ラニィさんはマグナスさんを引きずって去っていきました……


「あの人もいい加減こりないなぁ……」


「どうかしたか?」


「あっ、旅人様!お鍋いい感じですっ」


「あぁ、うん、よさそうだな」


「えっと、さっきマグナスさんがまた来て……ラニィさんに連れていかれました」


「またか……懲りないというか、毎回記憶がリセットされてるのかもな」


「あ、あはは……え、えっとご飯、ご飯食べましょう」


「そうだな」


 それから、旅人様特性のお料理でお腹を膨らませ、ゆっくり休みました……まぁ、周りに人がいっぱいで緊張はしましたが、旅人様が用意してくれたテントに入ったのでだいぶ視線がなくなって楽になりました……うん、この商隊は男性が多く、女性冒険者は少しで、容姿が優れてるとなると、赤い子猫のラニィさんとカルナさん、あとは明らかに非戦闘要員である私……どうしても男性からの視線は気になってしまいました。


 ◇


「ふぁぁ……おはよう、ございましゅ」


「あぁ、おはよう……朝食を取ったら出立するから準備しろ」


「はぃ~」


 私はカペラと一緒にご飯を食べます……おいしい♡ 周りにカペラを見つからないようにしなきゃいけないからちょっと大変ですけど、カペラも周りに人がいるので警戒して顔を出そうとしないから、よっぽど見つかることはないはず……


「カペラ、また隠れててね……ごめんね」


「きゅっ」


 カペラがまた外套の中に隠れる……それから私達は片付けをして馬車にのって出立となりました。



「わぁ……ここを通るんですか?」


 移動して私達がたどり着いたのは、断崖絶壁……そこまで広い道ではない、いや道なのだろうか?とにかく落ちたら即死間違いなしの危険地帯でした……


「あぁ、本来の道があったらしいんだが、数日前に落石が起きたらしくてねぇ……この道しかないんだ」


 疑問に思った私に声をかけてきたのは、今回の依頼者さんでした。


「あっ、え、えっと」


「落石ですか?聞いた範囲にはなかったのですが」


「あぁ、すまないね、一応報告はあがっていたんだがね……タイミングの問題で正確な調査ができていなかったんだよ……先ほど確認してきたら、やはり通れそうになかったそうだ」


「そうですか、なら仕方ないですね……ただ、問題は……ここで襲われたらやばいですね」


 私の代わりに話しをしてくれる旅人様……でも、実際、彼の言う通りこんな危険な道で魔物に襲われたら……考えるだけで震えてしまう……


「まぁ、とにかく1台ずつ通ることになる……すまないが護衛の諸君には警戒をお願いしたい」


「わかりました…」


「旅人様、大丈夫なんでしょうか?」


「そうだな、正直危険性は高い…」


「です、よね……」


 でも、私が不安に思ったからといって馬車が進むのはかわりなく……最初に一番前の馬車がこの危険な道を進み始めました……


「今のところ問題なさそう、ですね」


 今は2台目の馬車が道の中腹あたりを進んでいます……


「ギャギャギャッ!」


「えっ!?」


 パラパラと小石が落ちてきて、声がしました……崖の上からレッサーラプトルと、それより一回り大きいラプトルがこちらを見て鳴いています。


「戦闘体勢っ!馬車を急がせろっ!弓使いは手伝ってくれっ!」


 2台めの馬車の護衛をしていた冒険者から声が届きます……その声に、弓持ちの冒険者達がすぐに動いて崖上にいるラプトルたちに攻撃を仕掛けます……ですが、ラプトルたちは次々と崖をかけ降りて馬車を狙ってきます……


「チッ!ラプトルを討伐するぞっ!4番までの冒険者は手伝えっ!」


 その声に冒険者達が走っていきます……あれ、4番までって……?


「俺は行ってくるから、ここにいろ」


「はっ、はいっ!がんばってくださいっ」


「あぁ」


 旅人様は赤い子猫の皆さんと一緒にラプトル達がいる危険な崖道に走って向かっていきました。


「はぁっ!!」


「ギャッ!!?」


 剣を振り抜き、旅人様はラプトルをきり飛ばしていました……大丈夫、かな……


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