「かかれ!」
黒田長政は南部利直の軍勢に攻撃を仕掛ける。
大垣城の総攻めに失敗した利直としては手痛い攻撃であった。
「怯むな! 敵は小勢ぞ! ここで包囲を解くわけにはいかん! 何としても撃退せよ!」
南部利直としてはこれ以上士気を落とすわけには行かなかった。
自ら先頭に立ち、戦った。
しかし、黒田勢の勢い凄まじく、瞬く間に混戦となり、城の包囲に綻びが生じる事となる。
「今だ! 行くぞ!」
その隙を見逃さず、又兵衛と僅かな手勢は城へと駆けていく。
「くそっ! 奴らを通すな!」
「そうはさせん!」
又兵衛が城にたどり着くまで長政は自ら槍を振るい、獅子奮迅の活躍をする。
そのお陰か、又兵衛は城にたどり着く。
「斎藤殿! 我等豊臣方の援軍にござる! 開けて下され!」
又兵衛がそう叫ぶとすぐに城門が開く。
そして、又兵衛達が城に入ると、すぐさま城門は閉じられた。
「よし! 引くぞ!」
「くそっ! 逃がすな! 追え!」
長政勢を追撃しようとする利直の軍の背後を、斎藤徳元の軍が城内から狙い撃つ。
「ちっ! ええい! もう良い! 城の包囲に戻れ!」
かくして、長政は戦場を脱した。
「良し、何とかなったな……後は頼むぞ、又兵衛」
その夜。
大垣城内は静かであった。
不気味なまでに静かなその夜。
利直は苦戦が続き、士気が落ちた現状をどうにかしようと試行錯誤していた。
「……佐竹殿。何か策はありますかな?」
「……中々難しい戦ですな……」
佐竹義重。
伊達とも争った大名であり、伊達の勢力下に入った訳では無かったが、伊達と共に戦を繰り広げていた。
この戦でも利直と反対側に布陣していた。
「城将も中々に手強く、それに加えて黒田長政の家中の者が入りました。何か策を共有するためと見たほうが……」
「ご報告申し上げます!」
すると、本陣に伝令が駆け込んでくる。
「大垣城より、降伏の使者が参りました!」
「何だと!?」
その報告に利直は動揺し、立ち上がる。
「どういう事だ!」
「は。前々から城内は降伏すると言う者が多数居たようで、黒田家家臣、後藤又兵衛が入り、徹底抗戦を訴えたとの事。しかし、それに反発する者が城内にて反乱を起こし、徹底抗戦派の者達、城主、斎藤徳元、後藤又兵衛らを殺害。残った者が降伏を申し出たとの事です!」
その報告を聞き、利直は呆気に取られる。
「……こんなにも呆気なく終わるのか……」
「……黒田の策は、上手く行かなかったようですな」
佐竹のその言葉に利直は頷く。
「うむ、城内に入ろう。早い所兵糧を伊達殿にお届けしなくては」
佐竹義重も頷く。
「そういたしましょう」
しかし、佐竹義重はこの展開に少し違和感を覚えていた。
(少々都合が良すぎる気がするが……まぁ良い。警戒はしておこう)