「入れ、村長が会うそうだ」
「あぁ、ありがとう」
戻ってきた衛兵に連れられて私達は村の中にはいる……ちなみに、私は旅人様に背負われたままだ。
(うわぁ……村だぁ、ライトノベルなんかに出てくるような、イメージできる村っ!すごいっ、ちょっと新鮮で楽しいっ)
「村長~連れてきたぞ」
「あぁ、あんたらか?旅の途中らしいな?」
「えぇ、今日一晩宿をとらせて貰えればと。あと、村の作物やあと古着があれば買い取らせていただきたいのですが」
「ふむ……うちの村も貧しいし税も厳しいからのぅ……」
「少し割高でも買い取らせていただきます」
「ふむ……わかった、準備させよう……あと、空き家があるでな、そちらに泊ってくれ。そっちのお嬢さんも一緒でいいかね?」
(はっ!そうだっ、野営の間は緊張してたし、外だし、距離もあったから気にならなかったけど……お、屋内で男性と2人きりの部屋/// ど、どうしよう、どうしよう、どうしよう///)
「えぇ、おなじところで大丈夫ですので」
「うむ、わかった……おーい!」
「はーい、どうしたのおじいちゃん?」
おじいちゃんと村長さんのことを呼ぶ少女が、部屋の奥からやってきた、大体10歳ぐらいかな?くすんだ金髪を前髪ぱっつんのおかっぱヘアの女の子……頭につけてる青いカチューシャが可愛いらしい感じ。
「あぁ、すまんがこの2人を奥の空き家に案内してやってくれ、あと、作物と古着がほしいらしいから、村の者につたえてくれ」
「はーい!どうぞこちらへー」
「あぁ、ありがとう」
「お、おねがいします」
「お姉さんはどうしたの??」
「えっ、あっ、えっと……」
「ごめんな、お姉ちゃんは体調が悪いんだ、だから早く休ませてあげたくてね」
「あっ!そうなんですねっ、ごめんなさいっ!こっちですっ」
(いい子だ~うぅ、直接しっかりと面と向かってお礼を言いたいけど、顔を見られるわけでもないし……うぅ)
それから、女の子に案内されて、私達が今日泊る宿?空き家?に着いた……旅人様は優しく私を、部屋に寝かせてくれる……一応藁?かな、そこに布を敷いて寝かせてくれる。
「ありがとう、助かったよ」
「いいえ、えっと、おじいちゃんにお願いされたものが用意できたら教えますね」
「あぁ、頼むよ」
女の子が出ていくと、空き家には私と旅人様の2人きり……やばい、ドキドキが止まらない……旅人様が私のそばに近寄ってくる……
(はっ、まさかこのまま、私は押し倒されて/// キャーーー///)
「なにを考えてるかしらんが、変なことはしないからな?」
「はぅっ!え、えっと……な、なんでも、なんでもないですっ///」
「そうか?ならいいが……とりあえず、そのドレスは目立ちすぎる、ここで古着を買ってそれに着替えよう」
「あっ、そうですね…確かにこの恰好だと目立ちますよね」
そうだ、私の今の恰好はいくら、今回の騒動でボロボロになって汚れてるとはいえ、普通に見れば貴族、そうでなくても豪商とかの娘だって思われる可能性が高い……それに、今後旅をすることを考えれば、ドレスで動き回るのはとてもじゃないけど不便だ。
「あぁ、その服は悪いが、燃やして処分する」
「え?燃やすんですか!」
「気に入ってるのか?」
「あっ、いえ、そうではないんですけど……燃やすって言われて驚いてしまって」
「まぁ、生地はいいものだから売ることも考えたがな……お前が生きてる証拠をなるべく残したくないからな、燃やして処分したほうがいいだろう」
「あっ!た、確かに……そうですよね、売ってしまうとそこから見つかる可能性もありますよね」
「あぁ、だから燃やしてしまったほうが後腐れなくていい」
「わかりました、では、燃やしてしまいましょう」
「俺から言っておいてなんだけど、いいのか?」
「はいっ、この服にとくに思い入れもありませんし、私のわがままで旅人様のご迷惑になるのは嫌ですから」
