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第100話 長政の策

「かかれ!」


 黒田長政は南部利直の軍勢に攻撃を仕掛ける。

 大垣城の総攻めに失敗した利直としては手痛い攻撃であった。


「怯むな! 敵は小勢ぞ! ここで包囲を解くわけにはいかん! 何としても撃退せよ!」


 南部利直としてはこれ以上士気を落とすわけには行かなかった。

 自ら先頭に立ち、戦った。

 しかし、黒田勢の勢い凄まじく、瞬く間に混戦となり、城の包囲に綻びが生じる事となる。


「今だ! 行くぞ!」


 その隙を見逃さず、又兵衛と僅かな手勢は城へと駆けていく。


「くそっ! 奴らを通すな!」

「そうはさせん!」


 又兵衛が城にたどり着くまで長政は自ら槍を振るい、獅子奮迅の活躍をする。

 そのお陰か、又兵衛は城にたどり着く。


「斎藤殿! 我等豊臣方の援軍にござる! 開けて下され!」


 又兵衛がそう叫ぶとすぐに城門が開く。

 そして、又兵衛達が城に入ると、すぐさま城門は閉じられた。


「よし! 引くぞ!」

「くそっ! 逃がすな! 追え!」


 長政勢を追撃しようとする利直の軍の背後を、斎藤徳元の軍が城内から狙い撃つ。


「ちっ! ええい! もう良い! 城の包囲に戻れ!」


 かくして、長政は戦場を脱した。


「良し、何とかなったな……後は頼むぞ、又兵衛」




 その夜。

 大垣城内は静かであった。

 不気味なまでに静かなその夜。

 利直は苦戦が続き、士気が落ちた現状をどうにかしようと試行錯誤していた。


「……佐竹殿。何か策はありますかな?」

「……中々難しい戦ですな……」


 佐竹義重。

 伊達とも争った大名であり、伊達の勢力下に入った訳では無かったが、伊達と共に戦を繰り広げていた。

 この戦でも利直と反対側に布陣していた。


「城将も中々に手強く、それに加えて黒田長政の家中の者が入りました。何か策を共有するためと見たほうが……」

「ご報告申し上げます!」


 すると、本陣に伝令が駆け込んでくる。


「大垣城より、降伏の使者が参りました!」

「何だと!?」


 その報告に利直は動揺し、立ち上がる。


「どういう事だ!」

「は。前々から城内は降伏すると言う者が多数居たようで、黒田家家臣、後藤又兵衛が入り、徹底抗戦を訴えたとの事。しかし、それに反発する者が城内にて反乱を起こし、徹底抗戦派の者達、城主、斎藤徳元、後藤又兵衛らを殺害。残った者が降伏を申し出たとの事です!」


 その報告を聞き、利直は呆気に取られる。


「……こんなにも呆気なく終わるのか……」

「……黒田の策は、上手く行かなかったようですな」


 佐竹のその言葉に利直は頷く。


「うむ、城内に入ろう。早い所兵糧を伊達殿にお届けしなくては」


 佐竹義重も頷く。


「そういたしましょう」


 しかし、佐竹義重はこの展開に少し違和感を覚えていた。


(少々都合が良すぎる気がするが……まぁ良い。警戒はしておこう)

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