「……今、なんて言ったんだよゆっきー」
隼政は思わず受話器を落としそうになったが、間一髪落とさずに済んだ。何気なくいつものようにオカルト本を読んでいて、電話に出たまではよかった。
相手は雪芭。――ここまではよくある話だ。しかし問題はその“内容”。
受話器の向こう側で、雪芭が冷静な口調で繰り返す。
「歩、家に帰ってないらしい。さっき、菜々子さんから電話があった」
「こっちにはなかったけどなあ、電話」
「気が動転してるんだと思う。……これをどうみる?」
隼政も雪芭も考えている事は同じだった。
普通ならありえない話。
しかし、今一番しっくりくるもの。
けれどそれは悪夢でしかなくて、違っててほしかった。