朝食を食べた後、私達はさっそく治療のためにハレナさんとアレン君の家を訪ねることにしました。
「俺は初対面だからな。基本話はしない、ただ何か問題がありそうならすぐ動けるようにはしておく」
「はいっ、お願いします」
しばし歩くと、家の前で薪割をしているアレン君の姿が見えてきました。
「アレン君」
「ん?あぁ、姉ちゃんか、また来たのか?あれ、そっちのは誰だ?」
「あっ、えっとこの人は私の旅の、えっと護衛してくれてる優しいお兄さんだよ」
「ふーん?あぁ、姉ちゃんの好きな奴か」
「ちょっ!?な、何言ってるのかな!?」
「違うのか?」
「いや、それは……えっと……ごにょごにょ……」
「はぁ……すまないなアレンだったか?」
「あぁ、なんだ?」
「実は、君の母親を治せるかもしれないんだが、あわせてもらえるだろうか?」
「ぇ……ほ、ほんとかっ!?嘘ついたら容赦しないからなっ!」
「あぁ……とにかく問題がないなら試させてほしい」
「わ、わかった……こっちだ着いてきて」
「ほら、行くぞ」
「ふぇっ!?あっ、わ、わかりましたっ」
ついつい妄想にふけってしまったのは反省です……アレン君があんなこというから……うぅ、顔が熱い///
「母ちゃんっ!」
「アレン?どうしたの……薪割は終わったのかい?」
「いや、まだだけど、じゃなくてっ!母ちゃんの病気が治せるかもしれないってっ!」
「え?それはどういう……」
「あの、こんにちは……えへへ……」
「アンナちゃん?どうしたの?それにそちらの方は?」
「そっちの兄ちゃんは姉ちゃんの護衛?ってのらしい」
「護衛を雇ってるのね……アンナちゃんは立ち居振る舞いが綺麗だからもしかしてと思ったけど……」
「あっ、わ、私は別に貴族とかそういうのではないので気にしないでくださいっ!と、とにかく、ハレナさんの病気を治せる方法ができたんですっ!だから、だから、治させてくれませんかっ!」
「それは、出来るなら嬉しいけど……正直、石化病を治せるなんて、とてもじゃないけどお金が……」
「お金はいりませんっ!私が、私がただ治したいんですっ」
「アンナちゃん……」
ハレナさんは私を見たあと、後ろにいる旅人様に視線を移しました……私も旅人様を見ると彼は頷いてくれます……特になにか言ってくれたわけではないですが……ハレナさんはそれで納得してくれたようでした。
「はぁ、わかった……じゃあ、お願い、しようかしら?もちろん失敗したって気にしなくていいからね?」
「は、はいっ!大丈夫……」
自信を持って……絶対成功させる、そのイメージを崩さないで……この世界ではわかんないけど、前世で見たことあるアニメなんかだとイメージが力にーみたいなのがあったし……大丈夫、治せる、石化病は治せる……
「お願い、神様……石化病を治してっ!《完全浄化》」
願いを込め、魔法を発動させる……練習したときとおなじ、光が放たれ、光はハレナさんの身体を包む……そして、それははっきりと結果を見せてくれた……
「か、母ちゃんっ!足が、足が石化がなくなっていってるっ!」
「うそ、本当に……」
光がおさまったとき、彼女の足は完全に元の人肌に戻っていました……
「はぁ……よ、よかったぁ……成功したよぉ……」
「姉ちゃんっ!」
「え?アレン君?」
「ありがとうっ!母ちゃんを治してくれてありがとうっ!うっ、グスッ……ヒックッ」
「あっ、ああ、な、泣かないでっ」
泣きだすアレン君に私が四苦八苦していると、後ろから声が聞こえてきました。
「ハレナさんだったか?これを飲んでおくといい、石化病で筋力が弱まってるからな、ポーションで多少は回復できるだろう」
「え?ありがとうございます……い、いいんですか?ポーションはすごく高いって聞きますし」
「かまわない……うちの依頼主が無料でやるって決めたからな、俺はそれに従うだけだ」
「あ、ありがとうございます」
「た、旅人様っ!ありがとうございますっ」
「気にするな、お前が治したんだ。ただ、こんなことはなるべくしてほしくはないんだがな」
「ごめんなさい……で、でも、私は……」
「いいさ、無理しても辛いだけだ……まぁ、今後は気を付けてくれればいい」
「はいっ!」
「あの、本当にありがとうございます……どうお礼をすればいいのか……」
「いいえ、気にしないでくださいっ、私がやりたくてやっただけなので」
「アンナちゃん……ありがとう……本当にありがとうね……」
「姉ちゃん、ありがとう!母ちゃんを助けてくれてありがとうっ」
「あはは……よかった、ほんと、よかったぁ……ふぇぇ」
「わわ、姉ちゃん大丈夫か!?」
「う、うん……成功して、その、気が抜けただけだから……///」
さて、この後はお礼を言われたり、お返ししたいとか色々言われましたが断りました……ハレナさんとお話をしたりアレン君と遊んだり……それを旅人様は見守っていました……
「さて、だいぶいい時間だな……普段昼食はどうしてるんだ?」
「え?えっと、俺が用意してるよ」
「そうか、まぁ、それしかないか」
「う、うん」
「旅人様?」
「せっかくの快気祝いだ、料理を作ってやる」
「え!?いいのっ?」
「そんな、助けていただいただけでなくお料理までなんてっ」
「言っただろ、快気祝いだ、気にするな。台所を借りるぞ」
「あっ、案内するよこっち」
アレン君は旅人様を連れて奥へ行ってしまいました……
「あの、ごめんなさいね……ほんとうなら私がおもてなしするべきなのに」
「そんな治ったばかりですし、まだ安静にしててください」
「そう、ね……ごめんなさい……そういえば、彼って、護衛らしいけど」
「はい?」
「ただの、護衛かしら?」
「ふぇっ!!?な、なななななんででしゅかっ!?」
「うん、わかりやすいわねぇ……アンナちゃん、彼を逃がしちゃダメよ?好きな相手ならガンガンいきなさい」
「え、で、でもっ、き、嫌われたら死んじゃいますし……(精神的にも物理的にも)」
目の前で悪戯っぽく笑うハレナさん、後ろからはアレン君が旅人様が出した鹿に大興奮してる声が響いているのでした……