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第17話 2人の距離感

【縄島スパーランド】

「友達作りってハードル高いんだよね(汗)太一みたいに気軽に話せるようになるまで仲良くなるのが、なかなかね…難しいな…」


そう言って苦笑いしたまま目線を外す亜沙美


(そうだった…コイツは中学に入るまでは、危なかっしいくらい馴れ馴れしいヤツだった…けど中学に上がる時にオジサンが交通事故で亡くなって…無警戒に話しかけられなくなったんだ…)


亜沙美のその言葉で彼女が今のように、引き籠もりガチになってしまった理由に気が付いた太一。彼女の父親が亡くなるまでは今とは逆に、鬱陶(うっとう)しいくらいに人懐っこかった亜沙美


父親の死後、専業主婦をやめて彼の仕事を引き継いで家に居る方がレアになってしまった亜沙美の母親。それからは、誰にも送り迎えされない事が当たり前の日々になってしまった亜沙美


周りの同級生たちはイキナリそんな境遇に立たされた亜沙美に同情し、常に優しく特別扱いしてくれた…しかし、亜沙美にとってはソレが逆にツラく感じてしまい、その日から学校を休みがちになってしまったのである


(そうだった。俺は薄っぺらい同情じゃなく、本気で亜沙美の横に立ち続けてあげたい!ってあの時、本気で誓ったハズだったのに…何やってんだ俺!)


中学の3年間、太一なりに努力はしたのだが…沈んだ亜沙美の心を癒すには中学生の太一には荷が重かった。やがて疎遠になり2人の関係は、今に至っているのだ



「ごめんねぇ…暗い話しちゃってさ(汗)せっかく遊びに誘ってくれたんだから、もっと楽しまないと損だよねぇ…」


亜沙美はカラ元気を絞り出した。彼女の心にようやく向き合えた太一は、亜沙美の引きつった笑顔が苦しかった


「馬鹿野郎っ…遊びじやねーよ、デートだってお前が言ったんだろうがっ!カップルみたいに楽しむんだよ!…な?」


太一が奥手な方の人間だろうな…という事くらいは何となく察していた亜沙美は、イキナリな太一の真っ直ぐな告白に「ドキッ」としてしまう


(カップルみたいに……か。いんや、カップルの予行演習でもイーじゃん!…ありがとう太一)


「じゃあ、楽しもっか!ひと休みした事だし、今から何乗るのぉ?」


「…そうだな…( ´艸`)そうだ!お前の大好きなアトラクションにしよーぜ♪」


太一は亜沙美を楽しませる乗り物に気が付いたようだ




【ゾンビワールド・サバイバー】

隔離されたエリア内に放たれたゾンビ達を倒すか?逃げるか?して、制限時間内に出口に出られるか?というシューティング+脱出迷路の要素を重ねた少し前に流行ったアトラクションだ

しかし、それも数ヶ月前までの話しで、今の最新の流行りは【ブラック・サイクロン】という世界一長くて怖いジェットコースターに移っている


「待ち時間15分なんだ…面白そうなのに、意外と並ばなくても良いんだね?」


「まぁな、最新のアトラクションじゃないらしいからな。でも、面白いのは間違いないらしいぜ!……あっ!?そういえば亜沙美って、ホラー系は苦手だったよな…大丈夫か?」


小さい頃から男勝りな1面のある亜沙美だったが、昔からホラー系にだけは普通に女の子らしく反応し、イキナリ泣き出して太一を困惑させた思い出があった

苦手なアトラクションに乗せることでモヤモヤしている亜沙美の感情を吹き飛ばしてあげよう!…と提案した太一だが…



「(* ̄ー ̄)"b" チッチッチッ! 私がホラー系が苦手だったのは、ひと昔前の話だよ!最近はかなり特訓したから、だいぶ平気になったのさ!」


(…と言うか。最近、配信でホラー系ばかりやってたから慣れてきてるだけなんだけどね…それに…太一も一緒にしてくれるから…)


「(^▽^)ほー。言ったな亜沙美!後で泣きついて来ても知らねーぞ!」


「望むところだって!やろうよ太一!」


中学時代に遠くなってしまった距離感が今回の遊園地(デート)で、少し改善されそうな2人は昔を想い出しながら今日を楽しんでいた♪




続く

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