リエゾンを襲った
それを排除するため、ルーカス達一班は別動隊として作戦行動に移った。
まずは町に近い地点、東側から。
目標地点へアイシャの
的確な誘導のお陰で
とある地点まで来たところで「ストップ。……多分、見つけたわ」と、アイシャが制止を掛けた。
ルーカスたちは足を止める。
アイシャは約五十メートルほど先を指差しており、全員がその先を見た。
遠目であるため少しわかりにくいが、視認できる。
そして
「
一方通行か、相互通行可能かは不明だが、出入り口と言う意味を込めてルーカスはそう
「しっくり来るネーミングだろう?」
「ええ、これ以上ないくらいに」
ルーカスは
魔狼が少なくとも十数体、周囲をうろついている。
「さて、どう攻略するか……」
ルーカスは思考を
(崩落の危険を考慮する必要があった坑道と違って、魔術の制約はない。アイシャの魔術で
であれば、とルーカスは瞬時に考えをまとめ、行動を提示しようとしたところで——。
「坑道の中でやったみたいに、オレらが道を切り開いて団長が斬り込みます?」
ハーシェルに尋ねられた。
「いや、今回は——」
「
「あー……。そいや居ましたね、
ハーシェルは自身を
「あら、
「最初にバカ呼ばわりして、ケンカを売って来たのはそっちだろ?」
「言葉のニュアンスくらい
「ほら! やっぱりバカにしてんだろーが!」
「貴方の思考の足りなさを
「何だって?」
話が
(……話が進まない)
今は作戦行動中だ。それを
「二人ともそこまでだ! ケンカなら後にしろ」
怒号を飛ばす。と、アイシャは肩を
対してハーシェルは宙に視線を向け、自分は悪くないと言わんばかりの表情を浮かべている。
「申し訳ありません、団長」
「すんませんっした」
深々と頭を下げるアイシャと違って、ハーシェルは
態度からしてあまり反省の色が見られなかった。
だが、叱責のために無駄な時間を過ごすのは得策ではない。
「ハーシェル、次問題を起こしたら始末書だからな」
重ねて灸を据えて、ルーカスは話を切り上げた。
「うえっ?! なんで俺だけ!」
「不公平だ!」とごちるハーシェルに、アーネストが「自業自得。おまえが不真面目だからだろ……」と言い放つ。全くもってその通りである。
そのようなやりとりを経てようやく。作戦のすり合わせを
ルーカスは気を取り直して指示を出してゆく。
「アイシャ、魔術で
アーネストはアイシャの護衛とサポートを。
流れとしては以上だ。質問はあるか?」
三人へ視線を送ると、アイシャが
「威力の低い魔術では
(……悪くないな)
ルーカスとしても、
という点が気になるところであった。
もし今後同じ様な状況が起きた場合、ルーカスの力以外に解決の方法がなかったとしたら——
(少しでも有効な手段を
「許可しよう。ただし一回限りだ。この後いくつ
「はい、了解です」
アイシャが
四人は顔を見合わせて、準備万端の返事の代わりに
「よし! アイシャ、頼んだぞ」
「ご期待に沿えるよう、尽力します」
アイシャはロッドを手に取ると魔術詠唱のため、
「さ、お手並み拝見といきますか」
ハーシェルが双剣を構え、
アーネストもアイシャの近くに
ルーカスも右手で刀を抜くと持ち手を変えて、力の解放のためにコードを
「第一限定解除。コード『
『コード確認。第一限定、
左の腕輪の
『——
アイシャの詠唱が始まった。マナの輝きが増していく。
発動しようとする魔術に感化され、凍り付く冷風が周囲に吹き荒れた。
『
マナの高まりに大気が震えている。
氷の結晶である白い雪をまとった風が、アイシャを中心に
『
術の名が告げられ、魔術による神秘が形と成る。
大気を支配した凍える空気が吹雪を呼び起こし、
そして極寒の冷気の余波が吹雪と共に駆け抜け、一面を白銀に染め上げた。
ルーカスとハーシェルは魔術の完成を見届けると
〝
その威力は絶大だった。
白銀が積もる氷塊の地に、生存している
「
「これで
しかし——。
氷塊の中で
上級魔術の威力を
「……まあ、そう都合よくはいかないか」
「あー、ダメかぁ」
「団長の力がなかったマジで詰みっすね、これ」
ハーシェルが
破壊は叶わなかった。
だが、さすがに氷に封じられては、機能しないのか、
「……いや、無駄骨という訳でもなさそうだ。意外な収穫があったな」
「へ?」
「下がっていろ。今はこれを排除するのが先だ」
「了解っす」
ルーカスはハーシェルが後ろへと下がったのを確認して、刀の
視界に真っ直ぐ目標を
破壊の力を
振り抜いた刀を鞘に納めると、ルーカスは
見れば二人もこちらへ向かっており、互いに歩み寄る形で合流する。
「力及ばず申し訳ありません」
開口一番、アイシャは紫の
表情からありありと申し訳なさが伝わって来る。
真面目だな、とルーカスは苦笑いしてしまう。
「謝るどころか、むしろ有益な情報が得られたぞ」
「え? 情報ですか?」
「ああ、移動しながら話そう。次の地点への案内を頼む」
「了解です、団長」
背後で「おまえ何か気付いたか?」「全然」と言うハーシェルとアーネストのやりとりが交わされていた。