「わかった……では、古着を手に入れたら燃やそう」
「はいっ」
それから少しして、村長の孫娘が呼びに来た……私はそのまま体調が悪い不利をして空き家で寝たフリを……そのあとは旅人様が買ってきてくださった古着を着ることになった。ただ、唯一の問題が……
「うぅ/// も、申し訳ありません……ひ、1人で着れないなんて////」
「いいさ、箱入りの王族なら、着れなくてもおかしくはないだろ」
そう、今の私は旅人様に着替えを手伝って貰っている……
(うぅ/// 下着見られたぁ……恥ずかしくて死ねるぅ///)
完全に予想外だった……前世の記憶もあるのに、まさか服を一人で着替えれないなんて……そもそもドレスの脱ぎ方もわからなかった結果、あきれたように旅人様が手伝ってくれた。村人に見られるわけにはいかないから仕方ないとはいえ、前世でも今世でも男性に着替えを見られる…しかも手伝われるなんて完全に予想外だった。
それから、旅人様は手慣れた様子で私の服を着せかえると、さっさと脱いだドレスを燃やしにいった。
「とりあえず、これで問題はないだろう」
「はっ、はい/// ありがとう、ございました///」
「いいさ。どうかしたか?」
「いっ、いえっ!なんでもありません////」
(うぅ/// 気にしてないのかなぁ、やっぱり私みたいな小娘じゃ気にしてもらえないの?/// いや、ダメ、まだ……これから時間はあるんだから、がんばって……がんばって…うぅ///)
「ずいぶんと表情豊かだな」
「ふぇっ!?そ、そそそそそうですかっ!?」
「あぁ、そうか?とりあえず、今日はこのまま休むぞ、距離があるからな……あんたの体力を考えると時間もかかるだろうからな」
「あっ、はい……すいません……」
(うぅ……虚弱体質の私……ほんとどうにかしたい)
「とりあえず、食料も少しだが手に入った。次の町までは十分持つだろう。とりあえず今日は休んで明日の朝一に出発しようか」
「わかりましたっ!お願いしますっ」
「とりあえず、簡単にだが食事をしよう。作ってくるから少しまっててくれ」
「はいっ、えっと、なにかお手伝いは……」
「いや、気にするな……というか、作れないだろ」
「あぅ、それは……そうですが……」
前世は両親がなにもしないから自分で作っていたから料理はできる。ただ、問題はこの身体の力のなさだ……間違いなく、包丁を上手く使えない、固い食材を切ることができない……お鍋なんか運べないなど、すでに最悪なパターンは予想できている。
結局旅人様がつくって下さった料理に舌鼓を打つこととなった……少ない食材でこれだけ美味しいものが作れる旅人様はすごい……というか、女子力も完全に負けてる……私って……
それから、私達は食事をしてから、眠ることになった……こういった村だとお風呂なんて当然ないし……とうにかお湯を貰って身体を拭いたけど……さ、さすがに身体を拭くのは自分でやった……こればかりは旅人様にお願いするなんてできないし……///
「さて、寝るか」
「あっ、はいっ、そうですね!」
「しっかり寝ておけよ、明日辛いからな」
「わかりました。では、お休みなさいませ」
「あぁ、おやすみ」
「………」
(寝れないっ!!! やばい、どうしよう……好きな人が傍にいるのに寝るとか無理っ!緊張して全然寝れないよぉ……ど、どどどどうしようぅ……しっかり寝なきゃなのに……でも、近いっ!旅人様が近いっ!あぁ、やばい、寝れない、眼が冴える……)
チラっと横目で眠っている彼を見る……
(はぁ…私がここまで意識しちゃうなんて……うぅ……前世でも、ここまで好きになったのって……お兄さんのとき、いらいかな……でもあの時はもっと小さかったし……ここまで緊張したのは初めてかも///)
「うぅ……寝なきゃ……」
そのあとどうにか寝ようと頑張った私が眠れたのはだいぶ時間が経ってからだった……