七つに重なった円環が領域を形作り
展開した防壁が、傷付き
だが、
騎士団員達の生存にルーカスは胸を
領域魔術は通常、複数名の術者によって詠唱・展開される。
だが、今それを
マナの煌めきが混じる風に銀の髪を
たった一人でこれほどの術を長時間維持するのは、実力者でも
(あまり時間は掛けられない。一気に片を付ける——!)
ルーカスは自身の
そうして防壁の手前まで来ると、足の裏に力を込め踏み込んで飛び上がり、
「
『コード確認。第一限定、
解除コードを入力すると、腕輪の
ゆらめく輝きは、腕輪から手を伝って刀身へと宿る。ルーカスは落下のタイミングに合わせ両手で柄を握り、刃を振り下ろす。
ヒュンッと風切り音が鳴り、斬撃が
死角からの攻撃に、
が、斬撃は
「危ない!」
誰かの叫ぶ声が聞こえたが、ルーカスは
一方、
剛腕が持ち上がって振り下ろされ、
切り裂こうと迫っていた剛腕が、ルーカスが切り結んだ傷を起点に、
「グガアアァァ!!」
一体何が起きたのか、理解出来た者はその場にはいないだろう。
ルーカスを除いて。
「確かに
報告にあった通り、物理攻撃一辺倒では骨が折れただろう。
しかし、ルーカスの持つ力を持ってすれば
これまでの獲物とは違う気配に、本能で危険を察したのか
(逃がすつもりはない)
ルーカスは
腕輪が再び赤い輝きを放つ。
「大人しく眠れ」
瞬時に
獣の体を追い越しざまに切り抜いた。
抜刀術、居合・
カキン、と金属音を鳴らし刀を鞘に
と、タイミングを合わせた様に、切り結んだ
斬撃によるものではなく、
これはエターク王国の
ルーカスが生まれながらに授かった——あらゆる物を〝破壊〟する力だ。
こうしてルーカスの手により、
「さっすが団長! 俺たちの活躍の場もなく片付いちゃいましたね」
先行したルーカスに遅れて、特務部隊の団員達が到着したようだ。
ルーカスが振り向くと、
「アイシャは七班を率いて索敵、周囲の安全を確保! アーネストは十班と救護に当たれ!」
ロベルトが団員達に指示を飛ばしていた。
団員達は「承知しました!」と指示に従い、割り振られた任務を遂行するため行動を開始した。
「ふくだんちょー、オレは?」
「ハーシェルは緊急時に備え待機だ。暇だからと、気を抜くなよ」
「了解っす!」
返事はいいが、真面目に職務に当たるかは怪しいものだ。懐疑的に思いながら、ルーカスはロベルトの下へ向かう。
と、アーネスト率いる十班が、展開する領域魔術に
『堅牢なる盾
慈愛の天使よ 恵み芽吹かせよ……』
澄んだ美しい歌声が、耳朶に心地よく響く。
外部の侵入を
「救護するにも、まずこれを解除してもらわないと通れませんね……」
「綺麗な歌声だよな。使い手はかなりの美人と見た。しっかし
「お前ときたら……任務中もその軽口は変わらないな」
ルーカスは結界越しにこの歌声の主、奇跡を為した
容姿は遠目でよく見えない。しかし、銀糸を
「『
ロベルトに問われ、ルーカスは惑った。
思い当たる人物は、いる。
(だが……彼女は……。彼女が、ここにいるはずは……)
ルーカスは一瞬頭をよぎった答えを「あり得ない」と否定して、首を横に振った。
もしそうだとしても、憶測で語るのは危険だ。
「……いまは場を収めるとしよう」
まずは、為すべき事を為す。答え合わせはそれからでいい。
ルーカスは大きく息を吸い込んで、
「私は特務部隊団長ルーカス・フォン・グランベル、救援が遅くなりすまない!
腹の底から音を絞り出した。
間を置かず、ルーカスの呼びかけに、応える声があがる。
「——は! 危ない所を助けて頂きありがとうございました! 私は今回の討伐隊を率いる隊長のハワード
ルーカスに負けじと声を張り、名乗りを上げた隊長の返事から待つこと数十秒。
領域魔術は解除された。後には、キラキラとマナの