「さて、とりあえず森を出るぞ……このままだと他の魔物も誘引されてくるだろうしな」
「あっ、あのっ!こ、これ、アステラの葉、どうすればいいのか教えてくださいっ」
「はぁ……そんなにあの親子を助けたいのか?」
「はいっ、助けたいです……ダメ、でしょうか?」
旅人様はしばらくなにか考えてる……なにを考えてるかわからないけど、どうかいいことでありますように……それからどのぐらいだろう、考えたいた旅人様が顔をあげ私を見る。
「はっきり言うが、今アステラの葉を手に入れたところで、結局魔石や聖水を手に入れるまでに腐って使い物にならなくなる」
「あっ……」
そうだ、植物なんだ……ずっと保管しておけるわけがない……私はなんでそんな事も気づかなかったの…
「あっ、あの、煎じておくとか、そういうのは……?」
「無理だな、アステラの葉はそのまま新鮮な状態の葉を使う。煎じたり乾燥させると効能がなくなるからな」
「そんな……じゃあ、私がしたことは無駄だったんですか……」
「アンナ……お前の行動は確かに無駄になったかもしれない」
「うぅ……」
「だが、可能性は見いだせた……そういう意味では無駄にならなかったかもな」
「え?どういうことでしょうか?」
「さっき天啓の話をしただろ」
「はい、えっと、私に治癒の天啓があるかもしれないんですよね?」
「あぁ、治癒の天啓はその効果の強さに応じて出来ることが大きくかわる……」
「えっと、どういうことでしょうか?」
「今の状態だと傷を治す、これは出来てるな?」
「はっ、はいっ……うさちゃんの傷を治せました」
「ふむ…鑑定することが出来ないからわからないはっきりとはしない、ただその分、検証をすればもしかしたら、あの母親の病気を治せる可能性がある」
「ほ、ほんとですかっ!!」
「あぁ、だが、あくまで可能性だ……薬を作るよりも確率は低いと思え……だが…もしかしたら……」
「可能性があるなら、お願いしますっ!どうか、どうか教えてくださいっ」
「わかった、だがとりあえず森を出るぞ。魔物が追加で襲ってきても困るからな」
「わ、わかりましたっ」
そのあとは、襲い来る魔物を旅人様が切り伏せながら進み、森から無事でることはできました……ただ、やっぱり途中で体力がなくなった私は彼に背負われる形で脱出することとなったのでした……
「さて、村を出る日も近い……さっさと確認するぞ」
「お願いしますっ」
「まず治癒魔法をはじめとした回復系の魔法の系統はいくつかある……主に神聖属性と呼ばれるものだな……今回、お前が治した女性の石化病だがな、それを治すためには、治癒魔法の場合は《完全治癒》と呼ばれる魔法が必要になる」
「《完全治癒》ですか?」
「あぁ、これの四肢欠損すら修復できる最上位の治癒魔法だ……この世界でも使えるものは現状1人だけしか俺もしらない……なにせ使うためには天啓が高以上必要だからだ」
「そ、それって……とっても絶望的なんじゃ……」
「そうだな、だがもし使うことができるなら……石化した部分を砕いて《完全治癒》で修復する形になる」
「え?そ、それって、とっても痛いんじゃ……」
「痛いだろうな、だがそれしか方法はない」
「そんな……」
「それが嫌な場合……もうひとつだけ、こっちは更に可能性が低いがな」
「な、なんでしょうか?」
「あぁ……浄化魔法を習得していることだ……」
「浄化魔法?ですか?」
「あぁ、治癒の天啓が強力なものだった場合、治癒魔法以外に浄化魔法を習得できてる可能性がある……《完全浄化》を使えるなら、石化病ごとき簡単に治ることができる」
「それが使えれば、お薬もいらないってことですね?」
「そうだな……お前の天啓が神聖魔法なら……どちらも使える可能性がある」
治せる可能性がある……可能性は低いかもしれない……でも、出来ることがあるなら、諦めたくないっ
「どうすればいいでしょうか」
「そうだな……治癒魔法は使えたわけだ……同じ要領で浄化魔法が使えるか試してみよう」
「えっと、どうすればいいんでしょうか?」
「まぁ、簡単だ……」
そういって旅人様が何かを取り出す……小さな木製の筒が出てきて、それを私に見せてくれる。
「えっと、それはなんでしょうか?」
「これには麻痺毒が入ってる」
「へぇ……ふえっ!?ま、まってくださいっ、ど、毒ですかっ?」
「あぁ、これからこの毒を使うから、お前は治癒魔法をつかったときの容量で浄化魔法を試してみろ」
「ま、待ってくださいっ、使って……も、もし浄化魔法が使えなかったらどうするんですかっ」
「その時は、このポーションを使ってくれ」
「え、あ、はいっ……」
「じゃあ、飲むから頼むな」
「え?ま、まってくださいっ!」
私が止めるのも間に合わず……旅人様は毒を飲んでしまいました……
「旅人様ッ!」
彼は苦しそうに倒れ、身体を痙攣させています……どうしよう、早く治さないと……えっと、えっと……落ち着け、落ち着け……うさちゃんの時と同じだ、治るように祈るんだ……
「お願いします、お願いしますっ……旅人様を治してっ」
旅人様に触れたまま必死に願う……するとどうだろう、治癒とは違う淡い光が旅人様を包むようにひろがっていく……
「んっ……ふぅ……」
「旅人様ッ!大丈夫ですかっ」
「あぁ、ふむ……毒が消えてるな」
「こんな危ないことしないでくださいっ!私、私、ダメだったrどうしようって……」
「悪かったな……」
彼が優しく私の頭を撫でてくれる……それだけで嬉しくて安心して……ついつい涙があふれてしまった。私にとって彼はとっても大事な存在だ……彼がいなくなるなんて考えられない……だから、だから、とっても、とっても怖かった……
「さて、今回のでアンナが浄化魔法も使えるのがわかった……次はその魔法がどこまで扱えるかの調査だな」
「え?あっ、まってくださいっ、また毒を飲むなんてダメですっ」
「わかった……次はそこらの動物でもつかって実験をしよう」
「うぅ、それはそれで動物さんが可愛そうで……」
「だけど、ぶっつけ本番で発動するかもわからない魔法を試すわけにもいかないだろ?」
「それは……はい……」
「そうなると動物実験をするしかないからな……ちょっと捕まえてくるから待ってろ」
旅人様はそういうと再び森の中へと入っていきました……私にはただそれを見送ることしかできません。
「うさちゃん……私、頑張るからね……」
「きゅぅ」
うさちゃんが私にを慰めるよに身体を刷りつけてくれる……そういえば、この子は森で生きてた子だ、私がこのまま連れてていいのかな??