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第20話

「とりあえず、問題なく最高位の魔法が使えたな……正直驚きだ……この分だと、治癒魔法も最高位まで扱えるかもしれないな……」


「えっと、そちらも練習したほうがいいですか?」


「いや、今日は止めておこう……今は問題ないとはいえ短時間にかなりの魔力をつかったはずだ……後で体調を崩す可能性もあるからな」


「は、はいっ、わかりました」


「はぁ……とりあえず、今日は戻るぞ……鹿を捌いてくるから借家で大人しくしていろ」


「あっ、やっぱり鹿さんは……」


「まぁ、今日の夕食だ」


「はい……」


 そのあと私は大人しく借家に戻りました……それからしばらくして、鹿さんは見事解体され、今日のお夕飯に並んだのです……鹿さん、実験までしてご飯になってくれて……ありがとう……今日は、いつも以上に命に感謝をしてご飯を食べたのでした……


 ◇


 さて、次の日の朝、私は旅人様に起こされました……


「んっ……んにゅ?」


「起きろ」


「えっと……」


 頭が中々回らない中で、しばらく辺りを見渡してから、朝の冷気で目がやっと覚めてきました……


「お、おはようございますっ」


「あぁ、おはよう……体に違和感はあったりするか?」


「え?えっと……」


 自分の身体をキョロキョロ見てみます……頭が痛いとかもないし、体もだるくありません……健康そのものでした。


「えっと、特に変わった感じはないです」


「そう、か……」


「あの、な、なにか問題があるのでしょうか?」


「いや、逆だな」


「逆?」


「あぁ、本来ならとっくに魔力欠乏症を引き起こしててもおかしくない……それなのになんともないとなると……アンナ、お前の保有魔力量はとんでもないことになってるかもな」


「え?えっと、ほゆうまりょくりょうですか??」


「あぁ、まぁ、用は魔法を使う際に必要な魔力の総量のことだ……保有魔力量が少ないと、最上位魔法を扱えるだけの才能があっても魔法を扱えないからな……昨日あつかった《完全浄化》に関しては、一度でも使えばたいていの人間なら数日は寝たままになるだろうな」


「え?そ、そんなに酷いんですか?」


「あぁ……最上位魔法ってのはそれだけ一度につかう魔力消費量が激しいんだ……なのに、アンナはあれだけ魔法を扱ってもケロっとしてる……そうすると保有魔力量がとてつもなく多いんだろうが……ふむ」


「えっと、保有魔力量が多いおかげで魔法が使えるんですよね?なら、問題ないんじゃ……」


「いや、今回のを考えると……お前を捨てた国の人間が今回の事をしれば、お前を殺す方向から連れ戻して利用する方向に舵を切る可能性もある……治癒魔法や浄化魔法に関してはなるべくバレないようにしたほうがいいだろうな」


「そんな……」


「まぁ、今回使う分には問題ない……朝食を食べたら治療にいくとしようか」


「は、はいっ!」


「きゅぅっ」


「あっ、うさちゃんっ!えへへ、おはよう」


 この子はすっかり私に懐いたようで、森にかえることはなく、ついてきてくれました。旅人様も連れていくことに特に難色を示すことはなかったので、この子も旅の仲間になったのですっ


「そういえば、そのカーバンクルだが」


「かーばんくる?そういえば、昨日も言っていましたね?このうさちゃんのことですよね??」


「あぁ、アンナはウサギと混同してるみたいだが、魔物の一種だ……普通は人に懐くことはないんだがな……」


「そうなんですか?」


「あぁ……見てわかると思うけど、そいつには額に宝石があるだろ?」


「えっと、この赤い宝石ですね?」


「あぁ、それをもつのがカーバンクルという魔物の特徴だ……戦闘力は限りなく低く、とにかく弱い……ただ、宝石を生み出すことができると言われていてな、古来から乱獲され数を減らし、今はその存在は幻とも言われる存在だ」


「そんな……じゃあ、この子に家族や仲間は?」


「まぁ、いないだろうな……カーバンクルは数を極端に減らし、ここ数百年は目撃情報がないはずだ……正直こんな森にいるとは思わなかった」


「キュアっ!」


「あっ!ダメだよ、うさちゃんっ」


 旅人様がうさちゃんに手を伸ばすと、この子は警戒したように声をあげ、彼の手をひっかいてしましました……旅人様の手には引っかかれた痕がつき血が滲みだしています……


「あっ、すぐ治療します!えっと……お願い治って《治癒》」


 光が発生し、旅人様の手を包む……光が消えると、傷は綺麗になくなていました。


「ふむ、ありがとう」


「いえ、あの、ごめんなさい……えっと、しっかり教えます、しつけますから、捨てるのだけは……」


「別に捨てはしない……そいつもお前に懐いてるしな……まぁ、カーバンクルは基本人に懐くことはない、だから俺に牙をむいてもおかしくはないだろう」


「で、でも……」


「まぁ、時間をかければ慣れてくれるかもしれないからな……ただし、自分でしっかり面倒を見ろよ?」


「も、もちろんですっ」


「あぁ……それと、連れていくならいい加減、名前をつけてやれ」


「え?名前……あっ、そうですよねっ!」


 確かに彼の言う通りだ……これから一緒に旅をするなら名前は必要……どうしよう……真白な毛に長い耳……赤い宝石がついて……


「カペラ……」


「ん?それが名前か?」


「えっと、はい」


「何か意味はあるのか?」


「い、いえ、なんとなく浮かんだ名前なんですけど……えっと、どうかな?カペラ」


「きゅぅ♪」


「気に入ったようだな」


「よかったぁ……えへへ、よろしくねカペラ♪」


「きゅぅうう♪」


 こうして、可愛いカペラが旅の仲間に加わりました♪旅人様とも早く仲良くなれればいいなぁ……


「さて、朝食を準備する……昨日の鹿もまだ残ってるしな」


「あっ、わかりました」


「あと、鹿肉はあの家族に残りはもっていってやれ」


「い、いいんですか?」


「あぁ、体力も落ちてるだろうしな……食べれるものがあったほうがいいだろう」


「えへへ///」


「なんだ?」


「いえ、やっぱり旅人様はすごく優しいなって♪」


「はぁ……まぁ、なんでもいい……とりあえず朝食を食べたら行くぞ、今日は俺もついていく」


「旅人様も来てくれるんですねっ!」


「まぁ、何かあったときのためにな……」



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