普段から物事に冷静な歩は別段取り乱す事はなかったが、目が覚めたらいきなりこんなわけのわからない世界で、さすがの歩も四苦八苦している。
あかあかと続く彼岸花を見ていると、もしかしたらここは、黄泉の国かもしれないと思ったりもした。
何時間も歩き続け足はとうに限界を超え、足が止まるのも最早時間の問題だった。
足が止まりそうになったその時、どこからか少女の声がした。
「もうあきらめればいいのに」
面白がった口調で、くすくすという笑い声が聞こえる。
歩は幻聴だと思い、構わずに歩き続けた。
だが、少し不安に思う事があった。一向に景色が変わらない事などあるのだろうか、と。