「おはよう。どうした?眠れなかったか?」
「あっ、えっと……だ、大丈夫です、申し訳ありません」
「まぁ、慣れない環境だしな……ただ、今後を考えれば慣れて貰うしかない……我慢してくれ」
「はいっ!もちろんですっ」
当然だが旅人様のことを意識しすぎて眠れなかった等と言える分けもなく、私はただ謝ることしかできなかった……
「あぁ、起きたかね」
「あぁ、村長さん。ありがとうございました、助かりました」
「なに、かまわんよ……騒ぎは起こさなかったしな」
(あぁ、やっぱり騒ぎを起こす人は嫌がられるんだ……そういう意味では私は騒ぎの種なんだよね)
「おい」
「あっ、はいっ!どうしましたか?」
「そろそろ行くぞ」
「あっ、わかりました」
私達は昨日、村の人から売ってもらった荷物をまとめると村を出ることになった。
「お姉さんっ!元気になった?」
「あっ、う、うん……大丈夫、ありがとうね」
「ううん!元気になったならよかった♪」
こうやって、純粋に人に話しかけてもらって、心配されるなんて久しぶりすぎて、子供相手に緊張しちゃった。でも、やっぱりこうやって声を掛けてもらえるって嬉しいものなんだなぁ……
それから、旅人様と一緒に村を後にした……あの子は最後まで手を振っててくれて嬉しかった。
「旅人様、これからどうするのですか?」
村が見えなくなった頃、私がそう聞いてみると彼は、特にこちらを見るわけでもなくそのまま答えてくれた。
「これからアーモード辺境伯の領地を抜けて帝国に入る。ただ、ここが正直国を抜けるのに一番の難所になるだろうな」
「えっと……あっ、検問……ですか?」
「そうだ、まだお前が生きてることは知られてないだろうが、検問を抜ける際に気づかれる可能性も高い」
「えっと、他に抜ける場所とか、ないんでしょうか?」
「俺1人ならそれも可能だがな、お前さんを連れてるとなると、少し難しい……」
「そう、なんですね……」
「まぁ、とにかくそこさえ抜けられれば王国からは脱出できるからな……とにかく目立った行動はしないように気をつけろ」
「わかりました」
私はずっと閉じこめられてたから詳しくはわからないけど、この村からだと、大体10日ほどで到着することができるらしい……ただ、あくまでも順調に進んだ場合らしい……ここの問題は私という存在だ……馬車があればいいんだけど、馬車はない、そうなると虚弱すぎる私が果たして10日という距離を歩けるかと言われれば、多分無理……
「あっ、えっと……旅人様、私は……」
「あぁ、お前が体力がないのはわかってる」
「あぅ、申し訳ありません」
「いや、気にするな……途中他にも町があるからな、そこで馬車を手に入れられないか聞いてみるとしよう。最悪、馬1頭だけでも手に入れば移動は楽になるしな」
「あっ、確かにそうですねっ」
「ちなみに聞きたいが、馬に乗った経験は?」
「え、えっと……ず、ずっと前に少しだけ、今は、その……乗れません…」
「そうか、なら仕方ない」
「うぅ//// ご迷惑ばかりかけて申し訳ありません」
「いいさ……ただ、あまり卑屈になるな」
「え?」
「確かに、家族から、国から死ぬことを求められるなんて最悪だ、だけど、俺がお前を助けたとき、お前は確かに諦めの気持ちも感じた……でも、眼にはまだ抗う気持ちが見えた」
「え?そ、そうですか?」
「まぁ、あくまで俺の主観だ……とにかく、俺が守る以上は生き残ることを考えろ」
「はっ、はいっ!ありがとうございますっ///」
私は旅人様の言葉ですごく胸がぽかぽかする……嬉しい……彼のためになにかできないかなぁ……そんなことを考えながら旅を進める……ただ……
「その、ごめんなさい……」
「まぁ、わかってたことだ」
私は結局、1時間も歩くことが出来ずに力尽きてしまった……そして今は再び、彼の背中に背負われながら道を進んでいる。
「うぅ……私はどうしてこう……」
どうしても彼に迷惑を掛けてる、困らせてるって思うと気にしてしまう……せめてついていくという簡単な行動ぐらいまともにできればよかったのに……それすらも出来ない、完全な足手まとい。
「少し休憩するぞ」
「え?あっ、わかりました」
私は彼に近くに下してもらい、地面に座り込む……背負われて歩いてないのに、休憩してるって、色々問題だと思うけど。
(はぁ、風が気持ちいいなぁ……こうしてると、なんていうか……で、デートしてるみたいな///)
「おい」
「ひゃぃいっ!」
「どうした?」
「い、いえっ!な、なんでしょうかっ」
「あぁ、ほれ、水を飲んでおけ」
「あっ……ありがとうございます///」
旅人様から水をいただいて飲む……冷たくて美味しい…そういえば、旅人様は水をしっかり用意してるし、荷物も持ってくれてるし……私が役に立たなすぎる……
「あっ、あのっ」
「ん?どうかしたか?」
「いえ、あの……こんな私のためにありがとうございます……全然お役にたてなくて」
「はぁ、いちいち気にしなくていい、俺はお前を魔導国家に連れていく約束をした、お前は俺の護衛対象だ。その護衛対象にいちいち無理を共用するつもりはない……まぁ、もちろん状況によっては無理をしてもらうがな」
「いえ、それは当然だと思います……ただ、守っていただいているのに申し訳なくて」
「ふむ……まぁ、お前は……」
「な、なんでしょうか?」
「いや、あんな環境で育った割には、そこまでひねくれてないとおもってな」
「え?そ、そうでしょうか」
「あぁ、国の人間すべてを恨んでても仕方ないしな……復讐を求めたっておかしくはなかったからな、そういう意味ではお前はまともだ」
「あっ、ありがとうございます……あはは。そのもちろん、家族や使用人……私に酷いことをしてきた人たちは許せません……で、でも、だから……呪を解いて幸せになってやるって……そう思ったんです」
「へぇ……幸せにか」
「はい、その……自分たちが殺したがった相手が幸せになるほうが、あの人達には嫌がらせになるかなぁっておもったり、その……」
「いや、いいんじゃないか?殺すばかりが復讐じゃないしな、そういった復讐も面白いとおもうぞ」
「そ、そうですか/// えへへ……」
この人はなんて優しいんだろう……私の言葉を笑うこともなく、真剣に聞いてくれる……前世でも今でも、これまでこんな人は傍にいなかったから、とっても新鮮だ。
それからしばらく休憩した後、再び私達は次の町を目指して移動することになった……
「はぁ……はぁ……」
必死に歩くこと十数分……はい、私はすでにまた体力の限界を迎えようとしています……しかも少しでも、お役に立ちたくて、少しでも荷物を持とうと思ったけど……結局持てませんでした…軽い荷物でも力が無さすぎて持てないなんて……うぅ……村の子供のほうがはるかに力持ちでした…
それからも数回の休憩を挟みつつ、移動したものの……結局は途中から旅人様に再び背負われて荷物として運ばれる気分を味わったのでした……
「とりあえず、今日はここまでだな。だいぶ日も落ちてきたし、野営をしよう」
「わ、わかりました」
「とりあえず、お前は気にしなくていいから座って待ってろ」
「はいっ」
結局お荷物のまま私はその日も彼に作ってもらった料理を食べ、眠りにつくのでした……