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3-25.武器とアクセサリー

 俺はこれを見ても、自分の知らないそういう工具があるものだと受け取ってしまったけど、専門家が見るとわかるらしい。


「いや、見ればわかるでしょ。しっかりと剣でしょこれは。こっちは破壊力ありそうな斧」

「だよな……」


 うん。ちゃんと見れば武器だ。ここにあるのが異常だから認識できなかっただけで。


「おじいちゃんの趣味です。もし近くに怪物が現れたら、自分も戦って魔法少女の手助けをするって張り切ってました。ちなみに本当に切れます。牛肉で試し斬りしてました」

「志は立派なんだけどな」


 それを止めるために、俺はかなり苦労した。麻美に協力が得られることに繋がったことを考えれば結果オーライだけど。


「ちなみに公安的には、これはオッケーなのかしら。銃刀法とかの絡みで」

「アウトよ。見逃してあげるから、さっさと捨てなさい」

「ですって。じゃあ麻美、捨てなさい。先輩命令よ」

「わかりました先輩!」

「……悠馬」

「なんだよ」


 元気に返事をする後輩を見て、愛奈は口元に笑みを浮かべていた。そして、微かに体を震わせていた。


「後輩ができるっていいわね。気持ちいい。なんかゾクゾクする」

「そうか。よかったな」

「これから営業車の運転も代わりにやってくれるのよね。面倒な書類仕事も押し付けられるのよね」

「やりすぎて、姉ちゃんはいらないって会社から評価されないようにな」


 多分、遅かれ早かれそうなるとは思うけど。


「気をつけるわ。悠馬が働く前にクビになるのは困るものね」

「いや、そういうことじゃなくてな」

「後輩かー。いいわねー。なんというか、立派な社会人って感じがして」

「せめて態度で立派さを見せてほしいな」


 今のままだと、麻美の方がずっと立派に見える。


「愛奈さんは、どんなアクセサリーがいいですか?」

「え? わたし?」

「遥ちゃんはアンクレット、つむぎちゃんは髪留めがいいって言ってました」

「わたしはやっぱり、足につけたいなって。普段は右足ですけどね。ソックスの上からつけても適度に主張できるやつをお願いしました」

「わたしは、小学校だとアクセサリーはあんまり派手だと注意されるから。ヘアアクセなら大丈夫かなって」


 なるほどな。それぞれに考えはあるのか。

 じゃあ、愛奈は。


「あー。えー。んー……」


 何も考えつかなかったようだ。


「ネックレスはどうだ?」

「駄目。首から下げる系は危ないからねー。機械に巻き込まれたらアウトだから」

「男性社員は現場に入る時はネクタイ外すよう、規則がありますからねー」

「そうなのよねー。どうせ外すなら最初からつけなくていいのにって思うけど。スーツ着なきゃいけない仕事もあるってのが厄介よね」

「その点、わたしたちはネクタイつけなくていいから楽ですよね。ジャケット脱いで作業着になるだけでいいので。まあ、アクセサリーの類をつけるといい顔されないのは大変ですけど」

「そうねー……どうしよう。わたしだって、この宝石普段から身につけてる感じにはしたいんだけど」

「ブローチはどうだ? 普段は見えないところにつければいい。服の裏とか」

「なるほど! 麻美! 私服の時はいい感じにおしゃれなデザインにして! あんまり大きくなくて、ジャケットとか作業着に隠れるようなのがいいわ!」

「わかりました先輩! では早速作りますね!」


 俺のアドバイスに愛奈の欲望を乗せて方針が決まったようだ。


「ねえ、この武器はおじいさんが作ったのよね。同じようなのを、あなたも作れる?」


 壁に立て掛けてある様々な武器を見ながら樋口が言う。


「え? そうですね。おじいちゃんほど短時間で作れるわけじゃないですけど、割とできますよ。繊細な細工とかもやれますし」

「悠馬のために武器を作れる?」

「俺?」


 樋口の言ったことがよくわからず、俺は聞き返した。

 どちらかと言えば、樋口は俺が武器を持つのには反対してた。この武器も銃刀法違反と言い切ってたし。


「警察の職務質問とかで見つかるような武器は駄目ってことよ。見つからないように偽装できる武器があればいい。そして、この子なら作れる」

「なるほど。偽装って?」

「普段使うようなものに似せるのよ。ペンケースの中にボールペンが二本。片方は本物だけど片方を分解すると小型のナイフになる」

「なるほど。でも、ボールペンの中に入るようなナイフって、小さくてあまり使えそうにないな」

「例えばの話よ。もっと大きなものの中に隠すとか」

「例えば?」

「あなたたちで考えなさい」


 あ、考えるのを放棄した。


 でも、面白い考え方だと思う。フィアイーターはもちろん、黒タイツも基本的なスペックは俺より上。武器があった方がいい場面もあるはず。

 あとは隠し場所だけど。


「遥」

「え? なにわたし?」

「お前、俺と一緒に行動すること多いよな」

「え? まあねー。一応、彼女ってことになってるしねー」

「その松葉杖の中に細い剣を仕込むことはできないか?」


 一旦市川邸に上がったあとに直接ガレージまで行ったから、遥は松葉杖での移動だった。車椅子はまだ庭先に放置されている。


「これ? んー……分解して、中に仕込むことになるかな。それはちょっと抵抗が……あ、だったら車椅子の方に隠した方がいいかも」

「車椅子に?」

「うん。この松葉杖は普段、背もたれに取り付けてるけどさ。収納って意味ならお尻の方の裏に取り付けられるよ」


 お尻の方、つまり座面の裏側か。

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