「《範囲浄化》」
さて、今日も今日とて朝から治療です……
「はい、おわりましたよ」
「ありがとうございます、聖女様っ」
ふぅ……皆からお礼を言われるのも流石に慣れました……でも、少しずつだけど人と会話出来るようになってきたし……うん、着実に成長してるよね……体力以外は……
「どうした?」
「あっ、いえ……ちょっと自己嫌悪を……」
「そうなのか?まぁ、いい……少し話があるがいいか?」
「あ、はいっ、大丈夫です」
旅人様に連れられ私達は教会裏に来ました……
「ここならいいか」
「えっと、なんでしょう?」
「あぁ、先ほど確認したが今日来てる人数で街の住民の治療は完全に終わるらしい」
「えっ!本当ですか?」
「あぁ……それでだ、予定よりはるかに遅れてるからな、治療が終わり次第、この街を出ることにする」
「あっ……そ、そうですよね」
「アンナからすればここのシスター達とは仲良くなれたし住民たちからの評判もいい……今までのことを考えれば居心地がいいかもしれないが、王国からの追っ手が来ればどうなるかわかるよな?」
「はい……わかっています」
「あぁ……とにかく、今日の治療を終えたら明日の朝一で街を発つ、覚えておけ」
「わかりました」
「あっ、アンナさん、今日の患者さんが来ましたよ」
「は、はいっ」
「ありがとうございます」
「え?」
「アンナさんが来てくれたお陰でこうしてこの街は救われました……まぁ、聖女様って騒いでご迷惑をおかけしてしまいましたが……ただ、私がなにか言わなくても自然と聖女と呼ばれていたかも知れませんけどね」
「そ、そうでしょうか?」
「えぇ、だってアンナさんは容姿は美しいですし、最初お会いしたときはどこかのお貴族様が来られたのかとおもって実は驚いたんですよ?」
「えっ、そ、そうなんですね……」
「えぇ、アンナさんは知らないかもしれませんけど、ファンになった人多いんですよ?聖女様と付き合いたいって言ってる男性すごく多いんですから」
「ふぁぁ/// そ、そんな……///」
「ふふふ、でも大丈夫、アンナさんには旅人さんがいますもんね?」
「ふぇっ!?な、なななななんでぇえ」
「見てればわかりますよ?彼は~ちょっとわからないですけど、アンナさんが彼のことを気にているのは見てれば丸わかりです」
「あ、あうぅ///」
「ふふふ、さて、患者さんを待たせてますし、行きましょうか?」
「は、はひっ」
もどってからはとにかく治療です……患者さんを不安にさせないためにも顔に出さないように注意です……
◇
「はい、これで終わりです」
「はぁ~疲れたぁ……」
「ふふ、お疲れ様、これで全員の治療は完了よ」
「よかったぁ……やっと終わりましたぁ……」
「これも、アンナさんが頑張ってくれたお陰ね……やっぱりあなたは聖女様だわ」
「そ、そんな、私は聖女なんかじゃ」
「ふふ♪わかってるわよ……でも、前にも言ったけどこの街の人からしたらあなたは間違いなく聖女なのよ……死の淵にいた私達を救ってくれた希望だから」
「はい……」
「さて、話しは聞いてるわ」
「え?」
「明日、この街を発つんでしょ?」
「あっ……はい……私達はその、ほんとは急ぎの旅の途中だったので……」
「そうね、それなのに10日もの間足止めしてしまってごめんなさい」
「い、いえ……これは、私がしたかったことなので……えっと、だから、あ、明日は早くにでるので、満足にお別れもできなくて、すいません」
「いいのよ、だから彼も前もって教えてくれたんだろうしね」
「旅人様には迷惑かけっぱなしなので……」
「ふふ、まぁ、その迷惑を嫌そうにしてないわけだし……あなたはあなたらしく今後もがんばって、それで必ず彼をゲットしてね♪」
「はぅ///」
クレサさんにからかわれながら、私のこの街での生活は終わりを迎えたのでした。
さて、朝になり私と旅人様は出立の準備を終え、街の門に来ていました。
「さて、いくか」
「はい……」
「寂しいか?」
「それは……そう、ですね……で、でもっ!わかってることですし……このまま私がここにいる方が迷惑かけちゃいますから……」
「まぁ、呪を解いて、問題が解決したら、また来ればいい」
「あっ……そ、そうですよねっ!」
「じゃあ、行くぞ」
「はいっ」
「アンナさんっ!」
「え?」
私が振り返ると、教会でお世話になったシスター達……それだけじゃなくて、治療した街の人の多くの姿がありました。
「え?え?な、なんで??」
「そりゃ、街を救ってくれた英雄の見送りだよ」
「聖者様っ!助けてくれてありがとうとざいましたっ!また来てくださいねっ!」
「そうですよ、アンナさんがこの街を、もし気に入ってくれていたら、また、また旅が終わったら寄ってくださいっ!」
「儂らはいつでも待っていますからのぅ」
「「「聖女のおねーさんありがとーー」」」
「あっ……えっと、わ、私っ」
今まで邪魔者扱いされていた私にとって、これだけの人に感謝されて、そして見送ってもらえる……それがこんなに嬉しいなんて、嬉しくて、うれしくて……な、涙、涙が、なんで……止まらない……
「聖女様大丈夫?」
「う、うん、だ、大丈夫、だよ」
あぁ、人ってこんなにあったかいんだぁ……
「私っ、また、また絶対来ますからっ!だから、皆さんもお元気でっ」
私は頭を下げ待っていてくれた旅人様のそばまで駆けていきました……それで彼と一緒に歩き出す……後ろを振り返れば、私達が見えなくなるまで、街の人たちは手を振り続けてくれていました……
「よかったな」
「はいっ!」
温かい気持ちをもって私達は目的地である魔法王国を目指して歩みを進めるのでした……