「……あっ、……ぁあっ♡ んんっ、……貢……、ちょっと激しくない……っ? ん……はぁはぁ」
普段の彼らしくない激しい動きに、わたしのカラダがどうにかなりそうだ。痛みこそないけれど、彼のシンボルの先端は確実に蜜口付近にあるわたしの気持ちいい部分をピンポイントで突いてきていて、快楽の波に溺れそう。これはすぐにでも絶頂が来そうだ。
その間にも、わたしのナカで彼のシンボルはどんどん膨らんでいて、彼はすごくツラそうな表情になっている。
「そっか、早くラクになりたいんだね……? じゃあ、もう出しちゃっていいよ……っ」
はぁはぁと荒くなる呼吸で、わたしは彼にそう告げた。彼の苦しそうな顔を見ていたら、早く解放してあげたくなったのだ。
それにこの行為は今晩二回目だから、わたしのカラダもそろそろツラくなってきていた。特に腰とか股関節が。
「……うっ! い……いいんですか……?」
「ん……。はぁっ、はぁっ。わたしももう……イきそうだからっ、一緒に吐き出しちゃってラクになって……っ! ……はっあん♡」
わたしは自分も腰を揺らしながら彼の顔を引き寄せ、耳元で囁いた。
「貢……、愛してるよ。だから……早くラクになって……」
そのまま彼の唇を奪い、こじ開けて舌を絡ませる。彼の腰がビクンと大きく跳ね、絶頂が近づいたのを感じたと同時に、わたしの目の前もチカチカと点滅し始めた。
「「…………んんん…………っっ!」」
声にならない叫びを口の中で上げ、わたしが目の前をスパークさせるのと同時に彼の熱い愛がわたしのナカに放たれた。
* * * *
「――あのさ、
行為の後、秘部をキレイにして下着と服を着直し、尿意を催していたわたしがトイレに行ってからベッドに戻ると、彼はベッドの縁に腰掛けてスマホで誰かに電話していた。漏れ聞こえてくる声は男性のものみたいだけれど、わたしの知っている人の声ではないようだ。
「……うん、自由が丘の篠沢邸。……大丈夫だって。家がデカいだけで、ごく普通の家庭だから。……うん、じゃあ明日、待ってっから。じゃあな」
「――電話の相手って、昨夜言ってた高校時代のお友だち?」
「……ああ、絢乃さん。おかえりなさい。ええ、そうです。杉本っていうヤツなんですけど」
……トイレから戻ってきただけで「おかえりなさい」って。わたしは笑うのをこらえた。この人、どれだけわたしと一緒にいるのが好きなのよ。
わたしは彼の隣に腰を下ろした。
「絢乃さんとの結婚を報告したら、めちゃめちゃビックリしてましたよ。『あんな有名人と結婚して、しかも婿養子!? マジかー!?』って。でも『おめでとう』って言ってもらえました」
「そうなんだ。で、この家のことを貴方が話してたのはどうして?」
「明日、この家に遊びに来ないかって誘ってみたんです。そしたら、明日は一日暇だからいいよ、って」
「そっか。でも、いきなり『家においで』は相手もハードル高すぎるんじゃない? しかもこんな豪邸だよ? 杉本さん、
貢でさえ、初めてこの家に来た時は――
「杉本もそう言ってたんです。『そんな立派な家にオレが行って大丈夫なのか?』って。でも、ごく普通の家庭だから大丈夫だって僕が言っときましたんで、大丈夫だと思います」
「…………そう」
いつも思うけど、彼の根拠のない「大丈夫」は一体どこから来るんだろう? ……まぁ、わたしもよく言われるからいい勝負か。わたしたち、似た者夫婦なのかも。
「そのお友だちって、明日何時ごろに来られるの?」
「多分、昼前に来て夕方ごろまでいると思いますけど……」
「じゃあ、わたしも会えるかな。明日、里歩は夕方からバイト入ってるらしいから、夕方までに解散になるの。だから早めに帰って来られると思う」
明日の女子会が昼間の時間帯になったのは、彼女のシフトの都合でもあった。バイト前に美味しいランチでお腹を満たして、三人で思いっきり遊ぼうということになったのだ。
「そうですか。じゃあ、その時に彼のこと紹介しますね。アイツにも、あなたのことを妻だと紹介します」
「うん! どんな人なんだろう……。会えるのが楽しみだなぁ」
「……絢乃さん、間違ってもアイツに心変わりなんかしないで下さいよ?」
貢が急に声を低くして、嫉妬心を剥き出しにしてきた。神戸でナンパされた時もそうだったけれど、彼はどうも人一倍独占欲が強いらしい。
「バカだなぁ、しないってば。わたしが好きなのは、これから先もずーーっと貢ひとりだけだよ」
わたしは笑いながらそう言って、バカなことばっかり言う彼の唇を強引に塞いだ。
「――さてと、もう寝よう? 明日、寝不足で里歩たちに会いたくないし」
キスをやめたわたしは大あくびをして、ベッドに潜り込んだ。
「はい。――絢乃さん、昨夜の不完全燃焼分、今日取り返せました?」
「……~~~~っ!」
これから寝ようとしている時に、何てことを言うんだこの人は! もちろん、昨夜は二人で解消できなかった性欲の話である。
「……冗談です。さ、寝ましょう」
彼も何事もなかったかのようにわたしの隣に潜り込んだ。薄い夏物の上掛けはパリッと
「……実はですね、絢乃さん。僕、あなたと知り合う前に
「え…………」
……おお、ここへきてまさかの爆弾発言。
ちなみに、
「もちろん僕からじゃないですよ!? 彼女から誘惑されて、『ムラムラするから誰も来ないところでエッチしよう?』って。なんかもう、背徳感と罪悪感アリアリで、してる間も気が気じゃなくて落ち着かなかったです」
「……………………」
まさか、彼が美咲さんと禁断のオフィス内アバンチュールを繰り広げていたなんて。
「安心して下さい。たとえ妻のあなたが相手でも、二度とオフィス内でしようなんて思いませんから。絢乃さんとなら、家でこうして毎晩でもできますしね」
「……う~ん、毎晩はさすがにわたしもキツいかな」
ただでさえ、旅行中は三夜連続で求め合い、一日のブランクを挟んで今日も二回エッチしたのだ。毎日あのペースで、あんなにガッツリやったらわたしのカラダは間違いなく壊れてしまうだろう。
「ほら、もう寝るよっ。おやすみ」
「……はい」
「貢、……愛してる」
「はい……! おやすみなさい」
「おやすみ……」
旅行の疲れと、バスルームとベッドで合計二回セックスした疲れから、わたしはそのまますぅっと眠りに落ちた。でも、寝入る前に彼が指先で髪を撫でてくれていたことだけはぼんやりと記憶に残ったのだった。