この時、初めて隼政の存在を思い出し雪芭は苦い顔をした。
自分にしては、えらく軽率な行動を取ってしまった事に。
今さら呼びに行く事も面倒で、持ってきた携帯から電話帳を開き隼政に電話をかける。すぐに出るだろうと軽く考えていたが、なかなか電話にない。どうしたものか――と思案しかけた思考が停止する。
次の瞬間雪芭は言葉にならなかった。
おいで。
はやく、おいで。
闇の中から自分を招く声。
どう考えたって普通じゃない。
夜の静寂がより鮮明に感じる。ここから逃げるという選択もあったが、叶うはずもない。この震えた足では、懸命に走ったところで追いつかれる。
――何のためにここまで来た? 他でもない、オレたちの友達、歩のためだろう……!!
雪芭は思いっきり深呼吸をし、また走り出す。