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3-6.ライナーと戦闘員

「フィー!」

「次から次へと!」


 別の戦闘員が襲いかかってくる。振り向きざまに回し蹴りを放つけど、咄嗟の動きだったから動きにキレが無かったし速度も足りなかった。

 戦隊員はライナーの左足首を掴んだ。当然、足を上げて開いた状態になって。


「ちょっ! パンツ見ないでよ変態!」


 机の上においてあった物を掴んで戦闘員に向けて振る。穴あけパンチだった。軽めの鈍器として機能したそれは戦闘員の頭部に強烈なダメージを与えて殺した。

 本当にこいつがショーツを見たのか、その意図があったかは知らない。


「こんな形にした時点で重罪だからね! 乙女のパ……スカートの中見ようとするなんて! ……あ、悠馬相手だったらいいかな」

「フィー!」

「おっと」


 別の戦闘員が襲ってきたから、掴みかかろうとする腕を避けてそこに穴あけパンチをぶつける。体勢が崩れた敵に回し蹴りで殺す。


 次は誰だ。


 フィアイーター本体が、中年の男を襲っているところだった。

 普段はそれなりに地位があって目下のものをこき使う立場だろうに、今は情けない悲鳴を上げながらフィアイーターと戦闘員から逃げ回っていた。


 助けてあげないとね。


 そっちに向けて床を蹴って、男の退路を塞いでいる戦闘員を蹴り殺す。


「早く逃げて!」

「ありがとう!」


 お。横柄そうな立場のくせに礼を言った。ちょっと見直した。


 そして彼はオフィスの出入り口に向けて一目散に駆け出し、途中で立ち止まって倒れているスーツ姿の男性の体を持ち上げて、よろめきながら逃げるのを再開した。

 本格的に見直した。まだここに残ってたのはたぶん、部下の避難を優先してたからとかだろうな。偉そうな人とか思ってごめん。


 その立派な男性会社員に向かって走る戦闘員がいたから、パンチを投げて頭にぶつけて昏倒させる。けど、追撃する余裕はなかった。

 別の戦闘員が二体同時に、ライナーに向けて襲いかかってきたから。本当に数だけは多いんだから。


 片方に回し蹴りを食らわせた。けど蹴りは一体だけで止まってしまう。二体まとめて蹴り倒すのは無理か。

 けど直後、もう一体の方の頭部を矢が貫通していた。


「お待たせしました、ライナー!」


 窓を破ってやってきたハンターが弓を構えながら言う。


 足元にはガラスの破片。ついでに言えば窓枠に残った破片にスカートが持ち上げられててめくれていた。ハンターはそれに気づかないまま、すぐに前に踏み出したからスカートは戻ったけど。

 危ういなあ。普段からスカート履き慣れてないんだろうな。


 今度、教えてあげてもいいかもね。


 そんなライナーの考えていることなんか当然何も知らないハンターは、歩きながら矢を放って戦闘員を次々に射殺していく。

 顔がなく真っ黒な姿だから判断はつきにくいけど、正確に額のあたりを射抜き続けていた。

 戦闘員はこれで死ぬ。


 そして彼女は次に、三角コーンのフィアイーターを狙う。こっちも眉間に見事に刺さったけど、殺せなかった。

 コアを撃ち抜けてないから。いかに正確な射手でも、見えないものは射抜けない。


 やっぱりコアを露出させるしかないか。


「ハンターは雑魚をなんとかして! フィアイーターはわたしが倒す!」

「うん! セイバーたちもすぐに来るよ!」

「それまでにある程度は弱らせないとね!」


 フィアイーターに肉薄しながら蹴りを放つ。中のコアを露出させるには敵の体を切り裂くのが一番だけど、他にも手はいくらでもあった。

 三角コーンで出来た敵の体は、強く蹴れば大きくへこんだ。更にもう一発当てて別の箇所もへこませる。


 怪物になって固くなっているとはいえ、元はプラスチック。金属ほど柔軟に形を変えず、へこんだ箇所には割れ目ができた。


「フィアアッ!?」


 フィアイーターも手負いになったことを自覚して跳び退いた。ライナーはすぐには追いかけず、手近に何か武器がないかを探した。

 棚の上においてある裁断機。レバーを上下させて紙をまとめて切るやつだ。そのレバーを掴んで、へし折る。そのままだと使いづらいから。


 ここの会社の持ち物だし悪いと思うけど、すでにそれどころじゃない被害が出ていて職場はめちゃくちゃだし、構うものか。フィアイーターに肉薄しながら、割れ目にレバーを突っ込んで強引に広げた。

 フィアイーターはなおも逃げようとする。戦闘員が数名、主を助けようとこっちに駆けつけくるのがわかった。


 けど、助けが来たのはこっちも同じらしい。


「ライナー!」


 悠馬の声が聞こえた。



――――



 ラフィオのおかげで、四階まで一気に駆け上ることができた。当のラフィオも疲れた様子は見せてない。

 オフィスは既にめちゃくちゃな状態だったけど、かなりいたはずの戦闘員の数は減っている。フィアイーターも追い詰められているようだった。


「セイバーはフィアイーターにとどめを刺してくれ! 戦闘員は俺たちが引き受ける」

「僕も戦うんだよね! 四階まで君たちを乗せて駆け上がった直後だけど!」

「怒ってるのか? 疲れてるとか?」

「疲れてはない! セイバーは自分で走れるだろって思っただけだ!」

「だってー!」


 ちょっと怖がっている様子のセイバーが、そそくさとフィアイーターの方へ駆けていく。俺とラフィオは戦闘員だ。


「僕が移動手段以外にも役立つところ見せてやる!」


 ああ。そういう扱いは嫌なんだな。さっきから足扱いされてたもんな。

 そんなラフィオは戦闘員を前足で蹴り倒して上に乗り、さらに何度も頭部を踏み続けた。


「わかってるよ! ラフィオは乗り物じゃないよね! わたしの彼氏だもんね!」

「それも違う!」


 ラフィオが踏みつけている戦闘員は、ハンターが頭を射抜いて即座に殺した。


 彼氏か。わかったけど、なんの恥ずかしさもなく言えるのがすごいよな。

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