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神隠しに遭った少年 23

 どれくらいの時間が過ぎただろう。



 ずっと背景は夕闇のまま変わらず、お社とお社を囲む無数の彼岸花しか、ない。



 感覚がおかしくなりそうだった。



 歩が思い出す事は隼政と雪芭の事で、二人が無事ならよかったと思う。



 思考すらめんどくさくなり、歩はお社の壁にもたれかかったまま、無意味な時間を過ごしていた。



 ここでは時間の感覚もわからないから、そんな事気にする必要などないかもしれないが。




 その時、空から声がした。




「大丈夫か? いや、そんなはずないな……お前はまだヒトに近いから」




 見上げれば、お社の屋根に緋葉がいた。




 いつも屋根の上にいるなあ、とそんなどうでもいい事を頭の片隅で思う。




 そんな事今はどうだっていいのに。意味のない事ばかり考えてしまう自分に、歩は苦笑した。



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