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第61話 カサブレードのアメリア

 カサブレードの石突は見事、バーニガの体の中心に命中しました。しかし、バーニガはそれで終わる相手ではありませんでした。


「カサブレードの使い手、味な真似を……!」


 無数に折りたたまれた両腕が盾のようにカサブレードを遮ります。勢いを失った私は地面に着地、一度距離を取ります。

 バーニガの両腕に注目します。カサブレードの一撃はやはり太陽の化身には効果抜群のようで、傷ついた腕はすぐに回復する気配がありません。

 今のうちだ、私がそう思ったのと同時、バーニガが邪悪な笑みを浮かべました。


「く……くくくく! 何と馬鹿らしい! まともに相手をするのが面倒ならば、まともに相手をしなければ良いのだ!」


 バーニガの右手の平から炎が吹き出しました。狙いは私ではなく――エイリスさん達!


「駄目です!」

「甘っちょろいガキめ!!」


 私は炎の前に飛び出しました。カサブレードの力で身を包んで、真正面から受け止める気でした。

 しかし、私はバーニガの左腕が伸びたことに気づきます。

 火炎と腕の二面攻撃。どちらを避けても、エイリスさん達が危険です。


「受け止めるしかない……!?」


 ですがどうやって!? カサプロテクトも使えないのに! こんな大事な時に、やりたいことが出来ないなんて、私はポンコツメイドです!


「アメリア!」


 マルファさんの声です。振り向くと、私は衝撃の光景を目の当たりにします。



「頼むぞ」



 なんと、マルファさんが逃げるどころか、地面にあぐらで座っているではありませんか! 女の子としての恥じらいはどこにいったのですか!?

 いや、それよりも。マルファさんの行動で、私はより考えを巡らせることになります。どうやってこの状況を乗り切れば――!



 ――え、なんで?



 なんで私は焦ったり、色々と考えているのでしょうか。

 守るべき対象が後ろにいて、カサブレードとはそれなりに時間を過ごして、そして今、こんなにもリラックス・・・・・しているのに。


「フレデリックさんに教えてもらった時間、皆と一緒にいた時間。私はあの時間でどれくらい成長できたのか、証明したいんです」


 カサブレードを突き出します。あれだけ心のなかでカサブレードへ語りかけていましたが、今の私は全くの無です。

 火炎が迫ります。腕も伸びてきます。どれを食らっても重傷あるいは死となる攻撃。


 ですが、私はそれでも!



「カサプロテクトォォォォ!!」



 カサブレードが開きました。直後、火炎と伸びた腕が同時にぶつかります。

 火花や圧力、熱風、様々な要素が私へ襲いかかります。

 ですが、カサプロテクトはその全てを阻みます。


「あれはカサブレードの防御形態! ならば俺の腕と火炎放射が歪曲した次元に阻まれているということかぁ!」

「私は負けません! 私の友達はみんな傷つけさせません!」


 攻撃が止んだ瞬間、カサブレードが閉じます。そのまま剣身を持ち、石突をバーニガへ向けます。

 しっかりと狙いを定め、石突へ力を収束させます。


「しゃらくせぇ! 俺の炎を全て注ぎ込んでやる!」


 バーニガの両手が極大の炎に包まれます。



「俺は太陽の化身、バーニガ! 名乗れやカサブレード使い!!!」

「私はメイドのアメリア! そして! カサブレードのアメリアです!!!」



 バーニガと私の最後の攻撃は同時に放たれました。


「灰になりなァ!」

「カサバスターァァ!!」


 津波のような勢いの火炎放射と、放たれたカサブレードの力がぶつかります。

 僅かに拮抗。すぐに、カサブレードの砲撃が火炎放射を飲み込みました。


「ガアアアア!! 飲み込まれる! 太陽が、こんなちっぽけな影に飲み込まれるだぁぁ!」


 火炎放射の勢いが落ちたのを確認した私は、更にカサブレードへ魔力を注ぎ込み、砲撃の威力を上げます。

 カサブレードによる光の奔流が過ぎ去った後、そこには何も残っていませんでした。


「や……った?」


 一瞬気を抜いたのがいけなかったのでしょうか。あるいは最初から限界でアドレナリンだけで動いていたのか。

 私は地面に膝をついてしまいました。まるで私を操っていた糸が切れたように。


「アメリア! 大丈夫かい!?」

「エイリスさん……ありがとうございます」


 すぐにエイリスさんが駆け寄ってくれて、抱き起こしてくれました。せっかく抱き起こしてくれたのに、ちっとも足に力が入りません。

 メイド時代ならすぐにでも走り回れただろうに……。私はやっぱりポンコツメイドのようです。

 嘆いていると、マルファさんが私の肩に手を回して、支えてくれます。


「やるじゃん。ま、わたし達がいればもっと早く片付いていただろーがな」

「あはは……マルファさんがいつも通りで安心しました」


 フレデリックさんが無言で歩み寄ってきます。ディートファーレさんは遠巻きに様子を見ています。


「……バーニガの気配は完全に消滅した。つまり、倒せたということだろう」

「それなら安心、しました」

「太陽の化身の討伐、カサプロテクトとカサバスターの形態変化、確かに見届けた」

「ど、どうでしょうか……? 合否は……?」


 すると、フレデリックさんはくるりと背を向けました。


「今、俺が見届けたと言ったろう。……合格だ、何度も言わせるな」

「な、何度もって、それわかりませんよ……」


 ディートファーレさんが拍手をしながら、私達に歩み寄ってきました。


「おめでとうアメリア。そしてよくやったわね。貴方の覚悟と力、確かに見たわ」

「や、やったぁ……」

「フレデリック、もう一言くらい何か言いなさい」

「……カサブレードとの同調率が高く、安定しているように見受けられた。恐らくこれでお前もそれなりにカサブレードを使えるようになったはずだ」

「そうなんですか?」

「だが忘れるな。それもお前の毎日の努力あってのものだ。これからも研鑽を怠るな。怠れば死ぬだけだからな」


 私は何度もフレデリックさんの言葉に頷きます。

 この窮地を乗り越えられたのも、フレデリックさんや皆のおかげです。しっかりと胸に刻み込みます。


「じゃあ今日は飲みに行くわよ! 私の奢りよ! フレデリック、貴方も来なさい」

「俺は良い。それに、目立つだろう」

「貸し切りにできる居酒屋を知ってんのよ。良いから行くわよ!」

「……はぁ、姉上はいつも強引だ」


 訓練は花開き、私は単独で太陽の化身を撃破することに成功しました。

 だが、これで喜ぶのはまだ全然早かったのです。


 そう、これは始まり。

 私はようやく太陽の魔神と戦えるかどうかのスタートラインに立っただけです。

 この後、私達は最強の敵と出会うことになります。

 しかし、今は。今だけは。生き残れたこと、努力が実ったことの余韻を噛みしめることにしましょう。

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