目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
迷い子

 見通しがいい場所なのに、民家ひとつ見当たらない。あるのは夕闇と、その背景にぴったり当てはまる彼岸花だけ。




 こうも静まり返っていると頭を過るのはあの事だった。




 神隠し―――




 人が忽然と消える現象。それを人は神様の仕業だと考えたと――隼政が無理やり預けてきたオカルトの本で見覚えがある。別に貸してくれと頼んだわけでもないのに、半ば強引に押しつけていったせいで、読まずに済ませるわけにはいかなかったのだ。




 だとしたら、やっぱりこれは神様の仕業かもしれない。




 そう結論づけたところで、何がどうなるわけでもなく――ただの気休めに過ぎない。




 今朝テレビで見た占いでは大吉だったのに。




 今日が、人生で一番最悪な日になった。





コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?