王都オレオールより東。資源獲得に置いて重要な拠点の一つである、鉱山の町リエゾン。
魔獣討伐任務を受けたルーカスは、団員を
事の起こりは、登城したルーカスが陛下と父に相談を持ち掛けていた時に舞い込んで来た一報だ。
(狼型の魔獣——
町長からの緊急通話で届いた情報によると、
あまりの数に現地の戦力では対処しきれず、家屋や農作物、そして大きな人的被害が出たという。
(……実際、到着した町の有様は……酷いものだった。思い出しても胸が痛む)
そこかしこに残る、生々しい戦闘の跡。
無数の獣の足跡に飛び散る
泣き叫ぶ人に物言わぬ人影。
崩れた建物——。
畑の農作物は荒らされ、鉱山で使う採掘道具も散乱していた。
(だが、
救援には騎士団から騎士
魔術師
魔狼の討伐部隊として特務部隊から
計
ルーカスは団長として、討伐部隊を
(急を要す任務だ。出発は準備が出来次第。
もう一度、邸宅へ寄る時間はなかった。だから、イリアには手紙を残すしかなくて……)
ルーカスは手紙を
(三人はイリアの護衛だ。上手く打ち解けてくれるといいんだけどな。
イリアの事も、考えるべき事は多いが——。
今は任務に集中しよう)
ルーカスは視線を前へ。陽の光が
「ここが鉱夫の言っていた『坑道の奥で闇を見た』という坑道だな」
中を
振り返ると、彼は黒縁眼鏡を押し上げて、地図を覗き込んでいた。
「カンテラで出来た〝影〟とは違うどす黒い何か——鉱夫が〝闇〟と称する何かと遭遇した坑道です。採掘を始めたばかりの鉱床で、奥までは一本道と言っていました」
「オレらはここの探索かー。こんなとこに魔狼が潜んでいるとは思えないすけど、一本道ってのはラッキーっすね! 迷路のような坑道を
アーネストの隣でいつもの軽口を叩いているのはハーシェルだ。親指を立て、緊張感の欠片もなく笑っている。
「緊張感を持て」とアーネストが、鬼の
いつものことだ。ここから口喧嘩に発展するのも、いつものこと。
そろそろ諫めて次の行動へ移そう、とルーカスが思った時。
「……それにしても、団長。本当に行くんですか? ぼくらも、外で魔狼の探索に当たった方がいいんじゃ……」
と、坑道の探索へ選抜した団員の一人から声が上がった。
ルーカスは「無論だ」と力強く頷いて肯定を示す。
「疑問は
「はい。周辺の探索、目視でその姿は確認できず、探知魔術でも反応を見つけられないと……」
「襲撃時その場にいた騎士の話によれば、
彼は
「常識的に考えて、あり得ない事ですね」
「ああ。こういった物事は、何がどのような形で繋がるか予想がつかない。怪しいと思えば疑い、探って行くしかないんだ。例え空振りでも、一つずつ潰して行けば答えに辿り着くと信じて、な」
ルーカスは彼の肩を「ぽん」と軽く叩き。
「中では何があるかわからない。頼りにしてるぞ」
と、付け加えた。期待を込めて。彼は目を輝かせて「はい!」と返して来た。威勢の良い返事に、思わず口角が上がる。
そこから今度は全員へ向けて「準備はいいな? 出発するぞ!」と行動開始をルーカスは告げた。
団員達が「了解!」と元気の良い返事を響かせる。ルーカスは彼らの声を聞きながら先陣をゆき、坑道の中へ進んで行った。
(さて、坑夫が言う闇とは一体何なのか)
魔狼の他にも何かが潜んでいるというのだろうか。
「鬼が出るか蛇が出るか、だな」とルーカスは一人呟いた。
さらに気になる事はもう一つある。
(……
ほんの
(それに、魔狼が探知魔術で見つけられないというのも、言い知れぬ
だが、それが何であったのか、喉元に
多数の
そして思い出せぬ